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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1633【臨時号】2018.10.25 ◆
_/NIC
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◆ News & Views vol.1633 です
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2018年9月上旬にニューカレドニア・ヌーメアで開催された、APNIC 46カン
ファレンスのレポートを、vol.1630より連載にてお届けしています。本号で
は、前号に引き続き技術関連の話題として、パブリックDNSの運用動向や、
HTTP/2、QUIC、DoHなどの技術解説セッションについてご紹介します。
なお、3回にわたりお届けしてきた本連載は、今回で最終回となります。これ
までに発行したAPNIC 46カンファレンスに関するその他の報告については、
下記のバックナンバーをご覧ください。
□APNIC 46カンファレンス報告
[第1弾] 全体概要およびアドレスポリシー関連報告(vol.1630)
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2018/vol1630.html
[第2弾] 技術動向報告(vol.1632)
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2018/vol1632.html
また、本カンファレンスの様子は、JPNICブログでも写真を交えてご紹介して
いますので、こちらもぜひご覧ください。
写真でふりかえるAPNIC46
https://blog.nic.ad.jp/blog/blog-apnic46-pict/
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◆ APNIC 46カンファレンス報告 [第3弾] 技術動向報告(2)
JPNIC 技術部/インターネット推進部 木村泰司
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本稿では、APNIC 46カンファレンスのプログラムの中から会場で議論が多く行
われたり、注目を集めたりしていた、技術に関連した話題をお送りします。
APNIC46プログラム (Schedule | APNIC 46)
https://conference.apnic.net/46/program/schedule/#/day/6
■ Cloudflare(クラウドフレア)社による1.1.1.1の運用についての解説
初日のテクニカルセッションで、Cloudflare社のマーティン・レヴィ(Martin
Levy)氏とオラファー・グズムンドソン(Olafur Gudmundsson)氏の両氏によっ
て、Cloudflare社のパブリックDNSサービスについて解説が行われました。レ
ヴィ氏はBGPデータの分析やBGP運用で、グズムンドソン氏はDNSSEC等のDNSで
それぞれ有名な方です。要点をまとめます。
- IPアドレス1.1.1.1、1.0.0.1は、APNICとの共同リサーチによって提供さ
れています。IPv6アドレスは、2606:4700:4700::1111と
2606:4700:4700::1001となっています。
- DNS-over-TLS (DoT)、DNS-over-HTTPS (DoH)を採用していて、Mozillaト
ラステッド・リゾルバー(Mozilla Trusted Recursive Resolver)リストに
載っているそうです。
- クライアントのIPアドレスは記録されません。すべてのログを24時間以内
に削除しています。
- 1.1.1.1は、古い書籍において"使われていないアドレス"という例に出て
いることがあり、家庭用のルータ等で設定用のIPアドレスとして使われて
いることがあるそうです。これに関係してか、1.1.1.1宛のパケットを破
棄(BGP blackhole)しているIXが多くあったとのことで、一つ一つ連絡し
て通るようにしてもらっているとのことです。
- 1.1.1.0/24というBGP経路が、他のASによって広告されることがあるそう
です。RPKI(リソースPKI)のROA (Route Origin Authorization)を発行し
ているが、経路広告の影響をなくすには至っていないとのことです。
会場では、今後DoTやDoHはどうなっていくのか、Webブラウザに組み込まれて
いくのか、といった質問が出ましたが、基本的に両氏はインフラやサーバの
