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    /P▲         ◆ JPNIC News & Views vol.667【臨時号】2009.8.20 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.667 です
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2009年7月26日から31日の6日間にわたり、スウェーデンのストックホルムで開
催された、第75回IETFのレポートを、本号より連載でお届けします。

まず[第1弾]として、本号では全体会議の報告をお送りします。

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◆ 第75回IETF報告 [第1弾]  全体会議報告
                            JPNIC 技術部/インターネット推進部 木村泰司
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◆概要

第75回IETFミーティングは、2009年7月26日(日)から7月31日(金)にかけて、ス
ウェーデンのストックホルムにあるCity Conference Centreで行われました。
数百名を収容できる大きなホールが二つある会議場で、ストックホルムの中心
部から徒歩で10分ほどのところにあります。

7月のストックホルムは、午後9時頃になってからようやく夕暮れが訪れるほど
に、日照時間が長い時期です。スウェーデンの代表的な料理であるスモーガス
ボード(日本で言うバイキング)は素晴らしく、また気温は摂氏15度から20度前
後と快適であるため、午後7時半頃にミーティングを終えるIETF参加者には、
魅力的な街であるという印象を残したに違いありません。

今回の参加登録者数は、若干少なめの1,084名(プレナリでの発表時)で、参加
国数は50ヶ国でした。国別の内訳は、第1位がアメリカ(37%)、第2位が中国
(9%)、第3位が日本(8%)、第4位がスウェーデン(8%)でした。隣の国のフィンラ
ンドは4%(40名)でした。

◆Operations and Administration Plenary

IETFの運営等に関する全体会議であるOperations and Administration
Plenaryが、4日目の7月29日(水)に行われました。はじめに.SEのホスト・プレ
ゼンテーションが行われ、続いてJon Postel賞の発表、IETFチェアによる活動
報告等があり、最後に会場の座席側に設置されたマイクを使って意見交換を行
う、オープンマイクロホンが行われました。

.SEは、スウェーデンの政府機関であるNational Post and Telecom Agencyを
監督官庁とする非営利組織で、スウェーデンにおけるccTLD(.se)のドメイン名
レジストリです。ホスト・プレゼンテーションでは、2003年以降急激に増加し
2009年に88万に達しているSEドメイン名の登録状況や、5万ドメインへの導入
を目標にDNSSECを推進するという、2009年の活動が紹介されました。IETFの
ローカルホストを務める理由として、DNSSECの機運を高めることや、スウェー
デンの若い人がIETFに参加しやすいようにする、といった点が挙げられまし
た。

2009年のJon Postel賞は、米国のthe Computer Science Network(CSNET)が受
賞しました。CSNETは、1981年に、米国NSFの資金により設立され、その間に
165の学術組織や政府組織をARPANET(*1)に接続しました。当時、5万人以上の
研究者や学生が利用したとされています。CSNETは、当初NSFの研究ネットワー
クという位置付けであったARPANETについて、CSNET自らが運営する形にするこ
とをNSFと合意しました。表彰の理由は、オープンなネットワークを学術コ
ミュニティにもたらすとともに、ARPANETを現代のインターネットに変容させ
ていくことに貢献したこと、とされています。

(*1)http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-ah.html#01-ARPANet


IETFチェアによる活動報告では、IETFの概況などが報告されました。現在112
のWGがあり、前回のIETF-74以降90のRFCが出ました。新たなInternet-Draftは
517作成されました。次回のミーティングについては、当センターの理事でも
ある村井純氏より広島について紹介がありました。

この他の主な報告事項を以下にまとめます。

   - RFCにおけるAbstract(概要)を入れる位置の変更

      以前はCopyright Notice(著作権について)の後だったAbstractが、
      Titleの直後に変更されました。これにより、最初のページにAbstract
      が来るようになります。

   - IETFのトップページ

      IETF Webトップページ<http://www.ietf.org/>のデザインが変わりまし
      た。詳細なメニューがトップページから利用できるようになりました。

