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ニュースレターNo.54/2013年7月発行

アドレスポリシーに関する動向を中心に

関連記事「Opinion Collection Meeting about Proposal in APNIC 35 Hosted by Policy-WG報告

今回のAPNIC 35カンファレンスにおけるアドレス等のポリシー関連動向について、アドレスポリシーSIGでの発表内容を中心にお届けします。

SIGについて

特定の話題について議論を行うために、APNICではSIG (Special Interest Group)という仕組みが設けられています。

現在、IPアドレスやAS番号のポリシーに関連する話題について議論を行うアドレスポリシーSIGと、JPNICのような国別インターネットレジストリ(NIR)に関連する話題について議論を行うNIR SIGの二つが設けられています。メーリングリスト(ML)上での議論を中心として、年に2回開催されるAPNICカンファレンスでは顔を合わせての議論を行います。最近では、ストリーミングによる議論の中継や、発言をリアルタイムに画面やスクリーン上に映し出すトランスクリプト、チャットによるコメント受け付けなど、会場以外からミーティングに参加するための手段も多く設けられています。

IPアドレスポリシー提案の結果について

アドレスポリシーSIGでは2点の提案について議論が行われました。アドレスポリシーSIG開催前のMLや会場での議論の結果、1点はMLでの継続議論、もう1点は棄却となり、コンセンサスに至った提案はありませんでした。

アドレスポリシーSIGでの提案の内容と結果をご紹介します。

(1)「Distribution of returned IPv4 address(Modification of prop-088)」(提案番号:prop-105)

提案者 藤崎智宏氏(JP IPv4 ADDRESS ALLOCATION DISCUSSION TEAM)
概要 APNICにおける最後の/8ブロックである103/8からの分配(1組織当たり最大/22)に加えて、IANAからの再割り振りやAPNIC会員からの返却により分配可能となったIPv4アドレスを、1組織当たり最大/22まで分配する。
結果 アドレスポリシーSIG MLでの継続議論

提案者から、第22回JPNICオープンポリシーミーティングでの議論をきっかけとして結成された「JP IPv4 ADDRESS ALLOCATION DISCUSSION TEAM」が実施した、日本国内およびAPNIC地域を対象としたアンケート結果を紹介し、提案の背景を会場の参加者と共有しながら発表が進みました。アンケート結果の解説は割愛しますが、アンケートに回答した150組織の約7割が、APNICにおける最後の/8ブロックである103/8からの分配以外にも、新たなIPv4アドレスの分配を希望していることが明らかになりました。APNIC/JPNICにおけるIPv4アドレス在庫が枯渇して約2年が経過する現在においてもなお、IPv4アドレスの需要は残っていることを感じました。

議論では、APNICの分配可能な在庫を有効活用して、APNIC会員に再配分することに反対する意見は表明されませんでした。その一方で、分配サイズおよび分配方法について多くの時間が割かれました。主な意見は次のようなものでした。

  • IANAからの再割り振りやAPNIC会員からの返却により/10(約400万アドレス)程度のIPv4アドレスが分配可能であることが明らかになっているが、現在のAPNIC会員の増加傾向から考えた場合には、すべての組織に/22の分配を行うことは難しいのではないか
  • 上記のIPv4アドレス以外にも、新たなIANAからの再割り振りやAPNIC会員からの返却により分配可能アドレスが発生した場合、再度分配を受けることができるのかどうか

議論の結果、今後も継続してアドレスポリシーSIG ML上での議論と検討を行うことになりました。

写真:藤崎氏
●提案内容を説明する藤崎氏

(2)「Restricting excessive IPv4 address transfers under the final /8 block」(提案番号:prop-106)

提案者 白畑真氏、藤崎智宏氏
概要 APNICにおける最後の/8ブロックである103/8から分配されたIPv4アドレスについて、最後の/8ブロックの分配に対する考え方と一致しない移転であることが確認された場合、APNICまたはNIRはその移転承諾を保障しない場合があることを運用ガイドライン文書に明記する。
結果 棄却

APNIC 35カンファレンス開催前のアドレスポリシーSIG MLでは、APNICでの移転履歴をもとに提案者がまとめたAPNICにおける最後の/8ブロックから分配されたアドレスに関する移転状況の紹介や、現在のIPv4 アドレス移転に関するポリシーの考え方に関する再確認など、活発な議論が続きました。

