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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1219【臨時号】2014.8.12 ◆
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◆ News & Views vol.1219 です
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本号では、本年2014年9月に開催予定のInternet Governance Forum (IGF)を
ご紹介します。IGFは、インターネットガバナンスについて議論を行う、国際
連合主催の会議です。あまり馴染みがないかもしれませんが、本稿をきっか
けに、IGFやインターネットガバナンスを、より身近に感じていただければと
思います。
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◆ IGF 2014のご紹介
JPNIC インターネット推進部/IP事業部 奥谷泉
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Internet Governance Forum (IGF)は、誰でもが自由に参加でき、インター
ネットガバナンスについて議論を行うカンファレンスとして、今年2014年は
トルコ・イスタンブールで9月に開催される予定です。
筆者は、そのIGFのプログラムの検討を行う、2014年のMultistakeholder
Advisory Group (MAG)メンバーを務めていることから、2014年のIGF (IGF
2014)についてお伝えしたいと思います。
まずはその前に、簡単にIGFそのものについてご紹介します。
■ IGFとは
IGFの正式名称は、Internet Governance Forumです。国際連合主催の会合で、
その名の通り、インターネットガバナンスに関する課題について、参加者間
で議論を行うカンファレンスです。
大きな特徴は、誰もが自由に参加できることで、IGFは何らかの決定を行う場
ではないとし、対話を重視している点です。つまり、インターネットに関与
する、異なる立場のステークホルダー(政府関係者、技術者、学者、市民社
会、企業など)に対して、相互対話の場を与えるものとして設定し、政策の策
定や執行が必要な場合は、IGFでの検討を経た上で、それぞれのステークホル
ダーの権能に従って行われるものとしています。
2006年の第1回からこれまでに至る、IGFの詳しい経緯に興味のある方は、
「インターネットガバナンスとは何か」をご覧ください。
インターネットガバナンスとは何か
https://www.nic.ad.jp/ja/governance/about.html
■ IGF 2014の特徴
IGF 2014の特徴は、例年よりもアウトプットを重視している点です。
IGFは、対話を重視し、交渉の場としないことから決議を採らないとしていま
すが、これに対して、「IGFは言いっ放しで終わっている」、「課題への具体
的な成果につながらない」、といった批判を一部から受けてきました。
今年2014年は、世界情報社会サミット(WSIS)の開催から10年を経て、その成
果を振り返る「WSIS+10」(*1)や、インターネットガバナンスにおける原則を
文書化したNETmundial(*2)が開催されたこともあり、IGFに対して、より具体
的なアウトプットへの期待が、一部の関係者から寄せられています。IGFのプ
ログラム検討を行っているMAGにおいても、IGFの成果をもっと具体的に見せ
る改善の必要性が、多くのメンバーから表明されています。
このような背景から、今年は、対話を重視するIGFの特性は維持しながらも、
議論の内容を具体的に提示し、政府間組織(IGO)、非政府間国際機構(INGO)、
I*(アイスター)諸団体(*3)、企業や市民社会を代表する団体など、各関係者
の立場から活動する各種機関に対して、文書として配布する取り組みが、い
くつか行われます。
これに伴い、IGFの議論の中で関心のあるトピックスがあった場合、適切な内
容が反映され、関係者に配布されるよう議論を注視していくことが、これま
でよりも重要となりそうです。詳細は、後述の「IGFの改善に向けた取り組
み」でご紹介します。
(*1) WSIS+10 High-Level Event Outcomes
http://www.itu.int/wsis/review/2014.html
(*2) NETmundialとは
https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/NETmundial.html
(*3) I*(アイスター)
インターネットの技術基盤の調整に責任を持つ諸団体
■ IGF 2014のテーマ
今年は、「Connecting Continents for Enhanced Multistakeholder Internet
Governance(マルチステークホルダーによる協力の拡張に向けて大陸をつなげ
