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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1827【臨時号】2021.2.16 ◆
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◆ News & Views vol.1827 です
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2020年11月2日(月)~6日(金)・11月9日(月)~17日(火)・11月25日(水)の計12
日間にわたり、IGF 2020が完全オンラインにて開催されました。本会合につ
いては、既に2020年11月6日(金)に開始直後のタイミングで、概要についてお
伝えしています。
IGF 2020および国内事前会合報告
https://blog.nic.ad.jp/2020/5415/
本稿では開催後の詳細な報告として、IGF2020の内容を本号より3号に分けて
お届けします。本号は、IGF 2020の全体概要とメインセッションの報告とな
ります。開催から時間が経ってしまいましたが、その分盛りだくさんな内容
となっていますので、上記ブログ記事と併せてぜひお読みください。
次号以降では、各国議員や国別・地域別IGF (NRI)関連のセッション、ハイレ
ベルセッションなどの模様をご紹介します。
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◆ IGF 2020(第15回インターネットガバナンスフォーラム)報告 [第1弾]
~全体概要・メインセッション~
JPNIC インターネット推進部 山崎信
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IGF 2020は、元々ポーランドがホスト国となってポーランドのカトヴィツェで
開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に広がった
ため、完全オンラインでの開催となりました。
■ 参加者数・セッション数
最終的な登録者数は、173ヶ国・地域から6136名に達しました。ステークホル
ダーの内訳は次の通りです。
・市民社会:39.8%
・民間部門:18.1%
・政府:16.5%
・技術コミュニティ:15.2%
・政府間組織:9%
・立法府議員:1.2%
・記者/報道機関:0.2%
セッション数は295となり、内訳は次の通りです。
・ワークショップ:84
・プレイベント:80
・ネットワーキングセッション:60
・オープンフォーラム:28
・動的連携(Dynamic Coalition)セッション:17
・ハイレベル・祭典セッション:8
・メインセッション:7
・国別・地域別イニシアティブ(NRI)セッション:7
・ユースセッション:7
・ベストプラクティスフォーラム(BPF):4
・導入・説明セッション:1
・質疑応答・意見表明セッション:1
■ IGF 2020の特徴
IGF 2020で最大の特徴は、なんといっても完全オンラインとなったことでしょ
う。これまでも、IGFの多くのプログラムは遠隔から視聴することができまし
たが、IGF 2020ではすべてのプログラムがオンラインのみとなったため、運営
側、プログラムを企画した方々、一般参加者にとっても、これまでにない挑戦
となったのではないかと思います。
元々、ポーランドでの開催が予定されていたため、開催タイムゾーンは欧州と
されたようですが、さまざまな地域からの参加を想定して、プログラムは協定
世界時(UTC)で6時から20時(日本時間で15時から翌朝5時)と、かなり幅広い時
間帯での開催となりました。傾向として、重要なセッションは後の方の時間帯
での開催が多かったため、日本では深夜早朝となりました。とはいえ、録画に
よる視聴も可能なため、無理して夜中に起きる必要はありませんでした。
他の新規プログラム形態としては、ユース(青年/若者)サミットが11月5日に
開催されたことです。次に挙げるテーマごとにセッションがあり、それぞれ国
別ユースIGFより何組織かが主要論者として指名され、議論が行われました。
・テーマ1:人々をデジタル的につなぐために橋を架ける(インターネットへ
の依存、デジタルデバイド、普遍的な接続性、成功例)
・テーマ2:正式な教育の再考:次のデジタル世代のための4.0ビジョン(各国
事例の評価、デジタルに関する知識のある学生・教員のための学
校のカリキュラム改革、オープンな教育資源(Open Educational
Resources; OER)および大規模公開オンライン講座 (Massive
