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ニュースレターNo.60/2015年7月発行

APRICOT 2015における APNIC 39カンファレンス報告 アドレスポリシー関連報告

APRICOT-APAN 2015では、さまざまなプログラムがあります。プログラムの一つであるポリシーSIGでは、丸一日かけてアジア太平洋地域のIPアドレス・AS番号の、分配ポリシーについての議論が行われました。本稿では、ポリシーSIGでのアドレスポリシーに関する提案内容と、各提案での議論の様子を中心にご紹介します。

SIGについて

特定の話題について議論を行うために、APNICではSIG(Special Interest Group)という仕組みが設けられています。ポリシーSIGのほかに、JPNICのような国別インターネットレジストリ(NIR)に関連する話題について議論を行うNIR SIGの、二つのSIGがこれまで設けられていました。今回新たに、公共政策やインターネットガバナンスなど、APNICコミュニティにとって関連のある事項をさまざまな関係者で議論するための、Cooperation SIGが設けられることになりました。

SIGでは、メーリングリスト(ML)上での議論のほか、年に2回開催されるAPNICカンファレンスでは顔を合わせての議論を行います。最近では、ストリーミング中継や、発言をリアルタイムに画面やスクリーン上に映し出すトランスクリプト、チャットによるコメント受け付けなど、会場以外からミーティングに参加するための手段も多く設けられています。

ポリシー提案について

今回は4点のポリシー提案がありましたが、議論が行われた結果、コンセンサスとなった提案はありませんでした。3点の提案が継続議論となり、残る1点の提案は棄却となりました。それぞれの提案の内容と、結果をご紹介します。

(1) 'legacy IPv6 address blocks'から割り振りを受けている組織へのIPv6アドレス割り振りサイズ拡張(提案番号:prop-112)
提案者 藤崎智宏氏
概要 該当する範囲から割り振りを受けている組織に対して、追加割り振りのための利用率を満たしていない場合にも、希望があれば将来の需要予測の提出なしに、最大で/29となるよう割り振りを行う。
提案の詳細 http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-112
結果 棄却

現在、APNIC地域におけるIPv6アドレスの割り振りは、2400::/12の範囲から行われています。2400::/12の範囲から割り振りを行う際には、複数回のIPv6アドレス割り振りを受けた場合にも、連続した範囲になるよう考慮された管理が行われています。一方、2400::/12の範囲から割り振りを開始する前に、2400::/12とは異なる範囲からIPv6アドレスの割り振りを受けた組織に対しては、連続した/29の範囲となるようアドレスは予約され、他の組織に割り振りを行わないよう管理されています。

提案者からは、他の組織に割り振りが行われず、利用されないままとなっているこのアドレスブロックの、有効利用を目的とした提案である旨が紹介されました。MLや当日の議論では、効率的な利用に賛成するコメントが出される一方で、アドレスの割り振りは実際の需要に基づき行われるべきだ、とのコメントも出されていました。

挙手およびオンラインで本提案に対する賛否を確認した結果、本提案はコンセンサスには至りませんでした。この提案は、APNIC 37カンファレンスより3回にわたり議論が行われましたが、いずれにおいてもコンセンサスに至らなかったことから、ポリシーSIGチェアより、提案を棄却とすることが発表されました。

(2) 小規模ネットワークへのIPv4 PIアドレス割り当て基準変更(提案番号:prop-113)
提案者 Aftab Siddiqui氏、Skeeve Stevens氏
概要 「プロバイダ集成可能(PA; Provider Aggregatable)アドレスで既にマルチホームしている」または「1ヶ月以内にマルチホームする予定がある」というIPv4プロバイダ非依存(PI; Provider Independent)アドレスアドレスの割り当て基準を、「PAアドレスで既にマルチホームしている」または「PAアドレスで相互接続している」または「3ヶ月以内にアドレスを経路広告する計画がある」に変更する。
提案の詳細 http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-113
結果 ポリシーSIG MLでの継続議論