運用という立場で応答しており、Webブラウザを含めた将来については回答を
避けていました。
大規模なサービスの、アクセス性の向上のために、細やかな対応をしている
様子がうかがわれるセッションでした。
[Cloudflare社による発表資料]
DNS resolver 1.1.1.1 from Cloudflare
https://conference.apnic.net/46/assets/files/APNC402/DNS-resolver-1.1.1.1-from-Cloudflare.pdf
■ HTTP/2、QUIC、DoH入門
話題の技術を簡潔に解説するプレゼンテーションが、2日目のテクニカルセッ
ションで行われていました。発表者のジョルディ・パレット(Jordi Palet)氏
は、RIPE NCC、ARIN、APNIC等のさまざまなカンファレンスでIPv6の技術解説
をされていたことで知られています。要点と、参考情報をまとめます。
- HTTP/1.0からHTTP/2までの経緯
1991年に作られたHTTP/1.0は、改良が進み1999年にHTTP/1.1がリリースさ
れました。その後、2009年にGoogle社によってSPDYが提唱されます。SPDY
には、単一のTCPコネクションで複数のHTTPリクエストを送受信できる多
重化、送られるリソースの優先順位付け、HTTPヘッダーの圧縮、サーバ側
からのプッシュ配信ができるという特徴があります。
HTTP/2はIETFのHTTPbis WGで策定作業が進められ、2015年にRFC7540が公
開されました。HTTP/2はSPDYの仕様が元になっており、HTTP/1.1で起きて
いたヘッド・オブ・ライン・ブロッキング(HOB)(*)が解決できるといった
特徴があります。
(*) 一つのコンテンツの転送が終わるまで、次の転送が始められない問
題。Webブラウザなどで地図の表示場所を動かした時に、途中の地図
データの転送がすべて終わるまでその先の地図データが転送されず、
なかなか表示されないといったことが起きます。
HTTP/2をApache Webサーバで使えるようにする設定方法が、章末にURLを載せ
ている発表資料のスライド10に、Nginxで使えるようにする設定方法がスライ
ド11にまとめられています。
- QUIC
SPDYが開発されている間に、TCPが非効率であるとして検討され始めたの
がQuick UDP Internet Connections (QUIC)です。QUICもまた、Google社
によって提唱されたもので、IETFではQUIC WGが2016年に設立されました。
QUICはUDPを利用し、多重化と暗号化ができるプロトコルです。一度接続
したことのあるサーバとは、TCPの3ウェイ・ハンドシェイクにあたるネゴ
シエーションを省略できる"0-RTT"の機能を持っています。Google社では
実装も進んでおり、既にインターネットのトラフィックでQUICの利用が観
測されています。WebブラウザでHTTP/2やSPDYを利用しているかどうかな
どを表示する拡張機能、HTTP/2 Indicator (Firefox用)やHTTP/2 and
SPDY indicator (Chrome用)があります。
HTTPS、HTTP/2、SPDYのプロトコルスタックにおける位置づけを整理した図が
スライド18に、HTTP/2とQUICを比較した図がスライド19にあります。QUICの
サーバ側の実装についてはスライド20にまとめられています。
- DoH
DNS over HTTPS (DoH)は、IETF DoH WGで策定されました。DNSの問い合わ
せ応答をHTTPSの上で行うプロトコルです。HTTP/2のみを使います。DoHは
単に伝送路としてHTTPSを使うだけでなく、HTTPの持つ機能を踏襲できる
ようになっています。例えば、同じURIに対して、クライアントが受け付
ける形式に合わせてサーバがコンテンツを返すコンテント・ネゴシエー
ション(Contents Negotiation)や、キャッシュ、リダイレクト、プロキ
シー、認証、圧縮といった、HTTPの持つ機能をDNSが利用できることにな
ります。
DoHのサーバ実装について、スライド22に情報がまとめられています。
簡潔に振り返ることのできる解説であるとともに、これらが同時進行的に導
入されていくことで、パケットの見え方やサーバの運用といった観点で、イ
ンターネットが姿を変えていくような印象を受けました。
[HTTP/2、QUIC、DoH入門の発表資料]
A new Internet? Intro to HTTP/2, QUIC, DoH and DNS over QUIC
