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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1747【臨時号】2020.1.29 ◆
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◆ News & Views vol.1747 です
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vol.1738より、2019年11月下旬にシンガポールで開催された第106回IETFミー
ティングのレポートを、連載にてお届けしています。最終回となる本号では、
電子メールに関する技術仕様の動向についてご紹介します。
なお、これまでに発行した第106回IETFの各報告については、下記のURLから
バックナンバーをご覧ください。
□第106回IETF報告
○[第1弾] 全体会議報告 (vol.1738)
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2020/vol1738.html
○[第2弾] トランスポートエリア関連報告
~Web Packing BoFとWebTransport BoF~ (vol.1739)
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2020/vol1739.html
○[第3弾] DDoS対策(DOTS WG)関連報告 (vol.1744)
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2020/vol1744.html
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◆ 第106回IETF報告 [第4弾] メール関連報告
株式会社インターネットイニシアティブ 櫻庭秀次
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本稿では、2019年11月下旬にシンガポールで開催されたIETF 106ミーティン
グを含め、最近のメールに関する技術仕様の動向についてご紹介します。迷
惑メールの問題や、フィッシング、BEC (Business Email Compromise)等のセ
キュリティ脅威を背景に、メールの送信元を確認する送信ドメイン認証技術
や、メールの配送経路の暗号化に関わる技術仕様について、IETFでは議論さ
れてきました。
■ 送信ドメイン認証技術とdmarc WG
IETFでは、当初SenderIDとして仕様の統合を目指したSPF (Sender Policy
Framework)が、改定後にExperimental RFCからStandards TrackのRFC 7208と
なりました。SPFは、直近の送信元IPアドレスが正しい送信元であるかどうか
を認証しますが、メールの配送経路に依存しない、電子署名技術を認証に利
用するDKIM (DomainKeys Identified Mail)が、STD 76 (RFC 6376)となりま
した。SPFは、送信側の導入の容易さから、普及率が高いという特徴がありま
す。DKIMは、メール転送時に認証が失敗するSPFの補完として、またメッセー
ジ内容の改ざんを検知できる堅牢な技術として、普及が進みつつあります。
SPFとDKIMは、それぞれ独立した技術仕様ですが、これらの認証結果を利用す
る、統合的なドメイン認証技術がDMARC (Domain-based Message
Authentication, Reporting, and Conformance)であり、RFC 7489として標準
化されています。DMARCは、送信元を認証する仕組み以外にも、以下の特徴が
あります。
- メール受信者が送信者情報と判断する、ヘッダ上のFromのドメインを認証
- メール受信側から認証結果や受信処理結果に関する情報を、送信ドメイン
側に通知するレポート機能(DMARCレポート)
- ドメイン管理側が、認証が失敗したメールの取り扱いを示すポリシーをDNS
上に設定(DMARCレコード)
SPFとDMARC、さらにDMARCを利用したとしても、現在の一般的なメール利用形
態の中には、送信ドメイン認証に対応した正規のメールが、認証失敗する場
合が残されています。メーリングリストなど、メールを再配送するようなケー
スの一部です。こうした課題にも対応するため、メールの受信側だけが送信
元を認証するという仕組みから、メール転送やメーリングリストなどそれぞ
れの再配送元でも認証を行い、それらの結果を示すヘッダを含めて再署名を
行うことで認証のチェーンを構成するための仕様が、dmarc WGで検討され、
ARC (Authenticated Received Chain, RFC 8617)となりました。
現在もdmarc WGでは、組織ドメインを判断する仕組みとしてpublic suffix
listに依存しない仕様や、DMARCをよりよく使うための改善などを検討してい
ます。しかしながら、今回のIETF 106 meetingでは、dmarc WGは開催されま
せんでした。
■ uta WG
メールなどのアプリケーションで、通信相手を認証したり通信内容を暗号化
したりするためにTLSを利用し、セキュリティを高めたいと考える機運が高
まっています。しかしながら、例えばメールの配送プロトコルであるSMTPで
は、メールの送信側がTLS (STARTTLS)に対応していても、受信側で対応して
いなかったり、TLSのネゴシエーションが失敗したりした場合には、メッセー
ジが平文で送信されます。本来のメール送受信側それぞれで対応できる場合
でも、何らかの方法により悪意のある中間者が介在した場合は、容易にTLSを
無効化できてしまう、ダウングレード問題が課題として存在していました。
こうしたアプリケーション上のTLSについて、仕様を整備していくためのWGが
uta (Using TLS in Applications)です。
MTA-STS (SMTP MTA Strict Transport Security, RFC 8461)では、受信側の
ドメインが、あらかじめTLS (STARTTLS)に対応しているかを、DNSとHTTPSを
利用してポリシーとして伝えたり、TLSのネゴシエーションが失敗したりした
場合に、メール送信を(平文で)継続するかを示すことができます。
また、こうしたTLSの実施状況を、メールの送信側から受信側へレポートする
TLSRPT (SMTP TLS Reporting, RFC 8460)も仕様化されました。これらの仕様
により、メール配送時のTLS利用がより進むことが期待されます。
■ IETF 106 meeting
今回のシンガポールでのmeetingでは、これらのWG会合は開催されず、メール
関連ではjmap (JSON Mail Access Protocol) WGのみが開催されました。JMAP
は、メールやカレンダーデータ、コンタクトアドレスなどを、JSON
(JavaScript Object Notation)形式で、サーバとクライアントの間で同期す
るためのプロトコルです。既にメールの基本的な仕組みは、RFC 8620とRFC
8621となっていますが、今回の会合では、カレンダーデータについて検討が
行われました。カレンダーデータについては、calext (Calendaring
Extensions) WGでも議論されており、双方とも協調した作業が行われていま
す。
■ 終わりに
メール関連では、送信ドメイン認証技術や暗号化関連以外にも、IETF 104
meetingでBoFが開催された、BIMI (Brand Indicators for Message
Identification)も検討されています。まだWGとはなっていませんが、個人的
には、メールに関連するアプリケーション的な要素と、セキュリティ的な側
面の検討が必要な、興味位深い議論となるのではと考えています。メールは
基盤技術であり、重要なコミュニケーションツールのため、最近ではセキュ
リティ的な対策に関連する仕様の検討が多いのですが、メールをアプリケー
ションとして、より便利にするための議論があっても良いはずです。
今後もメールが有益なツールとして利用できるように、関連する議論に関わっ
ていきたいと考えています。
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