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ニュースレターNo.62/2016年3月発行

APNIC 40カンファレンス報告 全体概要およびアドレスポリシー関連報告

アジア太平洋地域の地域インターネットレジストリ(RIR)であるAPNICのカンファレンスが、 2015年9月3日(木)~10日(木)にかけて、 インドネシアのジャカルタで開催されました。 本稿では、APNIC 40カンファレンスの模様をレポートします。

APNIC 40カンファレンスの概要

主催者からの報告によると、 49の国や地域から612名の参加登録があり、 521名が実際に会場に足を運んだそうです。 そのうちインドネシアからの登録者は360名程度とAPNICミーティングへ高い関心を寄せていたことがわかります。 APNICカンファレンスは通常、春にAPRICOTと共催で1回、 秋に単独で1回開催されますが、 今回は秋のAPNICカンファレンスとしては、 最大規模となったようです。 また、 カンファレンスではフェローシッププログラムが用意されており、 アジア各地から毎回30名程度が利用するそうです。 今回は、27名がこのプログラムを利用して参加していました。 また、このプログラムとは別に、 APRICOT-APAN 2015日本実行委員会が用意した「APNIC 40カンファレンス参加支援プログラム」を利用して、 日本から4名が参加していました。 いくつかのセッションでは最前列に陣取って、 内容を聞き漏らすまいと発表を真剣に聞く姿が印象的でした。

これまでと同様に、会期前半は「ワークショップ」が開催されました。 6日(日)からは「チュートリアル」「APOPS (Asia Pacific Network Operators Forum)」「SIG (Special Interest Groups)」「BoF (Birds of a Feather)」「AMM (APNIC Member Meeting; APNIC総会)」の会議・セッションが開催されました。 これら以外にも、 APNICとの関連の深い、APIX (Asia Pacific Internet Exchange Association)やAPTLD (Asia Pacific Top Level Domain Association)が主催する会議の時間が設けられていました。

当日の資料、ビデオ、発言録は、 次のAPNICカンファレンスのページに掲載されています。 今回参加できなかった方や現地での発言を聞き逃した方も、 これらの資料を一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

program - APNIC40
http://conference.apnic.net/40/program

今回はこれらのセッションの中から、 ポリシー提案の結果を中心にご紹介します。

ポリシー提案の結果について

今回は、3点のポリシー提案について議論が行われました。 いずれも、継続議論となっている提案です。 議論の結果、2点の提案がコンセンサスとなり、 1点の提案が継続議論となりました。 以降、提案の内容と結果をご紹介します。 提案背景や、 前回のAPNIC 39カンファレンスではどのような議論が行われたかについては、 前々号のニュースレターNo.60でご紹介していますので、 次のURLも併せてご覧ください。

APRICOT 2015におけるAPNIC 39カンファレンス報告
https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No60/0610.html
(1) 小規模ネットワークへのIPv4 PIアドレス割り当て基準変更
(提案番号:prop-113)
提案者 Aftab Siddiqui氏、Skeeve Stevens氏
概要 IPv4プロバイダ非依存(PI; Provider Independent)アドレスの割り当て基準を以下の通り変更する。ただし、「3ヶ月以内に申請サイズの25%、1年以内に50%を利用する計画を示す」という点については変更しない。
変更前 プロバイダ集成可能(PA; Provider Aggregatable)アドレスで既にマルチホームしている、または1ヶ月以内にマルチホームする予定がある。
変更後 PAアドレスで既にマルチホームしている、または/24以上のPAアドレスの割り当てを受けており、マルチホームする意志がある、または6ヶ月以内にマルチホームでアドレスを経路広告する意志がある。
提案の詳細 http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-113
結果 コンセンサス

前回のカンファレンスでは、 会場から出された意見を踏まえた改定案が議論の最中に投稿されるなど、 活発な議論が繰り広げられました。 ポリシー変更の必要性や変更内容の詳細について、 前回の議論において一通り確認されている状況にあることから、 今回は、改定案に賛同する意見がいくつか表明されたほかは、 前回のように時間を超過するほどの活発な議論は行われませんでした。

