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ニュースレターNo.24/2003年7月発行

特集:ENUMの現状と今後の展開

1.はじめに―ENUMとは

情報化社会に生きる現在、電話やFAX・携帯電話・メール等々、通信手段の多様化は一層進んでいます。それに伴い、自分が持つメールアカウントや電話番号(会社・家・携帯)の情報、並びに知人に関する同様の情報の管理にも並々ならぬ手間がかかるようになります。しかも今後のマルチメディア化に伴い、通信手段はさらに増える可能性もあります。こういったことを考えるとこれからの時代は、このような情報リソースをうまく管理し、タイムリーに活用する能力を持たないと、円滑なコミュニケーションが取れずに、機会損失や意思決定の遅れといった問題を引き起こす場合もあります。そのため今後は、情報伝達のスピードと質を高める為に、一つの「キー」を使用することで適切な連絡先情報を検索して接続し、使用環境に応じたコミュニケーションが取れるツールが欲しい……という強い社会的ニーズが出てきても、おかしくはありません。

このようなニーズを解決することのできる技術があります。それがENUM(tElephone NUmber Mapping)です。ENUMとは、電話番号を「キー」とし、DNS(Domain Name System)を用いて、インターネット上のサービスを識別する仕組みです。具体的にいうと、電話番号をまずドメイン名の形(e164.arpa)に変換し、それをDNSで、相手が接続してほしいと思っているURI(Uniform Resource Identifier)と対応づけます。それによりそのURIで指定されたアプリケーション、たとえばIPネットワーク上の電話やメールなどに接続することが可能になります(図1:ENUMにおける電話番号から接続情報への変換手順)。

図:ENUM変換手順
図1:ENUMにおける電話番号から接続情報への変換手順

ENUMで「キー」として使われている電話番号(E.164番号)は、国際接続を考慮して、国際的な階層構造のもと管理されていますので、世界中でユニークなものです。さらに、数字だけを用いているので各国の言語に依存していません。したがってENUMは、世界に跨るグローバルなコミュニケーション構造の基礎としては大変高いポテンシャルを持っているといえるのです。

2.日本におけるENUMの現在の検討状況―ENUM研究グループ

日本においてENUMは、前述とは少し異なったアプローチからクローズアップされてきました。我が国でENUMは、総務省の「IPネットワーク技術に関する研究会」において「IP電話」の実装手段の一つとして紹介されたことを契機に、幅広く注目を集めることになりました(図2:既存電話(含むIP電話)網の番号解決手段としてのENUM)。

図:番号解決手段としてのENUM
>図2:既存電話(含むIP電話)網の番号解決手段としてのENUM

定額制のインターネット接続サービス経由で電話をかけることが可能な「IP電話」は、市外電話の概念がなく、通話料が通話距離に依存しないことから通信コストを大幅に削減するとして注目され、世間の関心を集めています。既存の電話網とIP電話を接続する方法、またはIP電話同士をルーティングするための方法はいくつか考えられますが、クローズドのIP網でつながっている特定のキャリア間だけではなく、世界中をまたにかけたグローバルな接続を可能とするということを考えたときに、広域で動くデータベースを最初から作るのは大変です。そこですでに自律分散型で運用されているDNSにうまくのせられれば効率的だという議論があり、ENUMが注目を浴びたのです。

JPNICでは、このような日本の実情に即したENUMの管理運用方式や技術標準を民間の主導にて提案することを目的として、「ENUM研究グループ」を2002年9月に設立しました。この「ENUM研究グループ」は、総務省内に設置された主にENUM導入にかかる制度面の問題を検討する「ENUM検討小グループ」や「平成14年度電話番号に関する研究会」などと連携をとりつつ活動を行ってきました。2003年5月までの間に、23会員の方々と研究会・分科会等の活動を通して、ENUMの実現方式や運用方式、関連する技術的課題の検討を行いました。その結果、この研究会活動の集大成として「ENUM研究グループ報告書」を作成しました。

この「ENUM研究グループ報告書」の中で、最も時間を費やし、そして最大の成果だと自負する点は、これまでいろいろな立場からの接続場面を想定して混然と議論されていたENUM自体を、「オペレータENUM」と「ユーザENUM」という二つのENUMに整理し、文章にして類型化することを試みたことです。日本ではIP電話サービスのルーティングの一手段としてENUMに注目が集まったことは前述しましたが、この場合のように電話番号の割り当てを受けている事業者が主体となり、自社サービス提供の意図でENUMレコードを設定する場合は「オペレータENUM」と定義します。一方、電話番号を利用しているユーザ自身が主体となり、自らの意志で接続したいアプリケーションを特定し、ENUMのレコードを登録する場合は「ユーザENUM」と呼びます。冒頭で述べた、一つの電話番号から接続したいアプリケーションを選んで接続するモデルなどがこのケースにあたります。

ENUMをこのように登録主体別に二分化したことにより、それぞれのENUMによって解決できるもの(できないもの)が明確となりました(「ENUM研究グループ報告書」第4章に記載)。また登録モデル(ポリシー)・課金の方法についても、どういったケースでENUMを使うかにより何を検討しなくてはいけないか明らかとなりました(「ENUM研究グループ報告書」第6章に記載)。さらには、それぞれのENUMの課題、たとえば制度上の問題なのか、セキュリティ上の問題なのかなどの問題点もクリアになってきました(「ENUM研究グループ報告書」第7章に記載)(表1:「ENUM研究グループ報告書」の章立てとポイント)。

