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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.946【臨時号】2012.3.16 ◆
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◆ News & Views vol.946 です
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2012年2月21日から3月2日にわたり、インドのデリーでAPRICOT 2012/APNIC 33
カンファレンスが開催されました。この会議のレポート第2弾として、本号で
は「アドレスポリシーおよびレジストリ動向報告」をお届けします。
なお、第1弾の「全体および技術関連動向報告」については、以下のURLから
バックナンバーをご覧ください。
□APRICOT 2012/APNIC 33カンファレンス報告
[第1弾] 全体および技術関連動向報告(vol.945)
http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2012/vol945.html
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◆ APRICOT 2012/APNIC 33カンファレンス報告 [第2弾]
~アドレスポリシーおよびレジストリ動向報告~
JPNIC IP事業部 奥谷泉
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本稿では、アドレスポリシーSIGやAPNIC総会での様子を中心に、APNIC 33にお
けるIPアドレスの管理やレジストリの運営・活動に関わる動向をレポートし
ます。
■アドレスポリシーSIG
APNIC 33カンファレンス(以下、APNIC 33)でのアドレスポリシーSIGは、
「IPv4アドレス」に関する提案が1点もない初めてのセッションだったこと
が、特徴と言えそうです。提出された4点の提案すべてが「IPv6アドレスポリ
シーの見直し」に関するものでした。
APNIC地域でのIPv4在庫の枯渇から約1年を迎え、アドレスポリシーも自然と
「IPv6の具体的な運用準備に向けて、IPv6アドレスポリシーでの課題を解決
していく」という流れになってきているということではないかと思います。
特に着目されていたのは、インドや中国のようなインターネット新興国から、
長期的な需要に備えてIPv6の割り振りを受けようとした場合、現在の基準で
はそれに対応することができないという点です。これは前回のAPNIC 32から
挙げられていた課題であり、2点の提案(prop-099、prop-102)が、その流れを
汲んで議論されました。
<提案の結果>
今回は4点の提案のうち、「prop-102:IPv6の割り振りにおけるスパースアロ
ケーションのガイドライン」の1点がコンセンサスに至りました。
その他、2点の提案が継続議論となり、1点の提案は棄却という結果です。
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コンセンサスが得られた提案:
prop-102:IPv6の割り振りにおけるスパースアロケーションのガイドライン
継続議論となった提案:
prop-099:大規模ネットワークのためのIPv6アドレスの予約
prop-101:IPv6 PIアドレス割り当てにおけるマルチホーム要件の撤廃
棄却された提案:
prop-098:IPv6アドレス割り振り方法の最適化
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参考:http://www.apnic.net/community/policy/proposals/
コンセンサスとなったprop-102は、「スパースアロケーション」(*1)と呼ば
れる、RIR在庫からの割り振り時に適用しているアドレス選定方式について、
その文書化を求めたものです。RIPE地域では既に文書化しており、APNICでも
運用上はこれまでも実施してきましたが、文書化することで透明性向上につ
ながるとして、提案への支持が得られました。
これは当初の提案目的であった「長期的な需要的に対応したIPv6アドレスの
確保」からは変更されており、その経緯は次の<結果に向けた議論につい
て>でご説明します。
(*1)スパースアロケーション
同じ申請者がアドレスを複数回申請した場合に、連続したアドレス空間
から追加の割り振りが行えるよう、レジストリが一定の間隔を空けて在
庫からの分配を行う方式です。これにより、複数回の申請でアドレスの
分配を受けても、それらをひとつの連続したプリフィクスに集約して経
路広告をすることが可能になり、経路集成につながると考えられていま
す。
<結果に向けた議論について>
prop-102は当初、別の提案(prop-099)の代案として提案されていました。
現在の基準(2年分の需要を満たすアドレスサイズの分配)では、長期的な需要
へのIPv6アドレスが確保できないとして、「5年分のアドレスの予約」と「2
年分のアドレスの分配」を求めている提案がprop-099です。
これに対して、問題解決として予約を求めるのではなく、既存のAPNICの運用
で実施している「スパースアロケーション」を使って、レジストリが一定の
間隔を空けて在庫配分を行うことを基準化しておけば対応できるのではない
か、というのがprop-102の提案者の考えでした。
しかし、スパースアロケーションの基準化に対しては「経路集約のための運
用をアドレス確保の手段にするべきではない」、「基準化することでAPNICの