る)」が、メインテーマとして選ばれました。これには、インターネットガバ
ナンスについて、議論が行われているさまざまな場をつなげていく、という
意味合いが込められています。
これに加えて八つのサブテーマがあり、メインテーマよりも踏み込んだ課題
を提示しています。これらのテーマは、その時々で着目されている課題をテー
マとして取り上げているため、どういう課題が着目されているのか目安にし
やすいかと思います。サブテーマの一覧は、次をご覧ください。
Proposed Overaching Theme and Sub Themes for IGF 2014
http://www.intgovforum.org/cms/component/content/article/127-workshop-proposals/1583-main-theme-and-sub-themes
■ プログラムの選考
プログラムの選考は、MAGが行います。MAGは、ステークホルダーグループ(政
府、学術、市民社会、企業、技術コミュニティ)や性別、地域などのバランス
を考慮して国連事務局により選任され、約50名のメンバーにより構成されて
います。
About the MAG
http://www.intgovforum.org/cms/magabout
MAGの中で、存在感を示しているのは米国です。国別では最多となる7名のメ
ンバーが選出されており、Google社、Microsoft社といった企業や、米国商務
省電気通信情報局(NTIA)のベテラン担当官が参加し、官民ともにコミットし
ていることが感じられます。
今年は合計208件の応募があり、これを約半数までに絞るようMAGメンバーが
選考を行いました。選定基準は内容だけではなく、途上国からの応募、初応
募といった要素も加味された上で採点されます。地域別に見ると、東アジア
は相対的に応募数が少ない中、中国が今回積極的に提案を提出し、一部のMAG
メンバーの中で着目されていました。
応募されたセッションと選考結果:
http://www.intgovforum.org/cms/147-igf-2014/1851-igf-2014-workshop-status
プログラムの検討にあたり、MAGでの議論を知りたい場合、MAGメンバー以外
でも状況が追えるようになっています。例えば、対面でのMAG会議ではオンサ
イト・リモートいずれの方法で誰もが参加し、コメントを行うことが可能で
す。ただし、プログラムの選定はMAGメンバーのみが行います。また、メーリ
ングリストのアーカイブと会議記録も、誰もが参照できるようにIGFのWebサ
イトで公開されています。
http://mail.intgovforum.org/pipermail/igfmaglist_intgovforum.org/
■ プログラムの見どころ
セッションの目的に応じて、セッションの検討と選定方法が異なり、内容も
多様なセッションが開催されることは、IGFのプログラムの特徴でもありま
す。
MAGメンバーが、サブテーマに基づき企画するメインセッションは、今年のイ
ンターネットガバナンスにおける主な課題と、異なる立場からの意見を確認
する上で、お勧めです。前項で紹介した通り、公募に基づき選定されるワー
クショップは、多くの場合、メインセッションよりも、応募者の視点で個々
の課題に踏み込んで議論をするので、特に興味があるトピックスがあれば、
議論を聴いたり、意見を述べやすいのではないかと思います。
メインセッションの中で、特に今年らしいものは、以下の3セッションです。
・IANA機能の監督権限移管
- NTIAの発表を受け、IGFでも議論を予定しています
・ネットワークの中立性(Network Neutrality)
- NETmundialでは結論が出ませんでしたが、重要なトピックとしてIGFの
メインセッションとして取り上げられました
・インターネットガバナンスの今後のあり方・IGFの役割
- WSISから10年が経過し、その成果の見直しが進められている中、IGFの
継続や改善も含めて、継続課題にどう取り組んでいくべきか議論を行
います
また、今年の新たな試みとして開催されるBest Practices Forumは、MAGで検
討したそれぞれのテーマごとの最適事例を紹介し、文書化するというセッショ
ンです。既に、テーマごとにメーリングリストで議論が始まっており、関心
のあるトピックがあれば、適切な事例が反映されるよう議論に参加すること
が重要になってきます。トピックスとしては、「spam等望まれていない通信
への規制や回避策」、「コンピュータ緊急対応チーム(Computer Emergency
Response Team; CERT)の設立」など、ネットワーク運用にも関わりのあるテー
マも挙げられています。詳細は次項をご覧ください。
Draft Programme(執筆時は基本構成のみ公開、公募セッション未掲載)
http://www.igf2014.org.tr/programme.html
■ IGFの改善に向けた取り組み:議論の文書化・関係者への配布
MAGでのIGFの改善に向けた議論を踏まえ、議長のJanis Karklins氏が提示し
ている取り組みを、簡単にご紹介します。