IPv4アドレスは、APNICやJPNICなどのレジストリからプロバイダ等に分配され、プロバイダはエンドユーザーに分配するという、階層構造により管理が行われています。ただし、特定の条件を満たす小規模ネットワークや、インターネットエクスチェンジポイントなど一部のケースにおいては、レジストリからエンドユーザーに対して、直接分配が行われています。

この提案は、特定の条件を満たす小規模ネットワークに割り当てる目的で、レジストリからエンドユーザーに対して直接分配を行う際の、基準を変更するものです。インターネットの普及が目覚ましい地域では、レジストリからプロバイダへの割り振りアドレスに限りがあるため、エンドユーザーが希望する数のIPアドレスの分配を受けることも難しい、といったケースもあるようです。現在の基準が緩和されることで、IPv4アドレスの分配を受ける機会の増加につながるとの意見が表明されていました。また、提案には、「3ヶ月以内に割り当てアドレスの25%、1年後までには割り当てアドレスの50%を利用する計画があること」という条件も、併せて撤廃することが含められていましたが、割り当てアドレスの利用予定を確認する条件は必要であるとの意見が、複数表明されていました。

会場から出された意見を踏まえた改定案が、ポリシーSIGの最中にMLに投稿され、それをもとに議論が行われるなど、状況は刻々と変化し、目を離せない状況となっていました。一通りの議論が終了した後に、本提案に対する賛否を確認しましたが、本提案はコンセンサスには至らず、MLで継続議論を行うこととなりました。MLでは、ポリシーSIGの終了後も議論が続きましたが、改定案に賛同する意見が多く寄せられています。

(3) AS番号割り当ての基準変更(提案番号:prop-114)
提案者 Aftab Siddiqui氏、Skeeve Stevens氏
概要 「マルチホームする」かつ「上流プロバイダの外部経路制御ポリシーとは異なり、明確に定義された単一のものである」というAS番号割り当て基準を、「6ヶ月以内にAS番号を利用する予定がある」に変更する。
提案の詳細 http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-114
結果 ポリシーSIG MLでの継続議論

AS番号は、上流接続先のルーティングポリシーに依存せずに、自律ネットワークと定義されるネットワークに対して割り当てられます。提案者からは、上流接続先より提供されるサービスの選択肢が限られる地域では、AS番号の割り当てを受けて、上流接続先に依存しない状況にしておきたいと考えるケースがあると紹介されていました。そのようなケースでは、AS番号の割り当て要件を満たすよう、虚偽の申請を行っているケースもあるため、実態に合うよう割り当て基準を変更したい、という背景があったようです。

提案がMLで紹介された当初は、現行ポリシーの解釈や、具体的な例を挙げた上で、現在有効なポリシーを変更せずともAS番号の割り当てを受けられるケースかどうかという議論が、多くを占めていました。APNIC審議担当の責任者も参加して、APNICでの判断例やポリシーの解釈について、さまざまな議論が行われました。

議論の結果、提案者からは、マルチホームであること(マルチホームする計画であること)は基準から削除せず、マルチホーム実施時期は定めない、とする基準を盛り込んだ改定案が発表されました。しかしながら、本提案への賛否の確認をしたところ、本提案は提案番号:prop-113と同様にコンセンサスには至らず、MLで継続議論を行うこととなりました。その後のMLの議論では、多くが賛成を表明する意見となっています。

(4) WHOISでのフィルタリング情報提供(提案番号:prop-115)
提案者 廣海緑里氏、藤崎智宏氏
概要 IPv4では「ポート番号」を、IPv6では「割り当てアドレスサイズ」の情報をWHOISに追加し、これらの情報でも登録情報を検索できるようにする。
提案の詳細 http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-115
結果 ポリシーSIG MLでの継続議論

IPv4アドレスの通常在庫枯渇以降、グローバルIPアドレスとポート番号との組み合わせを利用して、複数の機器やユーザーがグローバルIPアドレスを共有する技術を採用する組織が多くなってきています。また、IPv6による不正行為なども多くなってきているようです。