運用の柔軟性を失わせる」などの懸念が挙げられました。
一方、スパースアロケーションの仕組みを、すべての申請者が認知している
わけではないことから、文書に明記することには支持する意見が複数表明さ
れ、これを反映して提案を修正の上、最終的には支持が得られた結果となり
ました。
<結果に伴う影響>
スパースアロケーションは、現在もAPNICで割り振り時に実施しているものが
明文化されるようになるというだけであり、今後のアドレス申請上の影響は
ありません。
むしろ、APNICでの現在の運用方式が文書化されることにより、割り振られる
IPv6アドレスレンジがAPNICで選定される仕組みを、申請者が確認できるよう
になります。
今後は8週間のコメント期間を経てAPNICでの施行が決定した場合、JPNICも
APNICの在庫を共有しているNIRとして、同様の対応を行うことが求められま
す。
一方、スパースアロケーションの提案が当初の意図から変更となり、予約を
求めたprop-099も継続議論となったため、長期的なIPv6アドレス需要への対
応は引き続き課題として残されています。
■APNIC総会(AMM;APNIC Member Meeting)
前号でも既にお伝えした通り、今回のAPNIC総会の特筆点は、「新設NIRの発
表」とAPNIC理事会(EC;Executive Council)のメンバーを選出する「EC選挙」
でした。
NIRの新設については、今回のカンファレンスのホストを務めた団体である
NIXI (National Internet Exchange of India)を母体としたIRINN (Indian
Registry For Internet Names And Numbers)が、インドにおける新たなNIRと
して認められたことが発表されました。発表後、新設IRINN関係者は壇上で抱
擁し合い、APNIC スタッフの氏名を挙げながら感謝を述べるなど、大きな喜
びを表していました。
IRINNの設立により、APNIC地域におけるNIRは、JPNICも含めて7組織となりま
す。(その他NIRは、CNNIC、IDNNIC、JPNIC、KRNIC、TWNIC、VNNIC)
また、今回のEC選挙では、APNICの理事会メンバーのうち、現職3名の任期満
了に伴う改選が行われました。そして、4名の候補者のうち、JPNICの前村昌
紀も含めた現職のECメンバーが3名とも再選されるという結果になりました。
Che-Hoo Cheng氏(香港)
前村昌紀(日本)
Ma Yan氏(中国)
http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2012/20120302-01.html
その他、セッション中に報告されたAPNICの主なサービス・活動や収支決算に
関する情報等も含め、APNIC総会の詳細は、APNIC Members Meetingページ(*2)
から発表資料をご確認いただくことが可能です。
(*2)http://meetings.apnic.net/33/program/amm/
■その他アドレス管理に関わるセッション
その他、アドレス管理に関わる内容を取り扱うセッションとして、以下の三
つが開かれました。興味がありましたら、APNIC 33プログラムページからご
覧になってみてください。
Global Reports (各RIRの活動紹介)
APNIC Services (APNICの現在のサービスにおける特筆点を紹介)
NIR SIG (各NIRの活動紹介)
■まとめ
現在約440組織のAPNIC会員を抱えるインドにおいて、IRINNがそれらの会員を
代表するNIRとして、今後どうコミュニティと関わっていくのか、着目される
ところです。
アドレスポリシー提案としては、prop-102がコンセンサスを得られたことで、
今後はスパースアロケーションの仕組みが文書化されることが見込まれます。
これにより、申請者にとっては、割り振りを受けるアドレスレンジがAPNIC在
庫から選定される仕組みについて分かりやすくなることが期待されます。
一方、prop-099が継続議論となったため、今後、中国やインドなど、成長し
続けている経済圏における長期的なIPv6の需要にどう対応していくのかは、
次回のカンファレンスでも議論の対象となると予測されます。
また、継続議論となったもう1点の提案、prop-101(*3)は「IPv6におけるPI割
り当ての基準緩和」には大筋で賛成が得られたものの、要件の細部で折り合
いがつかない点があり、現在もメーリングリストで議論が行われています。
(*3)prop-101:IPv6 PIアドレス割り当てにおけるマルチホーム要件の撤廃
- PIの割り当て先拡張の必要性はあるとして大筋で支持された
- しかし、マルチホーム要件の撤廃により、経路増加につながる懸念へ
の対処が、現在提案されている内容で十分なのかが争点となり、継続
議論
これらのアドレスポリシーの見直しは、現在日本国内の事業者が強く必要と
するものではおそらくありませんが、IPv6アドレス空間全体の消費や、グロー
バルな経路数の面から、長い目で見た時のインターネットの運用へは影響を
及ぼすものだろうと思います。今後ともみなさんのご意見もお聞かせくださ
い。
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わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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JPNIC News & Views vol.946 【臨時号】
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