◇ Best Practices Forumの開催
前述の通り、五つのトピックスにおいて開催、各セッションのまとめを
文書化して、配布物とする。これにより、実践的な参考情報を提供する
ことをめざす。
1.マルチステークホルダによる意義のある参加メカニズムの構築
2.望まれていない通信への規制と回避策(例:spam)
3.インターネットセキュリティのためのCERTの設立と支援
4.ローカルコンテンツの策定を実現するための環境
5.オンライン上での児童保護における最適な事例
事例の提出先:discussion_questions@intgovforum.org
テーマごとのメーリングリスト:http://www.intgovforum.org/cms/open-call-to-join-igf-best-practices-forums-preparatory-process
◇ IGFの有効事例の募集
MAG議長の名の下で、有益な政策や取り組みにつながった事例を募集(募
集期間終了済み)し、取りまとめた結果をIGFで発表予定。
◇ 結果の取りまとめの改善
メインセッションのテーマにおける設問、合意事項、合意されなかった
事項をまとめ、結果がより明確な形で提示する。議長より、Way Forward
として推奨をまとめ、地域や国レベルのrIGFやnational IGFにも参考と
して共有する。地域・国レベルでの取り組みを翌年のグローバルIGFで共
有することも検討する。
◇ 結果の能動的な共有
政府間組織(IGO)、非政府間国際機構(INGO)、I*(アイスター)等の技術コ
ミュニティの団体、主な市民社会団体などへ結果を共有し、それぞれの
コミュニティへの周知を依頼する。
基本的には、主なセッションでの議論を文書に取りまとめ、さまざまな立場
の関係機関に配布することで、それぞれの立場から、対策を検討する上での
参考としてもらえることを、念頭に置いています。
特に、Best Practices Forumは、メーリングリストでの議論が現在進められ
ており、誰でも登録・議論への参加が可能です。アーカイブも参照できます
ので、興味のあるトピックスがありましたら、ご覧になってみてください。
■ もっと知りたい・関わりたいと思ったら
国内において情報交換・議論を行う場として、「日本インターネットガバナ
ンス会議(IGCJ)」が発足しました。次回の会合は8月19日(火)の開催を予定し
ており、参加登録を受付中です。また、参加者間で情報共有を行うメーリン
グリストも設置されていますので、ぜひご登録ください。
「日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)」発足のお知らせおよびIGCJ
第2回会合のご案内
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2014/20140724-02.html
日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)のメーリングリスト
https://www.nic.ad.jp/ja/governance/igconf/mailing-list.html
■ IGF 2014の開催概要
ここまでのご紹介の通り、2014年のIGFは、これまでよりも踏み込んだ形で、
議論の文書化・共有が行われますので、関わりのあるトピックスがあれば、
議論を追ってみてはいかがでしょう。現地で参加することは難しいけれど、
議論を聴いてみたいという方には、多くのセッションでリモート参加の仕組
みが提供されています。
期間:2014年9月2日(火)~5日(金) (Day0:9月1日)
会場:トルコ・イスタンブール
http://www.igf2014.org.tr/venue.html
プログラム基本構成:
http://www.igf2014.org.tr/programme.html
参加登録:
http://www.intgovforum.org/cms/igf2014
公式Webサイト
IGF2014への参加に特化した情報 (ホスト国が運営)
http://www.igf2014.org.tr/index.html
IGF全般に関する情報 (国連事務局の運営)
http://www.intgovforum.org/cms/igf-2014-istanbul
一方で、現時点で直接IGFの議論を追うよりも、まずは国内での情報提供、議
論の場に参加していきたい、またはインターネットガバナンスの議論に強い
関心を持たない方も、いらっしゃるだろうことも想像します。まずは、本稿
をきっかけに、「その気になれば誰もが参加できる場が存在し、そのプログ
ラムの検討プロセスも広く開かれて、興味があれば誰でも知ることができる」
ことを頭の片隅に置いていただければ、十分うれしく思います。
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わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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