Online Open Courses; MOOCs)などを通じた教育、学生サービス
における新技術)
・テーマ3:次世代指導者および専門家のためのインターネットガバナンスに
関する能力開発(議論と意思決定プロセスにおける若者参加の重
要性、デジタル協力のための自己組織化されたユース活動、将来
の見通し)
ユース向けには、他にもいくつかメインテーマに沿ったプログラムもあり、こ
れらすべてを実現するために、IGF事務局とIGF 2020のホスト国であるポーラ
ンド政府およびポーランド研究・学術コンピューターネットワークNASK、国連、
Internet Society、インターネットガバナンスに関するユース連合(YCIG)など
が協力したということです。
さらに、最近国連のプロセスでははやりであるらしい(*1)、「自発的目標
(voluntary commitment)」(*2)が募集されることとなり、各セッションの最後
にはモデレーターがパネリストに少なくとも一つは自発的目標を表明するよう
促すことになりました。
(*1) 例として挙げられたもののうち2点を引用します。
国連海洋会議における自発的目標
https://oceanconference.un.org/commitments/
持続的開発目標(SDG)加速行動
https://sustainabledevelopment.un.org/sdgactions
(*2) IGF 2020 Call for Voluntary Commitments
https://www.intgovforum.org/multilingual/content/igf-2020%E2%80%8E-call-for-voluntary-commitments%C2%A0
IGF 2020のテーマについては前述のブログ記事で触れましたが、環境がIGFの
テーマとして入ったのは今回が初めてということです。
■ メインセッション
重点テーマである、データ、環境、包摂(Inclusion)、信頼(Trust)のそれぞれ
について、および特別テーマであるデジタル協力についての計5セッションが
開催されました。メインセッション開催中は時間帯の重なる他セッションは開
催されませんでした。各セッションの概要は次の通りです。
○データ
パンデミックと戦うためにデータ利用が求められている状況において、プライ
バシーや他の人権を確保することに関連した課題について議論されました。パ
ネリストからの主な意見を以下に列挙します。
・社会的な振る舞いや動きが分かり、それを利用して人々に影響を与えること
に使えてしまうので、個人よりも、社会的なプライバシーが守られないこと
がより大きな脅威であり、何を収集しているのか、どのように影響を与える
のか、このような脅威を可能な限り排除するためにはどうすればよいかを考
え、技術を構築していくことが重要
・COVID-19パンデミックが明らかにしたのは、政府や民間セクターが持って
いたデータの枠組みが非効率であったこと
・インターネットの普及率が低いところでは、デジタルによる解決策は万能
ではない
・情報処理に関する法的・倫理的な枠組みを確立することは、透明性と説明
責任を確立し、データ駆動型のテクノロジーが既存の不平等を深化させな
いようにするために不可欠
・データ駆動型技術のメリットは、政府や民間企業だけでなく、地域社会や
個人も含めて、誰もが利用できるものでなければならず、そのためには、
データ駆動型技術を最大限に活用するためのデジタル機器や接続性、デジ
タルリテラシーのスキルが必要
○環境
気候変動の影響を計測、理解、そして気候変動への対処を通じてどのように技
術が使われ発展するかを探るためのセッションで、パネリストの出身母体は政
府、環境関連企業、電子商取引/クラウドプラットフォーム企業、通信事業者、
国連機関、インターネット技術コミュニティでした。主な意見としては、気候
変動の解決にはデジタル技術が重要となる、環境に関するデジタル協力が中心
的トピックで、その次は環境データと分析の分散ネットワークの構築が必要、
さまざまなステークホルダーからの参加が必要で、IGFはそのためには適切な
フォーラムである、などが挙がりました。
○包摂
国連事務総長が発行した「デジタル協力に関するロードマップ」(*3)には、現
在世界の人口の半分はインターネットアクセスがないが、2030年までに、すべ
ての人が安全で手ごろなインターネットアクセスができるようになるべき、と
記載されています。この目標への回答として、本セッションでは何がデジタル
包摂となるのか、意味のある接続性とは何かについて議論されました。議論で
は、デジタル包摂が多面的であることが明らかになりました。
・数十億人の人々に対してインターネットサービスへのアクセスを可能にす
