GNSO動向紹介
第5版 2026年9月8日
第4版:2026年1月8日
第3版:2025年8月18日
第2版:2023年11月29日
初版:2023年9月15日
GNSOにおける進行中のPDPなどの状況(2026年9月現在)
新gTLDプログラム2026年ラウンドの申請受付は、 2026年8月12日に終了しました。 その一方でGNSOでは、DNS Abuseへの対応、 ラテン文字を用いた国際化ドメイン名、 gTLD登録データの非公開情報へのアクセスなどについて、 引き続きポリシー策定プロセス(PDP)をはじめとする検討が進められています。
ここでは、ICANNから発行される以下の資料等を元に、 GNSOにおける主な検討状況を示します。
- ICANN86 Policy Outlook Report
- GNSO Project List:2026年8月13日版
- GNSO WebサイトのActive Projectsページおよび各ワーキンググループの公開記録
DNS Abuse抑制
概要
DNS Abuse抑制に関しては、現在、 「関連するドメイン名の確認(Associated Domain Checks)」を対象とするPDP 1が進められています。
背景として、2024年4月にレジストリ契約(Registry Agreement:RA)およびレジストラ認定契約(Registrar Accreditation Agreement:RAA)の改定が発効し、 レジストリおよびレジストラによるDNS Abuseへの対応に関する契約上の義務が具体化されました。 GNSO評議会は2025年初め、 この改定による影響や新たなデータ・調査結果を確認し、 なお残されている課題を検討するため、 DNS Abuseに関するスモールチームを再招集しました。
この検討を受け、GNSO評議会は2025年8月14日、 ICANN事務局に課題報告書の作成を要請しました。 最終課題報告書では、 GNSO評議会が示した三つの優先論点はいずれもGNSOのポリシー策定の対象となり得ると整理されました。 そのうち、ICANN事務局は当面PDPで優先して扱う論点として、 次の二つを勧告しました。
- 新規顧客による大規模なドメイン名登録へのアクセスに対するセーフガード(当初は「制限のないAPIアクセスに対するセーフガード」と整理)
- 悪意をもって登録されたドメイン名に関連する、他のドメイン名の確認
このうち、「関連するドメイン名の確認」を対象とするPDP 1では、 悪意をもって登録されたドメイン名が特定された場合に、 レジストラが合理的に利用可能な情報を用いて、 同じ悪意ある主体に関連すると考えられる他のドメイン名を、 どのような条件や範囲で確認すべきかを検討しています。
進捗(初期報告書パブリックコメント中)
GNSO評議会は2025年12月11日に二つのPDPの開始を決定し、 2026年1月15日にPDP 1のワーキンググループのチャーターを採択しました。
PDP 1のワーキンググループは8件の暫定勧告と5件の実施ガイダンスを含む初期報告書を取りまとめ、 2026年8月18日にパブリックコメント募集を開始しました。 募集期間は9月28日までです。 パブリックコメント終了後、 ワーキンググループは寄せられた意見を検討し、 最終報告書の作成を進める予定です。
PDP 2については、 「新規顧客による大規模なドメイン名登録へのアクセスに対するセーフガード」を対象とするチャーター案の検討が続いています。 2026年8月13日のGNSO評議会では、 チャーター案をさらに検討する起草チームについて、 8月24日の週から週次会合を開始することとされました。 PDP 2の開始時期については、 PDP 1の進捗と必要なリソースを踏まえ、 GNSO評議会が適切な時点であらためて検討することとされており、 PDP 2のワーキンググループはチャーター採択後に招集される予定です。
ラテン文字ダイアクリティカル記号(Latin Script Diacritics) PDP
概要
このPDPは、ラテン文字を用いたgTLDにおいて、 ASCIIベースのgTLDと、 そのラテン文字ダイアクリティカル記号付きgTLDが異体字(variant)の関係にない場合に、 同一のレジストリ運用者が両方のgTLDを運用できるようにするための仕組みを検討するものです。
現在のルートゾーンラベル生成ルール(Root Zone Label Generation Rules:RZ-LGR)では、 両者が必ずしも異体字として定義されない一方、 視覚的な類似性のため文字列類似性審査の対象となる場合があります。
