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    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.1740【臨時号】2020.1.10 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.1740 です
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IGFは、インターネットガバナンスに関する課題について、さまざまな関係者
で幅広く議論される、国連主催の会合です。2019年11月下旬に、14回目とな
る会合がドイツ・ベルリンで開催されました。このIGFベルリン会合の様子に
ついて、2回に分けてご紹介します。

なお、本会合については先行してJPNICブログでもレポートを公開していま
す。写真中心でまた違った雰囲気のレポートとなっておりますので、こちら
もぜひ併せてご参照ください。

  IGF2019フォトレポート
  https://blog.nic.ad.jp/2019/3684/

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◆ IGF2019(第14回インターネットガバナンスフォーラム)報告 [前編]
                                     JPNIC インターネット推進部 山崎信
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本稿では、ドイツ連邦共和国ベルリンで2019年11月26日(火)から29日(金)の4
日間(*1)にかけて開催された、IGF2019(第14回インターネットガバナンス
フォーラム)(*2)についてご紹介します。

(*1) 11月25日=Day 0にもプログラムやブース展示が多数あり、これを含め
     ると5日間となります。

(*2) https://www.intgovforum.org/multilingual/content/igf-2019


■ 会議全体について

主催は国際連合(事務局)経済社会局(DESA)で、ローカルホストはドイツ政府
でした。IGF2019開催にあたり、ドイツ政府はかなりの支出をした模様です。
例えば、これまでのIGFでは昼食は有料で提供されることが多かったようです
が、今回は無料で提供されたり、会議参加証が市内ほぼすべての公共交通機
関の無料乗車証を兼ねたりしたなどです。さらに、今後2025年までに、IGFの
支援とマルチステークホルダーアプローチの強化に約1億円(100万USドル)を
投じると、ドイツ連邦政府経済・エネルギー大臣Peter Altmaier氏は述べて
います(*3)。ちなみに、IGFの参加費は無料です。

参加者数は、161ヶ国/地域から3,406名となりました。セッション数の合計は
200を超え、参加者が出たいセッションを把握できるよう、モバイルアプリが
提供されました。会場には展示ブースも50設置されましたが、国連主催の会
議では企業による広告はご法度なようで、ブース出展者は非営利団体のみで、
配布グッズも企業名が入ったものはありませんでした。

(*3) https://www.bmwi.de/Redaktion/DE/Downloads/I/igf-high-level-internet-governance-exchange.htm


■ 若手フェローの参加

JPNICでは、インターネットガバナンス・タスクフォース(IGTF-J)の解散時に
拠出された剰余金をお預かりして、IGF2019の開催に向けた若手人材育成のた
めの国際会議参加支援プログラム(*4)を提供し、今回は3名の若手社会人が参
加しました。参加した3名は、2019年10月末にJPNICと一般社団法人日本イン
ターネットプロバイダー協会(JAIPA)の共催で開催された、IGF2019事前会合
に参加して予習をした上で、現地では興味を持った分野のプログラムに、積
極的に参加されていました。プログラム採用者による会議参加報告書は、後
日JPNIC Webで公開される予定です。また、2020年2月頃に開催見込みの
IGF2019報告会でも、参加報告を発表する予定です。JPNICでは今後も、イン
ターネット業界の人材育成に貢献できるような取り組みを続けてまいります。

(*4) https://www.nic.ad.jp/ja/intl/fellowship-program/igf-2019.html


■ 開会式

11月26日の午後に、開会式が開催されました。最初に、チェンバロ(ハープシ
コード)の演奏をバックに、創作舞踊が披露されました。その後、今年(2019
年)はベルリンの壁崩壊(1989年)からちょうど30周年ということで、壁が取り
壊された当時の映像が投影されました。

次に、アントニオ・グテーレス国連事務総長によるスピーチ(*5)が、英語で
行われました。「私もメルケル首相も、当初は理系の背景(グテーレス氏は電
気工学エンジニア、メルケル氏は物理学者および化学者)を持っていたのに、
道を見失い、ついには政治家になってしまった」という冗談から始まり、現
在は物理的な壁だけでなく、仮想的な壁がインターネット空間に作られつつ
あり、さらなる分断を避けるには「一つのビジョン、一つの世界、一つのイ
ンターネット」を持つことだ、と述べました。なお、カギ括弧内は、IGF2019
のスローガンでもあります。