ることは、デジタルデバイドを克服するにあたり最重要な挑戦の一つであ
るが、インターネットサービスの価格とビジネスモデルのため、途上国の
人々がインターネットなしの世界に住み続けることを余儀なくされている
・インターネットへの接続は贅沢ではなく基本的な必需サービスであり、デ
ジタル包摂にはアクセス、スキル、サービスの価格が手ごろであること、
および地元のコンテンツが入手可能であることのすべてが必要である
・途上国では、地域の文脈を理解し、より地域に密着したコンテンツを制作
できる管理者を擁する、従来型ではないコミュニティネットワークを可能
にするため、規制を改革する必要がある
・デジタル包摂は電力の安定供給なしには達成できないため、電気通信イン
フラセクターは電力セクターと協力すべき
・デジタル接続性は公共財であるという考えに沿って、インフラ共有によっ
て節約されたコストは、インターネットサービスのコストを削減するため
に分配されるべき
・事業者間での周波数帯の共有、および非営利目的の接続のために周波数帯
の一定割合を割り当てることを提唱
・インターネット接続は現場にいる技術者の力で成り立つので能力開発が重
要。公的機関も民間機関も、コミュニティにおけるデジタル包摂を確保す
るためには、人に投資する必要あり。利用者向けにデジタルリテラシー、
特にセキュリティと安全性に関する知識を開発することで、より安全で回
復力のあるインターネットにできる
(*3) JPNICブログ「『デジタル協力』関連の最新動向」
2.2. グローバルな((ネットへの))接続性
https://blog.nic.ad.jp/2020/4874/
○信頼
・歴史的、地理的、政治的、技術的、経済的な観点から、デジタル主権、イ
ンターネットの分断および電気通信技術およびコンテンツモデレーション
における信頼について主に議論されました。
・以下の三つの質問を軸に議論が進められました。
- デジタル主権:デジタル生活における信頼
- 偽情報(disinformation)および分断(fragmentation):情報における信頼
- インターネットの分断:ネットワークのネットワークにおける信頼
・本セッションのパネリストのうち2名(ITU奥田敦子氏、慶應義塾大学村井純
氏)が日本人でした。
- 奥田氏からは、「データ主権は重要な課題であり、規範と原則に関する
作業部会を設立するのは重要」との意見が示され、2019年に中国の通信
事業者からITUの研究グループに提案されたNew IPに関する議論について
紹介がありました。
- 村井氏は、「2000年以降に特に米国で起こったこととして、政府がイン
ターネット空間に対する懸念を持っており、政府は安全保障と経済が問
題と提起し始めた。政府間の国際的な関係についても、変化していくべ
きで、明確に議論し、知恵を交換しなければならない」と述べました。
・New IP提案については、IETFのAlissa Cooper氏より適切な正当化レベルに
ないとの発言があり、インターネットの分断を招くものだと思われている
ようです。
○デジタル協力
国連事務総長によるデジタル協力へのロードマップとオプションペーパーを受
けて開催されたセッションで、次の3部からなります。
・第1部:議長である国連事務次長(国連75周年記念準備担当)Fabrizio
Hochschild氏からグローバルなデジタル協力について解説がありま
した。この中で、2020年9月に採択された国連75周年記念宣言にお
いてデジタル協力の進歩が盛り込まれ、国連がすべての関係者向け
のプラットフォームとなるべきとしたため、国連加盟国が正式にグ
ローバルなデジタル協力の必要性を認識した旨について言及されま
した。
・第2部:政府高官などによる議論:アラブ首長国連邦およびシエラレオネ政
府、ISOC、欧州電気通信事業者協会(ETNO)、Facebook社などからの
パネリストが参加。パネリストからは、議論と実装可能な解決策と
の溝を埋めるには、インターネットが何かという共通理解が必要、
議員が各国で対話を行うことについて支援すべき、などの意見が出
ました。
・第3部:参加者との対話:スイス政府、ドイツ政府、インターネットガバナ
ンスに関する汎欧州対話(EuroDIG)、ファーウェイ社、現MAG議長、
前MAG議長などが参加しました。ステークホルダー間の壁を取り払
い、議論と実用的な解決策の間の溝を埋めること、および議論が意
思決定者に届く必要があることが重要な課題であること、資金面の
支援の必要性、途上国や中小企業の包摂の必要性などといった意見
がありました。
続きは、第2弾にてお届けいたします。
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