不正利用の際には、連絡先の確認やフィルタリングを行うための情報収集手段として、WHOISが利用されています。対象を限定した形で的確に対応を行えるようにするためには、現在のWHOIS登録情報にさらなる情報の追加が必要であると、提案者は考えているようでした。MLや当日の議論では、現在の状況や提案者の問題意識については理解されていましたが、WHOISで提案者が考える情報提供を行うことについて、疑問や懸念を示す意見が表明されていました。

他の提案と同様に、本提案でも賛否を確認しましたが、本提案はコンセンサスには至りませんでした。しかしながら、ポリシーSIGチェアからは、この提案はWHOISデータベースに関する問題であり、実装の影響などを慎重に考慮する必要があるとの判断が示されました。その結果、問題意識を深く掘り下げて提案者だけではなく、関係する人とともに議論を進めていく必要があるため、MLで継続して議論することが発表されました。

APNIC Annual General Meetingについて

APNIC 39カンファレンスの最終日には、APNIC Annual General Meeting(AGM)が開催されました。これまでは、APNIC Member Meeting(AMM)と呼ばれていましたが、APNICの定款に合わせ、AGMに変更され、APNICの活動内容に関する報告、APNIC 39カンファレンス期間中に開催されたSIGや各種セッションの報告、次回のAPNIC 40カンファレンスの紹介が行われました。

その他にも、APNIC理事会メンバー(EC)を選出するための選挙が行われました。候補者のプロフィールは、APNICのWebサイトで事前に公開されますので、会員の多くはその内容を参考にして、前日までに専用ポータルサイトからオンライン投票を済ませます。その一方で、AGM当日は候補者自身が抱負を述べる機会が設けられますので、その内容を確認して、投票用紙での投票を行う会員も多く見受けられました。

ECの任期は2年となっており、1年ごとに半数が改選となります。今回の選挙では6名の候補者の中から、4名が選出されました。この4名に加えて、今回の改選対象には含まれない3名、およびAPNIC事務局長Paul Wilson氏の8名で、新APNIC理事会が次の通りスタートしています(括弧内は現在の所属および出身国・地域)。2014年3月より議長を務めていたJPNICの前村が、今回の新体制においても引き続き、議長を務めることになりました。

※ ○は今回の選挙で再任されたEC、☆は新任のEC

前村昌紀(JPNIC:日本)
Ma Yan氏(CERNET:中国)
Che-Hoo Cheng氏(The Chinese University of Hong Kong:香港)
Gaurab Raj Upadhaya氏(Limelight Networks:ネパール)
James Spenceley氏(Vocus Communications Limited:オーストラリア)
Kenny Huang氏(TWNIC:台湾)
Jessica Shen氏(CNNIC:中国)
Paul Wilson氏(APNIC事務局長:オーストラリア)

最後に

ML上で今回のポリシー提案が紹介された直後から、メールが多く飛び交い、関心の高さがうかがえました。また、当日には、マイクの前に質問者が途切れることなく並ぶだけではなく、関係者が休憩時間にも会場内外で熱心に議論を行うなど、時間をかけてじっくりと議論を行うスタイルになったことが特徴的でした。APNIC管轄地域内であっても、地域によって事情が大きく異なっています。各地域からの参加者それぞれが持つ、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに対する考え方を議論の中ですり合わせていくことが、今後はより重要になってきそうです。

今回出された提案のうち、提案番号:prop-113とprop-114は、MLでの継続議論という結果になりましたが、議論の動向からは、今後のカンファレンスで開催されるポリシーSIGでコンセンサスとなる可能性が高い、と考えています。コンセンサスとなった提案は、その後のプロセスを経て、APNICのポリシーに反映されます。APNICポリシーが変更された場合には、原則としてJPNICポリシーにも反映されることになります。ポリシーSIGでの議論の動向はJPNICでも注視しており、今後も情報提供を行っていく予定です。

写真: ポリシーSIGの様子
● ポリシーSIGの様子

(JPNIC IP事業部 川端宏生)

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