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    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.1363【臨時号】2015.12.10 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.1363 です
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2015年11月上旬に神奈川県のパシフィコ横浜にて開催された、第94回IETFミー
ティングの様子を、vol.1360より連載にてお届けしています。連載第4弾とな
る本号では、IPv6関連WGの動向をご紹介します。

なお、明日発行予定の次号では、DHCP関連の議論の動向をお届けいたします。
これまでに発行したIETF報告については、下記のURLからバックナンバーをご
覧ください。

  □第94回IETF報告

    ○[第1弾] 全体会議報告 (vol.1360)
    https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2015/vol1360.html
    ○[第2弾] IETF会合に初めて参加して (vol.1361)
    https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2015/vol1361.html
    ○[第3弾] セキュリティ関連報告 (vol.1362)
    https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2015/vol1362.html

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◆ 第94回IETF報告 [第4弾] IPv6関連WG報告
                                NTTネットワーク基盤技術研究所 藤崎智宏
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2015年11月1日(日)から11月6日(金)まで、横浜にて第94回IETFミーティング
が開催されました。日本でIETFが開催されるのは、2002年7月の横浜(IETF 
54)、2009年11月の広島(IETF 76)に続き、3度目となります。1、2日、雨が降
りましたが、おおむね天候にも恵まれたIETFミーティングとなりました。

本稿では、会期中において、IPv6に特化した内容を議論するワーキンググルー
プ(WG)での議論内容を紹介します。


■ 6man WG (IPv6 Maintenance WG)

6man WGは、IPv6のプロトコル自体のメンテナンスを実施するWGです。今回
は、11月4日(水)の朝一のコマ(9:00-13:00)にて開催されました。前日の夜に
盛大なソーシャルイベントがあったにも関わらず、100名程度の参加者を集
め、活発な議論が実施されました。

ミーティングは、いつも通りチェアによるアジェンダ、Note Well(権利等の
注意事項)の確認、およびWGの関連文書ステータス報告より始まりました。
ミーティングの時点で、WG文書のうちRFC発行待ちの文書が2件、WGラストコー
ル中の文書が1件、WGラストコール待ちの文書が1件存在しています。また、
WGで議論中の文書が6件、WGの議論文書とするかどうか検討中の文書が3件と
なっており、IPv6のプロトコル自体の検討も継続的に実施されていることが
わかります。この後、チェアより、他のWG (conex (Congestion Exposure) 
WG, ippm (IP Performance Metrics) WG)における議論内容で、IPv6プロトコ
ルに関連して6man WGに照会があった、2件の案件対応について報告がありま
した。2件とも拡張ヘッダに関するものですが、他のWGにおいても、拡張ヘッ
ダを使用したIPv6自体の機能拡張が検討されているようです。

今回のミーティングでは、以下のWGドラフト2件、個別ドラフト5件について
議論されました。

[WGドラフト]
 - Host routing in a multi-prefix network (マルチプレフィックスネット
   ワークにおけるホストルーティング), 
   draft-ietf-6man-multi-homed-host

 - IPv6 specifications to Internet Standard (IPv6仕様の"インターネッ
   ト標準"化),
   draft-ietf-6man-rfc2460bis, draft-hinden-6man-rfc4291bis

[個別ドラフト]
 - IPv6 Hop-by-Hop Header Handling (IPv6 Hop-by-Hop拡張ヘッダの処理に
   ついて), 
   draft-baker-6man-hbh-header-handling

 - Transmission and Processing of IPv6 Options (IPv6オプションの転送
   と処理について), 
   draft-gont-6man-ipv6-opt-transmit

 - IPv6 Universal Extension Header (IPv6ユニバーサル拡張ヘッダ), 
   draft-gont-6man-rfc6564bis

 - Support for adjustable maximum router lifetimes per-link (リンクご
   との最大ルータ有効期間調整機構のサポート), 
   draft-krishnan-6man-maxra

 - IPv6 Segment Routing Header (IPv6セグメント経路制御ヘッダ)(SRH), 
   draft-previdi-6man-segment-routing-header

アジェンダには、以下の3件の個別ドラフト(うち、新規2件)が上がっていま
したが、時間切れで次回送り(プレゼンテーションスライドはプロシーディン
グに収録)となりました。

[個別ドラフト]
 - Multiple Provisioning Domains using Domain Name System (ドメイン名
   システムで利用する複数プロビジョニングドメイン), 
   draft-stenberg-mif-mpvd-dns

[新規個別ドラフト]
 - Uplink access technology indications in Router Advertisements 
   (ルータ広告中でのアップリンク情報通知), 
   draft-krishnan-6man-uat
 - DNS Name Autoconfiguration for Internet of Things Devices (IoT 
   (Internet of Things)デバイスにおけるDNS名自動設定), 
   draft-jeong-homenet-device-name-autoconf

議論されたアイテムの中から、いくつかを紹介します。

◆ Host routing in a multi-prefix network (マルチプリフィクスネット
   ワークにおけるホストルーティング), 
   draft-ietf-6man-multi-homed-host