インドやパキスタンといった南アジア地域からの参加者の多くが、 改定案に賛同する意見を表明していました。 経済発展目覚ましいこれらの地域の企業にとって、 IPv4アドレスの分配を受けられる可能性が増えることで、 ビジネスの展開を加速させることができるのではないか、 と考えているようでした。

(2) AS番号割り当ての基準変更(提案番号:prop-114)
提案者 Aftab Siddiqui氏、Skeeve Stevens氏
概要 AS番号の割り当て基準を以下の通り変更する。
変更前 マルチホームする、かつAS番号の割り当て予定のネットワークが、上流プロバイダの外部経路制御ポリシーとは異なり、明確に定義された単一のものである。
変更後 既にマルチホームしている、またはAPNICからPIアドレスの割り当てを受けており、将来マルチホームする意志がある。
提案の詳細 http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-114
結果 コンセンサス

提案の議論に先立って、APNICのGeoff Huston氏からは、 APNICで管理する「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」や「IANAからAPNICに再割り振りされたIPv4アドレス在庫」に関する発表が行われていました。

「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」からの割り振りアドレスでは、 割り振りが行われているにもかかわらず経路情報が広告されていないIPv4アドレスが、 25%程度あることが報告されていました。 提案者はこの報告内容を取り上げて、 AS番号がより容易に割り当てられるようになることで、 こういったIPv4アドレスの経路情報広告促進につながるのではないかというコメントを出していました。

こちらの提案についても、提案番号:prop-113と同様に、 一通りの議論と確認が行われている状況にありましたので、 改定案に賛同する意見がいくつか表明されるにとどまりました。 北米地域を管轄するARINや南米地域を管轄するLACNICにおいても、 今回の提案と同様にAS番号の割り当て基準が変更されています。 また、ヨーロッパ地域を管轄するRIPE NCCにおいても議論中の状況にありますので、 今後の動向を追っておく必要がありそうです。

(3) WHOISでのフィルタリング情報提供(提案番号:prop-115)
提案者 廣海緑里氏、藤崎智宏氏
概要 IPv4では「ポート番号」を、IPv6では「割り当てアドレスサイズ」の情報をWHOISに追加し、これらの情報でも登録情報を検索できるようにする。
提案の詳細 http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-115
結果 ポリシーSIG MLでの継続議論

前回の議論と同様に、 WHOISを利用して情報提供を行うことについて、 疑問や懸念を示す意見が表明されていました。 また、韓国の国別インターネットレジストリ(NIR)であるKRNICでは、 いくつかの大手ISP事業者の担当者に対して、 提案内容を実装した場合に考えられる影響などについて、 事前に意見照会をしたそうです。 ISPの担当者からは、 WHOISの登録内容は攻撃やSPAM送信の対応の際に利用されていることや、 登録にはかなりの業務量が必要となるため、 提案には反対するという意見が多く寄せられたとのことです。

疑問や懸念を示す意見が表明される一方で、 特にIPv6の情報提供については賛同する意見が表明されていました。 提案はメーリングリスト(ML)に差し戻して、 継続して議論を行うことがチェアから発表されましたが、 MLでの議論と並行して、WHOISでの情報提供が適切かどうか、 どのような情報を提供することが適切かといった、 それぞれの点について調査が行われる予定です。

IANA機能の監督権限移管に関する議論

2014年3月に発表された、 米国商務省電気通信情報局(NTIA)によるIANA監督権限移管に関する議論については、 移管後の体制を検討し、 提案することに責任を持つICG (IANA Stewardship Transition Coordination Group)が統合提案を作成し、 2015年9月8日(火)を締め切りとして意見募集を行っていました。 APNICカンファレンスではこれまでも、 本件に関するセッションを開催してきましたが、 セッションの当日に締切日を迎えるということもあり、 APNIC地域からの意見提出に向けて呼びかけが行われました。