議論の過程において、APNICにおける最後の/8ブロックからの分配アドレスを移転した場合の移転禁止やデポジットの徴収を「ポリシー文書に明記する」、という当初の提案内容から、「運用ガイドライン文書に明記する」という内容に変更することとなりました。

アドレスポリシーSIG当日の議論では、変更後のポリシー提案の内容に基づき議論が行われ、

  • 申請処理を行うAPNIC担当者が正しく判断することが難しいのではないか
  • 提案者が懸念しており現在起きている問題への対応が必要かどうか

についてが争点となりました。議論の結果、今後も状況の把握が必要なことは確認されましたが、提案はコンセンサスに至らず、棄却となりました。

これら2点の提案に関して、日本ではポリシーワーキンググループが2013年2月7日に「Opinion Collection Meeting about Proposal in APNIC 35 Hostedby Policy-WG」という意見収集のイベントを開催し、この場で集まったご意見をアドレスポリシーSIGのMLに報告しました。この意見収集のイベントの模様や寄せられたご意見などについては、「Opinion Collection Meeting about Proposal in APNIC35 Hosted by Policy-WG報告」をご覧ください。

その他のポリシー関連の動向について

アドレスポリシーSIGでは、提案に対する議論以外にもアドレスポリシーの話題について情報提供が行われることがあります。

実際に、APNICでは、管理する資源(IPv4アドレス、IPv6アドレス、AS番号)別に資源の取り扱いの方針をまとめたポリシー文書を制定していますが、今回これらのポリシー文書の再構成に関する検討内容がAPNIC事務局から紹介されました。

また、APNICが制定するポリシー策定プロセス、他の文書および実際の運用との相違点が提示され、アドレスポリシーSIG参加者から広く意見を収集するための発表も行われました。

アドレスポリシーSIGではこのほかにも、興味深い発表が行われています。発表内容や議論の内容は、アドレスポリシーSIGのページ※1から確認することが可能です。興味を持たれた方はぜひご覧ください。

APNIC Member Meetingについて

APNIC 35カンファレンスの最終日にはAPNIC Member Meeting (AMM)が開催されました。AMMでは主にAPNICの活動内容に関する報告、APNIC 35カンファレンス期間中に開催されたSIGや各種セッションの報告、次回のAPNIC 36カンファレンスの紹介が行われました。

これらの報告と併せて、APNIC理事会メンバーを選出するための選挙が行われました。候補者のプロフィールは事前にAPNICのWebサイト※2で公開され、その内容を参考にして、APNIC会員の多くは前日までに会員向けポータルサイトからオンライン投票を済ませます。AMM当日は、候補者自身で抱負を述べる機会が設けられますので、その内容を確認して投票用紙での投票を行う組織もあるようです。

今回は5名の候補者の中から、次の4名がAPNIC理事会メンバー(EC)として選出されました。この4名に加えて、今回の改選対象には含まれない3名、およびAPNIC事務局長Paul Wilson氏の合計8名で、新APNIC理事会の体制がスタートすることになります。

  • Gaurab Raj Upadhaya氏(Limelight Networks)
  • Wei Zhao氏(CNNIC)
  • Kenny Huang氏(TWNIC)
  • James Spenceley氏(Vocus Communications Limited)
写真:Kenny Huang 氏
●AMM にてEC としての抱負を述べるKenny Huang 氏

まとめ

APNICにおけるIPv4アドレスの在庫枯渇から約2年が経過し、IPv4アドレスの分配に関わる提案は少なくなりました。アドレスポリシーSIGでの議論は、どのようにAPNICの在庫を効率よく分配するか、という点に集中してきていると感じます。返却されたアドレス等を含めた、IPv4アドレスの分配に関わる話題は継続して議論が行われる可能性が高く、今後の動向が注目されます。

また、ポリシー策定プロセスに関する情報提供や議論に多くの時間が割かれている点が印象的でした。APNICカンファレンスでの議論は、APNICと同様のポリシー策定プロセスを持つ日本のコミュニティにおいても参考になると考えられますので、今後も情報収集を続けていきたいと考えています。

(JPNIC IP事業部 川端宏生)


※1 Policy - APNIC35
http://conference.apnic.net/35/policy/
※2 2013 APNIC EC Elections
http://conference.apnic.net/35/elections/

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