複数のアップリンクを持つネットワークにおける、ホストの動作についての
変更提案です。特に、同一リンク上に複数のルータがある場合のホストと、
複数のアップリンクを持つホスト(スマートフォン等)を対象にしています。
前者の場合、現在の仕様では、複数のルータにおいてステートレスアドレス
自動設定(StateLess Address AutoConfiguration: SLAAC)を利用した場合に、
ホストがどのルータをパケット送出先として選択するかについての、明確な
規定がありませんでした。このため、ホストが選んだルータによっては、
BCP38に定義されており多くのISPで採用されている、送信元アドレス詐称を
防ぐためのイングレスフィルタリング(*1)により、通信ができない可能性が
あります。

後者の場合でも、ホストが選んだルータと送信元アドレスの組み合わせによっ
ては、通信に失敗します。また、現状のICMPv6リダイレクトの仕様では、複
数のアップリンクをホストが持つ場合(無線LANとLTE回線に接続されるスマー
トフォン等が想定されています)、ルーティング最適化のために片方のアップ
リンクルータが、ホストにICMPリダイレクトを送信するような場合に対応で
きないことを問題としています。

(*1) https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/ingress-filtering.html

これらの状況を改善するため、送信元アドレスにより、転送するルータを選
択する(SLAACによりアドレスを付与したルータに、対応した送信元アドレス
を持つパケットを送信する)こと、およびホストがリンクの違うアップリンク
ルータから受け取ったリダイレクトを処理するよう、ホストの動作を変更す
る提案です。

複数のルータからのSLAACに対応する変更には、いくつかの賛成が表明されま
したが、ICMPリダイレクトに関する動作については、否定的な意見も提起さ
れました。

このドラフトについては、MLでの議論の後、WGラストコールに向けて調整が
実施されることになっています.

◆ IPv6 specifications to Internet Standard (IPv6仕様の"インターネッ
   ト標準"化), 
   draft-ietf-6man-rfc2460bis, draft-hinden-6man-rfc4291bis

現在のIPv6の基本仕様は、1998年に発行されたRFC2460にて規定されており、
この文書はDraft Standardという位置づけになっています。従来より6man WG
において、「IPv6の仕様をインターネット標準仕様の最終段階である"イン
ターネット標準(Internet Standard)"に昇格させ、IPv6の仕様は完全にでき
あがったことを世の中に知らしめ、普及の後押しをすべきだ」という議論が
ありましたが、なかなか作業が先には進みませんでした。しかしながら、IETF
における標準化プロセスの見直しにより、Draft Standardカテゴリが廃止
(RFC6410)されてから数年がたち、従来Draft Standard カテゴリにあったRFC
のカテゴリ見直しが必要になったこともあり、IPv6仕様の"インターネット標
準"化を本格的に実施することとなり、その作業が進んでいます。

今回のミーティングでは、前回の議論に基づき実施された改版の状況や、作
業を進める上での留意点、今後の方針が議論になりました。

現在、改版が進んでいる文書は以下の2文書です。

- RFC2460 (draft-ietf-6man-rfc2460bis) : IPv6の基本仕様
  RFC2460を更新している文書および訂正(Errata)の取り込み、内容の更新等

- RFC4291 (draft-hinden-6man-rfc4291bis) : IPv6アドレス構造
  RFC4291を更新している文書および訂正(Errata)の取り込み、参照の更新等

今後、RFC2460の改版文書については、WGラストコールを実施予定となってい
ます。RFC4291の改版ドラフトについては、WGアイテムとすることがミーティ
ングでは同意を得て、MLにおいてWGアイテム化の最終確認を実施することに
なっています。

その他、"インターネット標準"化に向けたプロセスを進めるため、"RFC1981 
- IPv6パスMTU探索"のレビュアー募集等が実施されています。

IPv6標準仕様群の"インターネット標準"化は着実に進行しており、IPv6のさ
らなる普及に向けた動きも活発化しそうです。

□6man WG
  http://datatracker.ietf.org/wg/6man/charter/

□第94回 IETF 6man WGのアジェンダ
  http://www.ietf.org/proceedings/94/6man.html


■ v6ops WG (IPv6 Operations WG)

v6opsは、IPv6に関するオペレーション技術および共存・移行技術に関する議
論を実施するWGです。IPv6の普及を受け、提案数が多いセッションとなって
おり、このところ毎回2コマを使っての開催となっています。今回も、月曜の
朝一(9:00-11:30)、月曜の最終(17:10-19:10)の2コマにて開催されています。

参加者もそれぞれ150名程度で、IPv6の実利用について多くの人が興味を持っ
ていることがうかがえます。

ミーティングは、チェアによるNote Wellの確認およびアジェンダの紹介から
始まりました。今回のミーティングでは、以下の項目が議論されました。

- Identifier-locator addressing for network virtualization (ネットワー
  ク仮想化のための識別子-ロケータ分離アドレス構造), 
  draft-herbert-nvo3-ila

- Host address availability recommendations (ホストアドレスの有効性に
  関する推奨), 
  draft-ietf-v6ops-host-addr-availability

