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ニュースレターNo.32/2006年3月発行

巻頭言:インターネットのさざなみ

NPO日本ネットワークセキュリティ協会 主席研究員株式会社ディアイティ/安田直義

インターネットがもたらしたもの

インターネットは、当初の大方の予想や希望を遥かに超え、既に研究者の手を離れ自立発展的な展開を行うまでになってきています。社会基盤として認知され、市民生活の中に根ざしてきたということでもあります。

日本で最初の商用プロバイダが設立された13年前頃(1992年末)は、今日の隆盛は半分以上冗談として語られていた記憶があります。JPNICの前身のJNIC※1 が活動していたのもこの頃です。10年ほどの間にこれほど普及し社会への影響力を強めたものとしては、携帯電話と双璧を成すと言っても良いでしょう。当時は回線交換とネットワークの戦争などもホットな話題でしたが、結局統合されてしまいました。今後も通信と放送の融合など、必然の流れに沿った大きなうねりに呑み込まれ統合化と分化が進むのだろうと思います。これをユビキタスと呼ぶのかもしれません。

インターネットの利用者は、7000万人を越えた※2 そうです。日本の人口は約1億2776万人※3 だそうですから、大人から赤ちゃんまで含めて約55%の国民が何らかの形でインターネットを使っていることになります。携帯電話の契約数は約9000万件※4 だそうですが、携帯電話だけでインターネットを利用している人は13.5%と案外少なく、自宅や勤務先、学校等のパソコンと併用している場合が多いようです。これもブロードバンド回線が普及したことと関連がありそうです。

光と影の二面性

インターネットが犯罪などに使われたり、転落への道筋となっているのではないかという指摘がありますが、これは物事の一面でしかありません。確かにそのような事例も多いかもしれませんが、インターネットは今までできなかった個人と組織の圧倒的な格差を圧縮し、国境や地理的な格差もなくしてしまいました。少数派や日の目を見られなかった人たちもコミュニティを持てるようになったのです。この大衆が平等に議論に参加できるようになったことが、良くも悪くもインターネットがもたらした最大の成果ではないでしょうか。

輝く光が強ければ強いほど、遮るものの影の闇は深く濃くなります。この当然の原理がインターネットでも働いているのです。光だけを見てバラ色の世界を思い描くのも片手落ちですし、闇だけを見て恐れおののくのも芸がありません。全体を見て感じて自分の立ち位置を決めなければならないのだと思います。

脅威の本質

インターネットの脅威というと、今まではウイルスや不正アクセスなどの技術的なセキュリティ問題が中心でしたが、最近は人間の心理を突く架空請求やフィッシングなどの被害が注目されてきています。インターネットに限らず、今までも“オレオレ詐欺”や“振り込め詐欺”、リフォームに絡んだ“つぎつぎ詐欺”などが新聞テレビを賑わしています、街角で「英語をしゃべりたくありませんか?」「絵はお好きですか?」「快適にお休みになれていますか? 良い羽根布団がありますよ!」などという声かけに出会ったことがないでしょうか? 御自分の番が来た時、『これが噂に聞いていたあれかな?!』と思われなかったでしょうか。インターネットも同じように『あれ? おかしいかな?』と気が付くことが重要です。そのためには、社会の知恵としてさまざまな手口の知識を共有し、みんなが知っている状態になっていなければなりません。

これまでは、愉快犯や自己顕示欲の矛先として、不特定多数を狙うウイルスやワームの類が主流でしたが、すでに、金銭搾取を目的とした職業的詐欺集団がインターネットを利用して不特定多数の獲物を求めて仕事を始めています。インターネットにはまだうぶ初心で無知なユーザーが多く、手口もあまり知られていないので、仕事がはかどるのでしょう。しかも必要な投資はパソコンを用意しネットワークにつなぐだけです。

逆に、技術的な攻撃は、相手を特定して攻めてくるようになるでしょう。いわゆるサイバーテロの類です。足跡を残さずプロの仕事を行うわけです。標的になるところは限られますが、可能性がある場合はそれなりの準備が必要です。一方で、情報漏洩を起こした事件件数を原因別に見ると、盗難、紛失・置き忘れが57.7%であり、不正アクセス、ウイルス、バグ・セキュリティホールは4.4%です。また、漏洩経路で見ると45.9%が紙媒体です。個人情報の漏洩人数で見ると、不正持ち出し、内部犯罪、盗難で78.2%になります※5 。ネットワーク特有の手口よりは、案外レトロで物理的な原因が多いようです。いずれにしても、何をどのように防ぐかのリスク管理が重要なことには代わりがありません。

これからのインターネット

インターネットのプロトコルであるTCP/IPv4が1973年に米国国防総省で開発が開始されて以来30年以上の年月がたっています。その間、色々な拡張や修正、そしてIPv6の制定などがありました。物理層の回線部分は、10Gbps以上のEthernetに進化しています。「次にできたらいいこと」を考えると、アプリケーション層のプロトコルに思い当たります。例えばSMTPの電子メールでは、発信してしまった後、相手が読んでいるか否かに関わらずキャンセルはできませんが、普通の郵便ではどこの国でも何らかの取り戻しや変更ができています。インターネットが社会基盤になるに従い、このような社会的な要求に基づく「機能」も実装したくなるのではないかと思います。できるできない、できる条件、実現するためのコストなどを広く議論し検討しても良いのではないかと思うのです。JPNICが何らかのまとめ役やIETF等へ議論を持ち込む窓口として機能してくれると、フレンドリーな組織になるのではないかとも考えます。

『技術だけでは問題は解決しない。しかし技術の裏付けがなければ施策もできない』という言葉をかみ締めていきたいと考えます。インターネットの萌芽に出会い、若葉の頃からの成長を見届け、立派な大樹に育ち周りにさざなみを送り始めた今、これからどのように空を飛んでゆくか、大変に楽しみではあります。ひとり立ちした子供を見るような感じかもしれません。これからは、『自分の人生を自分で決めて歩んでいくのだよ』と。


※1 JPNICの歩み
http://www.nic.ad.jp/ja/profile/history.html
※2 財団法人インターネット協会監修「インターネット白書2005」2005年6月21日発行インプレス発行
※3 総務省統計局「平成17年国勢調査全国・都道府県・市区町村別人口(要計表による人口)」全国の人口
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/youkei/01.htm
※4 社団法人電気通信事業者協会事業者別契約数(平成17年12月末現在)
http://www.tca.or.jp/japan/database/daisu/yymm/0512matu.html
※5 NPO日本ネットワークセキュリティ協会「2004年度情報セキュリティインシデントに関する調査報告書」v1.1.
http://www.jnsa.org/active/2004/active2004_1a.html

写真:安田直義 プロフィール●やすだなおよし
1975年、日本電気に入社し、 汎用機(ACOS-6)上でのB言語による開発やBSD Unixでの開発・教育等にかかわる。 1989年、日外アソシエーツに移り技術開発室を創設し、Unix、 TeX等で版下編集出力システムを開発・実用化する。 1996年からはディアイティでインターネット事業に参画。 現在、NPO日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)主席研究員。 その他、委員会や執筆記事など多数。

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