   - DNSSECの導入

      ietf.org、iesg.org、iab.org、irtf.orgにDNSSECが導入されました。

   - Nomcom(Nomination Committee)ドキュメントの更新

      前回IETF-74のPlenaryでの議論を受けて、Nomcomに関するドキュメント
      が更新されました。

       draft-dawkins-nomcom-dont-wait-04(IESG承認済み)には、その年最初
       のIETFミーティングから、4週間後にNomcom Chairが決まっていない場
       合には、IETF Executive Directorが、IESGとIABの候補者を伝える役
       割を担うことなどが加わりました。

       またdraft-dawkins-nomcom-openlist-05(コンセンサス確認中)では、
       IESGとIABの候補者のリストを公表することで、ロビー活動が行われて
       しまう現状と、懸念をまとめた節が設けられました。


最後に、2009年6月3日に他界した、IETF最初のExecutive Directorである
Steve Coya氏に対して、黙とうが捧げられました。オープンマイクロホンで
は、ドキュメントのレビュープロセスや、IETF-announceメーリングリストで
流すべきメールの種類に関して議論が行われました。

◆Technical Plenary

技術的な議論を行う全体会議のTechnical Plenaryは、7月30日(木)に行われま
した。はじめにIRTFとIABのチェアから活動報告があり、続いて"Network
Neuturality"、すなわちネットワークの中立性に関する議論が行われました。
最後にオープンマイクロホンが行われました。

IRTFでは、Public Key Next-Generation Research Group(PKNG)という新たな
リサーチグループが設立されました。新たな証明書フォーマットやセマンティ
クスを検討しており、PKIXに代わる公開鍵サービスのリサーチを行うようで
す。Paul Hoffman氏がチェアを務めます。この他に、現在活動中のHost 
Identity Protocol(HIP)と、Internet Congestion Control Research Group
(ICCRG)について紹介されました。

IABの活動報告では、ドキュメント化活動の状況が報告されました。以下に
まとめます。

   - RFC化されたもの

      - Principles of Internet Host Configuration (RFC5505)
      - Design Choices When Expanding DNS (RFC5507)

   - 議論を進めているもの

      - IAB thoughts on IPv6 Network Address Translation,
           draft-iab-ipv6-nat-00
      - P2P Architectures
           draft-iab-p2p-archs-02
      - Defining the Role and Function of IETF Protocol Parameter
        Registry Operators
           draft-iab-iana-04
      - Evolution of the IP model
           draft-iab-ip-model-evolution-01

ネットワークの中立性に関する議論は、問題のないコンテンツやアプリケー
ションが制限されることを避けるために、IETFとして技術的にできることは何
か、という観点で行われました。

QoS(Quality of Service)、DoS(Denial of Service) attack、ウイルス、スパ
ム、輻輳(congestion)が挙げられ、ネットワークの拡張に伴って必要になる
"制限するための機能"によって、インターネットというアーキテクチャが備え
ている、自由な通信プラットホームであるという側面や、アプリケーションを
作り直さなくてもコミュニケーションの範囲を広げられるという思想、そのコ
ミュニケーションによって醸成される文化やエコノミクスが失われかねないと
いった危機感が指摘されました。

一方、SIGCOMM 2002に投稿されたDavid Clark氏らによる論文"Tussle in
Cyberspace"では、「Tussle(奪い合い)を内包することはネットワークの発展
に不可欠である」と述べられている点についても議論されました。プロトコル
を使って通信サービスを実現する過程で、通信業者同士のTussleを吸収するた
めに、元々は無かった機能が検討され標準化されていった事例が紹介されまし
た。

会場では、インターネットにおいて、通信路は高度な処理をするのではなく、
通信データの伝送に徹するべきであるが、DoSの回避は重要であるといった点
が確認されたり、遅延や再送をエンドユーザーがわかりやすいように可視化し
てはどうか、といった意見が出されたりしていました。引き続くIABオープン
マイクロホンでは、逆にIABとして何ができるか、という疑問が投げかけら
れ、同時にTussleに関する認識を共有しやすいよう、より読みやすくすべきだ
といった意見が挙げられていました。

