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【 2 】News & Views Column
「<これでいいのかな?> インターネットガバナンスについて」
ハイパーネットワーク社会研究所副所長
インターネットガバナンス・タスクフォース事務局長
会津 泉
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世界中の政府が集まって「WSIS(*1)情報社会サミット」が開かれたのが、2003
年12月。そこでインターネットの管理のあり方=「インターネットガバナンス」
が大きな議論になった。ドメイン名やIPアドレスを管理する民間組織ICANNの
体制が米国中心過ぎて、政府や途上国の関与が不十分だという批判が発端だっ
た。
この結果、国連事務総長のもとでインターネットガバナンス作業部会
(WGIG)(*2)が設置され、昨年11月から検討が続いている。日本からもJPNICな
どによってインターネットガバナンス・タスクフォース(IGTF)(*3)がつくられ、
この活動に参加し、これまでインターネットの発展を支えてきた民間主導体制
の維持を働きかけている。
WGIGでの検討が進むにつれて、ドメイン名やICANNなどのインフラ管理よりも、
スパムやウィルス、セキュリティなど、インターネットの利用全般にかかわる
問題が重要だとの認識が深まってきたようだ。確かに、一般の利用者にとって
は、ドメイン名管理のあり方などは専門的過ぎるが、スパムやウィルスは日常
的に迷惑し、困っている問題だ。しかも、フィッシングなども含めて、実害が
ある。その多くは国境を越えて送られてくるから、一国内だけでは、解決も難
しい。
これらの問題を解決するために、関係者は十分に努力しているだろうか。率直
に言って、そうは思えない。技術的な対応は必要だが、それだけでは不足だ。
国際的な協力体制をみると、残念ながらまだまだだ。
法律、制度の整備も重要だが、それよりも、インターネット関係者の自発的な
努力と協力が何よりも重要だ。同時に、本当に困っている、利用者の声をもっ
と積極的に聴くこと、生かすことが大事ではなかろうか。
WGIGは7月に最終報告書を出す予定で、その後、11月にチュニジアで開かれる
第二回の世界情報社会サミットに向けて、各国政府による交渉が始まる。
ICANN問題を含めて容易に合意ができるとは思えないが、WGIGではスパムを含
めてインターネットの管理問題を検討する国際フォーラムを常設する案が浮上
している。
インターネットの本質をよく理解していない政府の関与が増えるのはごめんだ
が、その分、社会的な責任を果たすべく、関係者の取り組みを大幅に増やす必
要がある。とくに国際的な協力が要になる。日本からも、利用者・市民の代表
にもっと参加を働きかけることが重要ではないか。関係者の皆さんの熟考を期
待したい。
WGIG(インターネットガバナンス作業部会) http://www.wgig.org/
IGTF(インターネットガバナンス・タスクフォース) http://www.igtf.jp/
(*1) WSIS: http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-kz.html#03-wsis
(*2) WGIG: http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-kz.html#03-wgig
(*3) IGTF: http://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/igtf.html