セッションでは、 ICANNから理事長のSteve Crocker氏とIANA部局の責任者のElise Gerich氏、RIRからICGのメンバーを務めるAPNIC事務局長のPaul Wilson氏とAFRINIC CEOのAlan Barrett氏、 全RIRの調整機関であるNRO (Number Resource Organization) ECからChiarのAxel Pawlik氏、 各RIRコミュニティの提案をまとめるCRISP (Consolidated RIR IANA Stewardship Proposal)チームからChairの奥谷泉(JPNIC)が登壇しました。 セッションは、 それぞれの立場からIANA監督権限移管への関わりを紹介する形式で進められました。 ここでは詳細までお伝えすることはできませんが、 番号資源の分野に限らず、 IANA監督権限移管への関心を持つ参加者は多かったのではないでしょうか。 セッション中に放映された、 NRO制作のIANA監督権限移管についての説明ビデオ(日本語版)は、 次のURLから参照することが可能です。 ぜひ一度ご覧ください。

IANA Stewardship Transition Update: what Numbers folk need to know
[IANA監督権限の移管: 現状はどうなっているのでしょうか?]
https://www.youtube.com/watch?v=B5n3XgZTaac

選挙結果のご紹介

APNICカンファレンスでは、 情報提供やポリシー提案に関する議論のほかにも、 各種選挙が行われます。 今回行われたNRO NCおよび各SIGのChair・Co-Chairの選挙結果をご紹介します。

(1) NRO NC:藤崎智宏氏(日本電信電話株式会社(日本)・再選)

NRO NCは、ICANN理事会がグローバルポリシーを承認する上でアドバイスを行う役割を担います。ポリシーフォーラムより選出された2名と、RIRの理事会が指名する1名の合計3名を、各RIR地域の代表者としています。五つのRIRから合計15名で、NRO NCを構成しています。

2008年4月よりNRO NCとして活躍する藤崎氏は、2016年1月から2年間の任期で、引き続きNRO NCの役割を担います。

APNIC 40における選挙にて藤崎智宏氏がNRO NCに再選出
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2015/20150911-01.html

(2) ポリシーSIG Co-Chair: Sumon Ahmed Sabir氏
(Fiber@home Limited (バングラデシュ))

アドレスポリシーの提案について議論・コンセンサスの確認を行う、ポリシーSIGでは、Co-Chairが空席となっていました。今回、Sumon氏の当選により、Chairである山西正人氏とともに、ポリシーSIGを運営することとなります。

(3) NIR SIG Chair: 橘俊男氏(グリー株式会社(日本)・再選)
NIR SIG Co-Chair: Ajay Kumar氏(CNNIC (インド)・再選)、Zhen Yu氏(CNNIC (中国))

NIRに関する議論を行うNIR SIGにおいても、任期満了となるChairおよびCo-Chairの選出が行われました。橘氏は2期目となり、これまで以上の活躍が期待されます。

今回の選挙では、 日本国内のアドレスポリシーフォーラムにおいて活躍する藤崎氏と橘氏が当選されました。 おめでとうございます!

次回以降のAPNICカンファレンスについて

次回のAPNIC 41カンファレンスは、APRICOT 2016と共催となり、 2016年2月15日(月)~26日(金)にニュージーランド・オークランドで開催されます。 ニュージーランドでのAPNICカンファレンスの開催は2008年8月以来、 約7年半ぶりとなります。 また、2016年9月頃開催予定のAPNIC 42カンファレンスは、 バングラデシュ・ダッカで、 2017年9月頃開催予定のAPNIC 44カンファレンスは台湾・台中での開催を予定している旨も、 併せて発表されています。

APNICカンファレンスは、RIRやNIRのスタッフ、 APNICメンバーに限らず、どなたでも自由に参加することが可能です。 今回の報告に目を通されて、興味を持たれた方は、 一度参加してみてはいかがでしょうか。 特に日本国外での開催の場合には、 ポリシーに関わる熱のこもった議論のほかに、 開催地のインターネット事情を垣間見られる場面に遭遇するかもしれません。 JPNICからは、職員が毎回参加していますので、 多くの方と会場でお目にかかれることを楽しみにしています。

写真: NIR SIGのメンバー
● NIR SIGのメンバー

(JPNIC IP事業部 川端宏生)

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