◆IETFミーティングに合わせて行われたイベント

ミーティング期間に合わせて、以下のイベントが行われました。DNSSECに関す
るイベントが二つあり、.SEのDNSSECを推進したいという意向が感じられまし
た。

    - ISOC Panel: "Securing the DNS" - 7月28日(火)

       会場近くのClarion Sign Hotelで7月28日(火)に行われたISOC主催のイ
       ベントで、前DNSEXT WGチェアのOlaf Kolkman氏(NLnet Labs)らをパネ
       リストに迎えてパネルディスカッションが行われました。モデレー
       ターはISOCのLeslie Daigle氏が務めました。

       Verisign社のMatt Larson氏は、DNSSECが.eduに導入済みであることを
       述べた後、.netは2010年末に、.comは2011年初頭に導入する計画を発
       表しました。またルートゾーンへは、2009年中に導入するべく活動す
       ることを発表しました。

   - OpenDNSSEC technical preview release party - 7月30日(木)

       OpenDNSSECは、.SEやNLnet Labs等が参画しているOpenDNSSEC Project
       によって開発されている、DNSSEC対応用のソフトウェアです。Unbound
       やBIND9に合わせて使うことができるソフトウェアで、BSDライセンス
       で配布されています。

       これは技術的なプレビューリリースを記念したパーティーで、7月30日
       (木)の20時より、市内にあるカフェバーの一部を借り切って行われま
       した。

  - RIPE NCC Routing Registry Training Course - 7月31日(金)

       RIPE NCCによる、ルーティングレジストリ(IRR)のチュートリアルで
       す。最終日の7月31日(金)、会場近くのRadisson SUS Royal Viking 
       Hotelで、9時から17時半まで行われました。通常、RIPE NCCのメン
       バーであるLIRしか参加できないトレーニングコースですが、今回は
       IETF参加者にもアナウンスされ、登録無しに参加することができまし
       た。

       チュートリアルには、ルーティングセキュリティの権威であるSandra
       Murphy氏をはじめ、SIDR WGで活発なRoque Galiano氏(LACNIC)や、
       AfriNICの技術者が参加していました。コースの合間には、IPレジスト
       リのルーティングセキュリティへの関与に対する考え方や、Randy 
       Bush氏が行っている実験(*2)の経路情報への影響、IRRの登録のセキュ
       リティに関するディスカッションで盛り上がり、主催者と参加者の両
       方にとって貴重な時間となりました。


                ◆                ◆                ◆

次回の第76回IETFミーティングは、広島で行われる予定です。

IETFは、単にプロトコルを策定する会議であると考えられがちです。しかし、
その背景には国際的情報通信ネットワークの技術的な在り方を議論によって導
き出し、ドキュメント化していくという素晴らしい文化があります。この文化
こそがインターネット技術を発展させる礎であると思います。

WGチェアの指示に従って行われる、ラフで、しかし論理的なディスカッション
は、英語でのディスカッションに慣れていない方にとっては、ついていくこと
が難しいと感じられるものかもしれません。

しかしひとたび飛び込めば、私達の検討や考察にさまざまな国から集まった
人々が耳を傾け、もっともな意見であれば共感し、文書化して残していこうと
するグループであることに気づくと思います。ビジネスがグローバル化したと
言われる現代の、特に若い技術者にとっては、こういった経験は貴重なもので
はないでしょうか。

業務や研究に関係のあるWGの趣意書やドキュメントをご覧になり、実際に会場
に足を運んで国際的に活動しているインターネット技術者の文化に触れていた
だければと思います。

   第76回IETFミーティング

      日時:2009年11月8日(日)~13日(金)
      場所:広島県広島市 ANAクラウンプラザホテル広島
      ホスト:WIDEプロジェクト

   IETFに関する情報

      - The Internet Engineering Task Force (IETF)
         http://www.ietf.org/

      - Working Group Charters (WGの趣意書)
         http://www.ietf.org/dyn/wg/charter.html

      - IETF Meetings
         http://www.ietf.org/meeting/
         "Register"から参加登録できます。


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
            http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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 JPNIC News & Views vol.667 【臨時号】

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