https://conference.apnic.net/46/assets/files/APNC402/A-new-Internet-Intro-to-HTTP2-QUIC-DoH-and-DNS-over-QUIC.pdf
■ 太平洋諸島におけるインターネットの発展
APNIC 46の開催地ならではの、太平洋諸島におけるインターネットの現状と
発展に関するセッションが2日目に行われました。太平洋諸島は地理的に広く
分布しており、島々に人が分散して暮らしている地域です。そのため、イン
ターネットへの接続には、光ファイバーを敷設しやすい国々とは異なる事情
があるようです。
Pacific Internet Development (セッションのページ)
https://conference.apnic.net/46/program/schedule/#/day/7
- パプアニューギニアにおけるIXPとコミュニティWi-Fi
2017年4月、パプアニューギニアのIXPであるPNGIXPの運用が始まりまし
た。APNICやISOCの協力のもと、パプアニューギニアの情報通信技術局
(NICTA)の調整によって実現したもので、Google社、Akamai社、Facebook
社、ISC (Internet Systems Consortium)(Fルートノード)も協力していま
す。
郊外の地域におけるインターネットへの接続のため、"コミュニティ"Wi-Fi
を整備したEmstret社の取り組みが紹介されました。インターネットへの
接続にはVSAT (Very Small Aperture Terminal)の通信回線を使い、電源
の確保のために太陽光発電を使っています。また、市内にアクセスポイン
トをいち早く設置できる、衛星通信のアンテナを備えた自動車"インター
ネット・ソーラー・バギー"が開発されました。
- 地域医療のための無線通信
病院や医療従事者がいる場所が近くにない地域を多数抱えているバヌアツ
の島々では、遠隔医療に必要となる無線通信の重要性が上がっています。
そのために、島の間と島内で、パラボラアンテナを使った無線通信のネッ
トワークが作られました。医療従事者と直接話ができるようになった上
に、現地の言語を話すことができ、また患者のいる場所の地理的な事情に
ついて知っている方が対応することが、人々の安心につながっているよう
です。
- ニューカレドニアにおけるネットワーク整備
ニューカレドニアはフランス領であり、そして政府や議会があります。通
信に関する法律も整備されています。公営の通信会社であるOPT-NCの他に
五つのISPがありますが、インターネットに接続している一般家庭の割合
は54%で、普及が進んでいない地域はまだまだあるようです。OPT-NCでは、
2014年頃までに普及したADSLや3Gネットワークから、光ファイバーや4G
ネットワークへの移行が進められています。ニューカレドニア全域におい
て生活や経済状況の向上を図っていくため、ニューカレドニアならではの
「カレドニアン・モデル」を考えていく必要があるとのことです。
各プレゼンテーションのスライドは、上記のセッションのページで見ること
ができます。
◇ ◇ ◇
APNICカンファレンスはアジア太平洋地域のさまざまな場所で行われており、
開催地を訪れるたびに、地域性の違いに驚かされます。その一方で、IPやルー
ティング、DNSといった、インターネット技術の話題は共通していて、現地出
身の参加者と話していると、いわば"共通言語"のような趣を感じることがあ
ります。
Google社、Apple社、Facebook社、Amazon社、そしてCloudflare社のような、
グローバルな企業が提供しているオンラインのサービスも、さまざまな地域
で同じように使うことができるため、国をまたいだ利用者の間で"共通なもの"
と認識されることがあるのではないでしょうか。
APNICカンファレンスに参加していると、「便利であることは良いことだ」も
しくは「便利なものが広まることは良いことだ」ということとともに、「そ
の場所で生活する人にとって望ましいことは何か」という考えも頭に浮かん
できます。ある地域においては、必ずしも利便性が追求されるわけではない
かもしれません。パプアニューギニアのように、克服したい課題が他にある
かもしれません。その前線が垣間見えたという意味で、「Pacific Internet
Development」は、筆者にとって印象的なセッションでした。私たちも、現代
に生きている人々にとって望ましいことは何かを問い直すことで、インター
ネットや私たちが携わるものの、新しいモデルが見えてくるのではないかと
考えさせられました。
次回のAPNIC 47は、2019年2月19日から3月1日まで、韓国のテジョン(大田)で
開催されます。
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