次いで、ホスト国ドイツのアンゲラ・メルケル首相によるスピーチが、ドイ
ツ語で行われました(*6)(*7)。自由、つながり、進歩のための希望が、30年
前にベルリンの壁崩壊を導いたが、インターネットとワールドワイドウェブ
(WWW)の創設者たちにも、同様の価値が背後にあった、と述べました。メルケ
ル首相はまた、インターネットの自由は当然のものとして享受できるわけで
はなく、オフラインの場合に損なわれたりするのと同様、限度があると述べ
ました。さらに、独裁国家が政治的またはイデオロギー的な制約をインター
ネットに課すという計画に対し、IGFは毅然と反対しなければならない、と述
べました。

両氏に共通する内容としては、自由で開かれ、かつ分散化したインターネッ
トを保証するため、インターネットガバナンスを造り替えるためのプラット
フォームとして国連を支持したことです。その上で、インターネットガバナ
ンスに関する規範や枠組みを進化させるために、国連の枠内ですべてのステー
クホルダーが集まり、インターネットに関する緊急の政策課題に取り組むた
めの土台として、IGFを強化する、ということになります。

(*5) https://www.un.org/sg/en/content/sg/statement/2019-11-26/secretary-generals-remarks-the-internet-governance-forum-delivered
(*6) 英文要約:https://www.bundeskanzlerin.de/bkin-en/news/merkel-igf-1698720
(*7) 独語全文:https://www.bundeskanzlerin.de/bkin-de/aktuelles/rede-von-bundeskanzlerin-angela-merkel-zur-eroeffnung-des-14-internet-governance-forums-26-november-2019-in-berlin-1698264


■ デジタル協力に関するハイレベルパネル報告

国連デジタル協力に関するハイレベルパネル(HLPDC)(*8)は、2018年7月に国
連事務総長により設置が発表され、2019年6月に報告書(*9)が公開されまし
た。同パネルの目的は、デジタル技術の進展に比べ、現在の国際協力の水準
が、十分でないギャップを埋めるためとされています。11月26日(火)(Day 1)
には、IGFコミュニティによる関与の余地を提供するために、HLPDCに関する
メインセッション(*10)が、開会式に先駆けて午前中に開催されました。

本セッションでは、着席位置がステークホルダー種別ごとに指定されており、
左から政府、民間セクター、市民社会、技術コミュニティとなっています。
これは、2014年にブラジルで開催された、NETmundialに倣ったものではない
かということです。なお、NETmundial開催から5年が経つため、その振り返り
セッションも、会期中に開催されていました。

モデレーターは、2019年IGFマルチステークホルダー諮問グループ(MAG)議長
Lynn St. Amour氏(米国、元Internet Society事務総長)で、パネリストは
Dr. Daniela Broenstrup氏(2019年MAG共同議長、ドイツ連邦経済エネルギー
省電気通信・郵便・メディア・国際インターネット政策局)、Fabrizio
Hochschild Drummond氏(チリ、国連事務次長補)、Benedicto Fonseca
Filho大使(ブラジル、拡大協力(Enhanced Cooperation)に関するCSTD WG元議
長)という顔ぶれでした。

まず、Drummond事務次長補が登壇し、パネルの目的はデジタル空間における
協力強化を、どのように実現するかということに関する勧告の提示だという
ことを強調しました。次いで、既存の取り組みを補完するために、国際的な
協力の必要性に言及し、法制化はイノベーションに比べはるかに遅れており、
かつ途上国の国々および女性を包含する必要性について述べました。最後に、
国連75周年に向けた取り組みと、自由で安全でグローバルなインターネット
の支持との連携について触れました。

パネルディスカッションでは、インターネットガバナンスへのマルチステー
クホルダーによるアプローチへの広範な支持と同時に、多国間主義
(multilateralism)の必要性も指摘され、国連との関わり合いをどのようにす
るか、ということについて、さまざまな意見が出されました。最近の、イン
ターネットガバナンスをめぐる規制の急増および政府の役割の増大を支持す
る人がいる一方で、多くの人が取り組みの分裂について警告し、調整の必要
性について指摘しました。さらに、国連事務総長室主導での、HLPDC報告書を
受けたプロセスに関する透明性について、懸念を示した参加者もおり、事務
次長補は進んですべてのステークホルダーによる、関与を求める旨述べまし
た。