- Unique IPv6 Prefix Per Host (ホストごとのユニークIPv6プリフィクス割
  り当て), 
  draft-jjmb-v6ops-unique-ipv6-prefix-per-host

- Observations on the Dropping of Packets with IPv6 Extension Headers 
  in the Real World (実ネットワークにおけるIPv6拡張ヘッダを含むパケッ
  トの破棄に関する観測), 
  draft-ietf-v6ops-ipv6-ehs-in-real-world>

- Operational Implications of IPv6 Packets with Extension Headers, 
  (拡張ヘッダを含むIPv6パケットに対する運用上の影響)
  draft-gont-v6ops-ipv6-ehs-packet-drops

- Some Design Choices for IPv6 Networks (IPv6ネットワークの設計), 
  draft-ietf-v6ops-design-choices

- IP/ICMP Translation Algorithm (rfc6145bis)(IP/ICMP変換アルゴリズム),
  draft-bao-v6ops-rfc6145bis

- Temporal and Spatial Classification of Active IPv6 Addresses (実利
  用されているIPv6アドレスに関する時間的・空間的分類)

これらのトピックスの中から、いくつかを紹介します。

◆ Identifier-locator addressing for network virtualization (ネット
   ワーク仮想化のための識別子-ロケータ分離アドレス構造), 
   draft-herbert-nvo3-ila

ネットワークの仮想化を実施するために、IPv6を利用する提案です。Facebook
社では、IPv4アドレスの不足やネットワーク構築の柔軟性等の理由から、同
社のデータセンター内でIPv6の利用を進めています。IPv6のアドレス空間の
広大さを有効活用し、従来からのホストに対するアドレスでなく、データセ
ンター内でネットワーク上を移動するタスクごとにIPv6アドレスを付与する
ことで、ネットワーク仮想化を実現するというものです。この機構を実現す
るため、IPv6のアドレスをネットワーク上での位置情報を示すロケータ部と
識別子部分に分離し、外部との通信にはDNSを用いてアドレスマッピングを実
施します。実現には、nvo3 (Network Virtualization Overlays) WGで議論さ
れている、プラットフォームを利用できるとしています。

参加者からは、「この機構をインターネットワイドで利用する予定なのか」
「機構自体はモバイルIPv6と同等だが、そちらの利用は検討したのか」「特
にアドレスマッピングの際のセキュリティ課題の解決が重要であり、モバイ
ルIP機構にはその検討も織り込んである」等の意見が挙げられました。

本件については、議論を継続することとなりました。

◆ Some Design Choices for IPv6 Networks (IPv6ネットワークの設計), 
   draft-ietf-v6ops-design-choices

午後のセッションで実施の予定でしたが、時間の関係から午前中のセッショ
ンにて実施されることになりました。

IPv6ネットワークを構築する際に参考にできる、設計方針に関するドラフト
です。これまで議論を重ねてきており、今回すぐに合意ができるだろう、と
いう著者の導入から議論が始まりました。前回からの変更点として、企業ネッ
トワークに関する扱いの変更(別文書にするべきという意見があったが、記述
を継続)や、企業ネットワークで利用するアドレス種別についての詳述、組織
内で利用する経路制御プロトコルに関するサーベイ結果の追加等が説明され
ました。

会場から、「企業ネットワークにおいては、その規模や形態によって要求条
件がまちまちであり、サンプルとできる設計指針を決めることが困難である
こと」「NAT66を推奨すべきかの合意が無いこと」等、非常に白熱した議論に
なりました。かなりの時間を使いましたが議論が収束せず、午後のセッショ
ンに持ち越しとなりました。

2コマ目のセッションは、"Some Design Choices for IPv6 Networks"の議論
の続きから始まりました。午前中のセッションでの議論を受け、ドラフトの
著者より、IPv4関連の記述をなくすことおよびNAT66/NAPT66に関するコメン
トを追加することが述べられました。これらの変更を織り込んだドラフトを
発行後、WGラストコールを実施することとなりました。


◆ IP/ICMP Translation Algorithm (rfc6145bis)(IP/ICMP変換アルゴリズム), 
   draft-bao-v6ops-rfc6145bis

IPv4とIPv6間の変換についてはRFC6145にて記述されており、これはNAT64 
(RFC6146)や、464XLAN (RFC6877)の構成要素の一つとなっています。このRFC
について、6man WG で議論されRFC化された、フラグメントに関する変更、RFC
発行後の訂正(Errata)、アドレスマッピングアルゴリズムの更新を取り込み、
改版しようという提案です。マッピングアルゴリズムの更新に関するコメン
ト等がありました。このドラフトはWGドラフトではありませんが、この後の
プロセスを進めることも鑑み、WGドラフトにした後でWGラストコールを実施
し、プロセスを進めることとなりました。

□v6ops WG
  http://datatracker.ietf.org/wg/v6ops/charter/

□第94回 IETF v6ops WGのアジェンダ
  http://www.ietf.org/proceedings/94/v6ops.html


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
             https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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