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ニュースレターNo.58/2014年11月発行

IGFイスタンブール会合(IGF 2014)報告

IGF 2014の概要

IGF 2014の会場は、Lutfi Kirdar International Conference and Exhibition Center(ICEC)というところでした。イスタンブール市内で、アジアとヨーロッパを隔てるボスポラス海峡のヨーロッパ側にある丘の上に位置し、会場入り口からはボスポラス海峡の向こうにアジア側を見渡すことができる、眺めの良い場所でした。既にWebで入手できる速報版の会議報告書※1によると、会場での参加者は2,374名とのことです。世界各地からさまざまな関係者が集まるため、会場の中は、服装や肌の色がさまざまで、まさに、世界の多様性を体現した場だという印象を受けました。

今年は、「Connecting Continents for Enhanced Multistakeholder Internet Governance(マルチステークホルダーによる協力の拡張に向けて大陸をつなげる)」が、メインテーマとして選ばれました。これには、インターネットガバナンスについて、議論が行われているさまざまな場をつなげていく、という意味合いが込められています。

メインホールの他に、10を数えるワークショップルームが設定され、同時並行で会議が進み、参加者は自身の関心に合わせて、参加するセッションを選びました。メインホールでは、前述のMAGが設定したサブテーマに沿ったメインセッションが行われました。メインセッションは、テーマに関して見識があるパネリストがホール前方にコの字に配置された席に着席し、後方を埋め尽くす参加者とパネリスト席の間にはセッションモデレータが立ち、会場からの意見も取り入れながら進んでいきました。今年のサブテーマは、以下の八つです。

  • アクセスライン政策
  • コンテンツの制作・配布・利用
  • 成長と発展のためのインターネット
  • IGFとインターネットエコシステムの未来
  • デジタルコミュニケーションにおける信頼の強化
  • インターネットと人権
  • 重要インターネット資源
  • 最新課題

また、これ以外に、インターネットの諸課題への対処に関する実践例をドキュメントに残すことを目的とする前述のBPF、諸団体の活動をIGFの場でオープンに話し合うOpen Forumなどが開催されました。また、開会式の前日となる月曜日には、Day 0として、関連イベントが催されました。

IGF 2014の特徴

IGF 2014の特徴は、例年よりもアウトプットを重視している点です。

IGFは、対話を重視し、交渉の場としないことから決議を採らないとしていますが、これに対して、「IGFは言いっ放しで終わっている」、「課題への具体的な成果につながらない」、といった批判を一部から受けてきました。

今年2014年は、世界情報社会サミット(WSIS)の開催から10年を経て、その成果を振り返る「WSIS+10」※2や、インターネットガバナンスにおける原則を文書化したNETmundial※3が開催されたこともあり、IGFに対して、より具体的なアウトプットへの期待が、一部の関係者から寄せられています。IGFのプログラム検討を行っているMAGにおいても、IGFの成果をもっと具体的に見せる改善の必要性が、多くのメンバーから表明されています。

このような背景から、今年は、対話を重視するIGFの特性は維持しながらも、議論の内容を具体的に提示し、政府間組織(IGO)、非政府間国際機構(INGO)、I*(アイスター)諸団体※4、企業や市民社会を代表する団体など、各関係者の立場から活動する各種機関に対して、文書として配布する取り組みが、いくつか行われます。

写真:プレナリホール。トルコの大臣が登壇中
● プレナリホール。トルコの大臣が登壇中

NETmundialの振り返り

NETmundialは、2014年4月にブラジル・サンパウロで開催されたイベントで、正式名称は「今後のインターネットガバナンスに関するグローバルマルチステークホルダー会合(Global Multistakeholder Meeting on the Future of Internet Governance)」です。インターネットガバナンスの原則とロードマップに関する成果文書を作成することを目的に開催されました。詳しくはJPNIC News & Views vol.1196の、特集「NETmundial報告」をご覧ください。

Day 0では、「NETmundial: Looking Back, Learning Lessons and Mapping the Road Ahead」と題された振り返りイベントが終日開催され、いろいろな角度からNETmundialを振り返り、今後のインターネットガバナンスにどう活かすのかに関して話し合われました※5

NETmundialは、多方面からの参照に堪えうる成果文書の内容とともに、その取りまとめのプロセスが、マルチステークホルダーによる合意形成の好例として、各所で高く評価されています。このセッションでは、肯定的な部分に対しても更なる分析がなされ、ネットワーク中立性のように意見が対立する課題の扱い方や、成果文書作成プロセスにおける問題点など、否定的な部分にも議論が及び、4ヶ月前となる成果に対して冷静な振り返りがなされたのが印象的でした。