このPDPでは、 利用者の混乱やセキュリティ上のリスクにも配慮しつつ、 両方のgTLDを一つのレジストリ運用者が管理するための条件や手続きを検討しています。
進捗(最終報告書公開)
GNSO評議会は2024年11月13日に本PDPを開始し、 同年12月19日にワーキンググループのチャーターを採択しました。 ワーキンググループは2025年3月に初会合を開き、 検討を進めてきました。
2026年1月12日、 暫定勧告および実施ガイダンスを合わせて54件のアウトプットを含む初期報告書についてパブリックコメント募集が開始され、 2月23日までにICANNコミュニティから16件の意見が提出されました。
その後、 ワーキンググループではパブリックコメントを踏まえた勧告案の修正とコンセンサス確認を進め、 2026年8月31日、 最終報告書がGNSOの作業文書として公開されました。 今後はGNSO評議会による審議に進みます。
ドメイン名移管ポリシー見直し(Transfer Policy Review) PDP
進捗(ICANN理事会採択済み)
ICANN理事会は2026年6月7日、Transfer Policy Review PDPで取りまとめられた47件の最終ポリシー勧告を採択し、 ICANN事務総長兼CEOにその実装を指示しました。 これにより、本PDPはポリシー策定段階を完了し、 実装段階に移行しています。
国際化ドメイン名(IDN) EPDP
進捗(ICANN理事会採択済み)
ICANN理事会は2026年6月7日、 IDN EPDPフェーズ2最終報告書に含まれる14件のポリシー勧告を採択し、 ICANN事務総長兼CEOにその実装を指示しました。 これにより、フェーズ2のポリシー策定は完了し、 実装段階に移行しています。
SSAD関連:標準化されたアクセス/開示システムに関する補足勧告
概要
本取り組みは、 gTLD登録データのうち非公開となっている情報へのアクセス/開示の仕組みとして提案された「標準化されたアクセス/開示システム(System for Standardized Access/Disclosure:SSAD)」に関するものです。 SSADに関する勧告は、 gTLD登録データに関する迅速版のポリシー策定プロセス(Expedited Policy Development Process:EPDP)のフェーズ2で策定されました。
SSADに関する今後のポリシー判断に必要な利用状況、開示傾向、 運用上のニーズなどの実データを収集するための試行的な仕組みとして、 登録データ請求サービス(Registration Data Request Service:RDRS)が2023年11月に2年間の試行として導入されました。 当初の試行期間は2025年11月まででしたが、 ICANN理事会は2025年10月30日、 SSADをはじめとする非公開gTLD登録データへの長期的なアクセス/開示の仕組みに関するポリシー検討が継続していることを踏まえ、 コミュニティが関連する検討を進める間もRDRSを利用できるよう、 その運用をさらに最大2年間継続することを決定しました。
進捗(現在補足勧告案検討中)
ICANN理事会は2026年3月12日、 採否が保留されていた18件のSSAD勧告について、 現時点では採択しないことを決定しました。
これを受け、GNSO評議会は「SSAD補足勧告チーム(SSAD Supplemental Recommendations Team:SSAD SRT)」を設置し、同チームは2026年5月に会合を開始しました。
同チームは、新たなポリシーを一から策定するのではなく、 既存のSSAD勧告を基礎として、 ICANN理事会からのフィードバックや同理事会との協議、 RDRSの運用結果、RDRS常設委員会の所見報告書などを踏まえ、 勧告の修正や補足を検討しています。
ICANN86では、会期前日に終日の対面会合が開催されたほか、 会期中にも3回の作業セッションが開催されました。 会合では、修正に多くの作業を要すると評価された勧告を中心に、 個別の検討が進められました。
8月13日版GNSO Project Listによると、 18件すべてのSSAD勧告について初回のレビューと検討を終え、 SSAD SRTは作業計画を承認しました。 現在は補足勧告案の具体化を進めており、 2026年10月下旬を目途にパブリックコメントに付すことを目標としています。
現在の作業計画では、 パブリックコメントを経て、 2027年3月までに補足勧告をGNSO評議会へ提出することを目標としています。 なお、ICANN理事会は、 SSADに関する今後のポリシー作業を2027年11月までに完了するようGNSO評議会に強く求めています。