次に、HLPDC報告書第4章で示された、デジタル協力に関する次の三つのモデ
ルについての議論が行われました。

・Internet Governance Forum Plus (IGF+)(*11)
・Distributed Co-Governance Architecture (COGOV)(*12)
・Digital Commons Architecture(*13)

IGF+については広範な支持が得られましたが、政府、産業界および途上国の
国々からの、より包含的な参加が必要だということが強調されました。また
IGFは、ボトムアップおよびコミュニティ駆動のままでいるべきだというのが
一般的な合意で、その意味で国別・地域別IGF(NRI)の成果がポジティブに認
識され、IGF+モデルに統合される必要性が強調されました。参加者によって
は、現状の対話と意思決定の溝について言及し、IGFはより行動的で形のある
成果を生み出すべきだとしましたが、一方でIGFは、現状の意思決定をしない
フォーラムのままであるべきだ、という意見もありました。パリコール(*14)
やクライストチャーチコール(*15)などの、デジタルポリシー課題を扱うため
の既存のプロセスや構想を調和させることをめざしている、IGF+に含まれる
協力促進手段(Cooperation Accelerator)への支持の表明もありました。他の
二つについては、IGF+ほど支持は表明されませんでした。IGFを、制度的に国
連事務総長室直轄(現在はUNDESAの管理下)にするという意向について、支持
する人もいましたが、それに伴い何が必要となるのか、検討する必要性につ
いて言及した人もいました。St. Amour氏は最後に、IGF+は参加と資金提供が
必要だが、本フォーラムから恩恵を受ける人すべてにとって、やりがいのあ
るものになるだろうと締めくくりました。

筆者にとって、IGF+は既定路線になっており、IGF全体を通じて政府および国
連寄りになりつつあるとの印象を受けましたが、どのように意思決定をする
のかという具体策で、議論が百出するのではないかということと、新たな仕
組みに伴う費用を誰が出すのかというあたりが、今後の課題であると思いま
した。

(*8) https://digitalcooperation.org/
(*9) https://digitalcooperation.org/report/
(*10) https://www.intgovforum.org/multilingual/content/digital-cooperation-and-internet-governance

(*11) IGFに、マルチステークホルダーおよび多数の国家による参加の正統性
      を追加するために考案されたもので、諮問委員会、協力促進機構
      (Cooperation Accelerator)、政策孵化機構(Policy Incubator)、観測
      所および問い合わせ窓口(Observatory and Help Desk)などの機構を持
      ちます。

(*12) 適切な当局が規範について、設計から実装、さらには執行することを
      想定して、分散しているが結合力のあるデジタル協力アーキテクチャー
      がすべての段階をカバーすることを実現する、新たな仕組みです。イン
      ターネット界の既存組織(ICANN、IETF、RIR等)で使われている、縦割
      りではない自己展開した、水平で機敏な取り組み方に依存しています。

(*13) デジタル技術によるSDG (Sustainable Development Goal)の促進を確
      実にし、社会的な害のリスクに対処するために、政府、市民社会およ
      び民間企業が協力することを想定しています。新たに発生した課題に
      関する対話を作成するために、マルチステークホルダーによるトラッ
      クからなり、各トラックは国連機関、民間のコンソーシアムもしくは
      マルチステークホルダーによるフォーラムなどが、主導することが想
      定されています。

(*14) 新しい脅威への共同対応として、サイバー空間の安全確保に関する共
      通原則を策定するための呼びかけです。
      Paris Call for Trust and Security in Cyberspace
      https://jp.ambafrance.org/IMG/pdf/paris_call_for_trust_and_security_in_cyberspace.pdf (英語版)

(*15) 政府と技術系企業が、テロリストおよび暴力的な過激主義のオンライ
      ンコンテンツを取り除くという内容の公約です。日本政府も支持して
      います。
      Christchurch Call (to eliminate terrorist & violent extremist
      content online)
      https://www.christchurchcall.com/


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 JPNIC News & Views vol.1740 【臨時号】

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