Best Practices Forum(BPF)

一方、IGFは、チュニスアジェンダ※6において「拘束力を持たない対話の場」と定められており、前回会合までは、議長によるミーティングレポートを除いて、合意文書の類いが作成されたことはありませんでした。この点に関して、課題解決への寄与が少ないのではないかとして、何らかの対処を求める声もありました。このような声に対応したのが前述の「IGFの改善に向けた取り組み」で紹介したBPFです。

BPFの多くは、スパム対策やCERT設立など、極めて実践的な内容でしたが、「マルチステークホルダーによる意義のある参加メカニズムの構築」というテーマに関しては、実践というより体制論の意味合いが強い印象でした。具体的な実践例にとどまらない、考え方や方針を含むものが文書として残ることになると、今までのIGFの「対話の場」としての性質を変えていくことにもなりかねず、今後の動向に注意が必要です。

その他

IANA機能の監督権限移管、ICANNの説明責任強化など、基盤運営の領域においても、体制論に関する検討が進みつつあり、これらに関するセッションも持たれました。体制の検討においては、「マルチステークホルダーモデルの固持」「対等な立場での参加」といった原則論が叫ばれる一方で、議論のための議論に陥らず、課題に有効に対応していく実践性も重要で、しばしば原則論と実践性は対立します。今回のIGFでは、このような考え方が対立する議論においても、相手の考え方を理解し、その上で自分の考え方を上手に表現して主張しているな、と感じることが度々ありました。今回が9回目のIGFとなりますが、年を経て、議論の仕方が進歩している印象を受けます。

2015年の年限延長に向けて

IGFは、2006年に5年の活動年限によって始められ、現在は2011年に延長された年限の4年目にあたり、来年、再び年限延長を検討する段階にあります。IGFが対話の場に徹するあまり、成果が少ないのではという懸念も聞かれる一方で、参加している政府からはIGFの年限延長を支持する発言が目立ちました。

最後に

IGFは、各国政府を含むあらゆるインターネットの関係者が集まる場所で、その動きは、ITU(国際電気通信連合)をはじめとする国連の会議体にも影響を及ぼし得ます。JPNICでは、引き続き奥谷がMAGメンバーとしてこれに関わることをはじめとして、情報収集と適切な対応を進めて参ります。これらに関しては、Webやメールマガジンなどで適宜お知らせいたします。

また、国内において情報交換・議論を行う場として、「日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)」が発足し、定期的に会合を開催しています。各会合の資料およびレポートはWebで公開しています。参加者間で情報共有を行うメーリングリストも設置されていますので、ぜひご登録ください。このIGCJの会合でも、IGFに関する情報は適宜ご紹介してまいります。

日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)
https://www.nic.ad.jp/ja/materials/igconf/

日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)のメーリングリスト
https://www.nic.ad.jp/ja/governance/igconf/mailing-list.html

写真:メインホールの様子
● メインホールの様子

(JPNIC インターネット推進部 前村昌紀)


※1 IGF 2014 Chair's Summary
http://www.intgovforum.org/cms/documents/igf-meeting/igf-2014-istanbul/246-chairs-summary-igf-2014/file
※2 WSIS+10 High-Level Event Outcomes
http://www.itu.int/wsis/review/2014.html
※3 NETmundial(ネットムンディアル)とは
https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/NETmundial.html
※4 I*(アイスター)
インターネットの技術基盤の調整に責任を持つ諸団体です。
※5 IGF 2014 Pre-Event: NETmundial: Looking Back, Learning Lessons and Mapping the Road Ahead(including a book launch - Beyond NETmundial: The Roadmap for Institutional Improvements to the Global Internet Governance Ecosystem)
http://www.intgovforum.org/cms/igf-2014/pre-events/1879-igf-2014-pre-event-event-on-netmundial-book-release-beyond-netmundial-the-roadmap-for-institutional-improvements-to-the-global-internet
※6 チュニスアジェンダ
正式名称は「情報社会に関するチュニスアジェンダ(Tunis Agenda for the Information Society)」です。 国連のサミットとして2005年にチュニジア・チュニスでITU(国際電気通信連合)が開催した、WSIS(世界情報社会サミット)チュニス会合で採択された文書です。

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