■表1:「ENUM研究グループ報告書」の章立てとポイント
◆第1章
はじめに
ENUM研究グループを始めてまず最初に解決しなければならなかった課題は、関連用語の統一です。ENUMがIETFとITU-Tを舞台にして並行して検討が進められている状況を反映して、ENUM研究グループにもインターネット、電話の両業界の有識者が会することになりました。隣接業界とはいえ、双方の間には技術用語の解釈には微妙な隔たりがあり、今後技術的な議論を掘り下げていくためには関連用語の再定義からスタートするべきと考え、統一用語集を編纂しました。
◆第2章
ENUMの概要
ENUM動作例や仕様、DDDS(Dynamic Delegation Discovery System)、Tier構造とDNSのゾーン構造についてまとめました。また、関連団体の活動概要としては、各国のENUMトライアルの状況についても言及しています。
◆第3章
ユーザENUMと
オペレータENUM
ここでENUMを、「オペレータENUM」と「ユーザENUM」という二つのENUMに整理し、類型化することを試みました。
◆第4章
ENUM導入によって
期待されるもの
(解決が期待されるもの)
第3章で定義した「ユーザENUM」「オペレータENUM」のモデルを、インターネット電話および既存の電話への着呼等の実装例に発展させ、各々の場合に実現できる番号解決スキームに関して考察しました。
◆第5章
SIPとSIPのENUM対応
インターネット電話で主流となることが期待されるセッション確立のためのプロトコルであるSIP(Session Initiation Protocol)の概要とSIPサービスのENUM対応等について述べています。
◆第6章
ENUM登録の流れ
ITU-Tで定義されているENUMのレジストリ・レジストラモデルや、一般的なレジストリ・レジストラモデルの登録管理手順・情報をまとめたうえで、ENUMで想定されるさまざまな登録手順のバリエーションを提示しています。
◆第7章
個人情報保護と
セキュリティ、信頼性
ENUMのセキュリティについては、ENUM固有の課題もありますが、DNSに起因する課題、ENUMを含むコミュニケーションサービスに関する課題、インターネット上のネットワークシステムに起因する課題もあります。それらを分類し、問題点を整理しています。
◆第8章
最後に
ENUM研究グループでは、ENUMの実装における技術面での可能性とその課題をテーマとして活動してきました。しかしENUMを実際にサービスとして提供するまでには、これ以外にも現行の法制度との整合性等の制度面の課題や、課金等のビジネス面での課題の検討を併せて進めることが必要となります。
◆附録 インターネット業界の人にはなじみの薄い電気通信番号(電話番号)とその規則についての解説と、研究グループのメンバーの名簿を掲載しています。

3.海外におけるENUMの現在の検討状況―標準化の動向

ENUMの導入に向けた標準化に関しては、IETF(Internet Engineering Task Force)とITU-T (International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector :国際電気通信連合の電気通信標準化部門)が共同で検討しています。IETFは主に技術標準の策定を行っており、ITU-Tでは管理基準についての議論を行っています。

IETFでは、Transport AreaにENUM WGがあり、ここによりENUMの仕様を決めたRFC2916※1が2000年9月に制定されました。その後、拡張版のRFC2916bisについて議論がありましたが、これは2003年6月現在、標準化プロセスの技術的な側面についての責任を持つグループであるIESG(Internet Engineering Steering Group)に送られ審議されています。また、SIP(Session Initiation Protocol)やWeb等のアプリケーションのENUMサービスへの登録方法については、ラストコールがかかっており、2003年7月中旬のIETF開催の前には確定し、標準化プロセスに進む可能性があります。尚、セキュリティやプライバシー、登録手順(Provisioning)などについても、とりまとめたドキュメントが出ることになっていますが、2003年6月現在未了です。

世界的には、ENUMが実際に導入されることとなった際に迅速に地域に根付いた展開ができるようにと、国別でトライアルを進めるところが増えています。具体的には、トライアル用のドメイン空間を、Tier0のレジストリであるRIPE NCC(Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)に申請し、テスト環境を整えるということをいくつかの国や団体が行っています。

4.終わりに―ENUM導入に向けての今後の課題

電話が既存の電話からインターネットベースに移行していく中、IP電話だけの用途で、オペレータが登録するENUM(オペレータENUM)のみが使われるようになると、ENUMが本来持つ、ユーザがいろいろなアプリケーションを自由に登録できる(ユーザENUM)利点などはうまく生かされなくなくなります。しかし、ユーザENUMを実現するには、個人情報保護の観点や、電話番号の使い方・割り当て方の観点などから、ENUMのデータベースのあり方を慎重に議論する必要性があります。現在の段階では、世界の動向はユーザENUM寄りだといえるでしょう。しかし今後日本に根付いていくENUM、または本当に世界的に使われるようになるENUMが、オペレータENUMなのかユーザENUMなのか、残念ながら不透明です。大きな可能性を秘めた技術だけに、技術の仕様だけは確立しても、どのような形でどのレベルまで導入すれば国際的な整合性を取れるのかということになると、政策的な要素が多く作用してしまうのです。たとえばIP電話の実装の問題だけに限っても、キャリアやISPは、それぞれ自分の立場でグローバルなコミュニケーション構造の基礎を築こうとしているように、ビジネス戦略的な問題も影響してくるのです。

JPNICは、公益法人としての公平・中立の立場から、日本におけるENUMの発展がスムーズに進むよう、引き続き動向を見守りつつ、関係各所との調整を図りながら、ENUMの円滑な導入のため、貢献していきたいと考えています。

(JPNIC 企画課 根津智子)

参照URL

「ENUM研究グループ報告書(2003年5月発行)」
http://www.nic.ad.jp/ja/enum/report/enum-report2003.pdf
JPNIC Newsletter No.21「インターネット10分講座●ENUMとは」
http://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No21/080.html

※1 RFC2916:
http://www.ietf.org/rfc/rfc2916.txt?number=2916

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