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Update on ccTLD Agreements翻訳文

 この文書は、2001年9月20日に更新されたhttp://www.icann.org/montevideo/cctld-update-topic.htmを翻訳したものです。


ICANNモンテビデオ会合トピック:ccTLD契約についての最新情報

掲載日:2001年9月2日
更新日:2001年9月20日


ccTLD契約についての最新情報

 国コードトップレベルドメイン (ccTLD)契約に関する最新情報は、2001年9月9日に開催されるICANNモンテビデオ会合でのパブリックフォーラムの議題の一つとなっています。ccTLD 契約については、契約モデル、コンセプトなどを含め、これまで様々なフォーラムで議論されてきており、その結果は多数の非常に有益な文書としてまとめられています。

 この最新情報は、過去数年間に形成されたいくつかの見解を集約する好機となるものであり、これによって、ICANNとccTLDとの間の契約(その形式を問わず)に、より一層の前進が望まれます。この見解の集約に役立つよう、本文書では以下の項目について取り上げます。

  • インターネットのドメインネームシステム(DNS)におけるccTLDの役割についての経緯、およびccTLDの管理に責任のある種々の当事者(ccTLD管理者、当該政府および公的当局、ならびにICANN)間の関係。

  • DNSにおけるそれぞれの役割に鑑み、これら当事者間の関係に、たとえば正式な契約、覚書、およびその他の書面による法律文書を締結することによって、より一層高レベルの確実性および安定性を提供する必要性に関して、種々のICANNフォーラムで議論された中から形成された検討事項。

  • ICANNとccTLD管理に責任のあるその他の組織との間で議論されている、契約に向けての取り組みの種類。

  • これまでに締結された契約の進捗状況、および今後の進捗スケジュール予定。

 最後の項目に関しては、ICANN理事会が、2001年9月10日の会議で、ICANNと.au Domain Administration Limited (auDA)との間のccTLDスポンサ契約締結についての検討を要請される見込みです。これについては、オーストラリア政府が検討・支援を行ってきており、この契約締結により、.au ccTLDの管理を目的とした責任ある民間セクター組織を設立するために、オーストラリアのインターネット・コミュニティが長期にわたり取り組んできたプロセスが終結することになります。

A. ccTLDの委任および管理ポリシーの策定に関する経緯

 経緯を説明すると、ドメインネームシステム(DNS)は1980年代半ばに導入され、 現在では、およそ250の「トップレベルドメイン」または「TLD」(ドメイン名の最終ピリオドの右に位置する .com などの文字列)から構成されています。 これらのTLDは、現在2文字以上から構成されています。 2文字のTLDは、「国コードトップレベルドメイン」または「ccTLD」と呼ばれていますが、これは、これらのコードが、 ISO 3166-1リストに提示されている国または外部領域を2文字で表記する略語(国の場合は、デンマークの .dk など。外部領域の場合は、グリーンランドの .gl など)に対応していることに由来しています。このISO 3166-1リストは、国際標準化機構(ISO)の一部局によって維持されています。

 ccTLD は、インターネットの全世界的な普及を推進・促進するために、Internet Assigned Numbers Authority (IANA)(注1)によって創設されました。これらのccTLDは、指定管理者に委任され、当該国または当該領域の経済、文化、言語の状況に最も適合する地域ポリシーに基づいて運用されます。 ISO 3166-1 リストは、2文字の国コードに関する権威ある情報源として使用されています。これはRFC 1591に明記されている、「IANAは、どれが国でありどれが国ではないかを決定する立場にない」との見解によるものです。

 IANAは、1985年にDNSを導入後まもなく、ccTLD管理の責任を、ほとんどの場合、各国または各領域のボランティアによるインターネット先駆者に委任することを始めました。これは、一般的にはTLDの、そして特にccTLDの管理および委任に関するポリシーに基づいて行なわれました。これらのポリシーは基本的な技術要件を含んでおり、またIANAが委任を実施または変更する場合の状況について詳しく記述していました。ccTLDの管理ポリシーでは初めから、各ccTLDが、グローバルなネットワークに対する必要性の枠組み内で、ccTLDが創設された地域インターネット・コミュニティへのサービスのために運営されるべきであることが前提とされていました。(注2)この基本的な前提に従い、ポリシーは、委任された管理者は自国内のドメイン名登録申請者を平等に取り扱うことを要求し、また、受託が適正に履行されなかった場合には、地域インターネット・コミュニティの利害関係者がIANAに対して「指定管理者の受託業務」の移転を要求できるようにすることで、地域インターネット・コミュニティに責任を与えました。

 インターネットが地球上のあらゆる場所に普及し、何億というユーザーにとって重要な通信メディアとなり、また、商業利用の増大に対応するようになるにつれて、IANAのポリシーは徐々に進歩を遂げてきました。1994年3月、IANAのジョン・ポステル博士は、RFC 1591を発行しました。これは、ccTLDとgTLDの双方を含む、「ドメインネームシステムの構造と権限の委任」について一般的に説明しています。このRFCを発行後、IANAは定期的にポリシーを調整し、場合に応じて、地域インターネット・コミュニティおよびグローバルなインターネット・コミュニティへの責任に関する基本原則に基づき進化するポリシーを文書化したメモ(ccTLDニュースシリーズなど)を発行しました。

 1998年秋、当時米国政府との契約に基づき南カリフォルニア大学によって遂行されていたIANAの機能を含む、インターネットのDNSの技術的調整に関する責務を引き受けるために、民間セクターの非営利法人として、ICANNがグローバルなインターネット・コミュニティによって設立されました。 1998年11月、ICANNは米国商務省と覚書を締結し、種々の責務が段階的にICANNの援助に基づいた民間セクターによる調整へと移行されることになりました。1998年12月には、ICANNはISIと移行契約を締結し、米国政府の承認を条件として、ICANNがIANAの運営に関する責務を引き受けることになりました。 2000年2月、ICANN は、ICANNによるIANAの運営に関する契約を米国政府と締結しました。この契約によって、ISIからの移行が承認されたのです。

 一方、これに先立つ1999年5月に、ICANNとIANAは共同で、一般に「ICP‐1」として知られる、「インターネットドメインネームシステムの構造と権限の委任」と題した文書を発行しました。この文書は、ccTLDに関して当時IANAが遵守していたポリシーの声明が盛り込まれています。これらのポリシーは今日においても有効であり、ICP-1は、既存のポリシーにとっては最良の見本であり、また、ccTLDポリシーの変更を検討する際の原点ともなっています。

 ccTLDの適切な管理者を選任し、また必要な場合は管理者を変更する(注3)責務を遂行するに当たって、IANAは、ccTLDが運用されるべき方法に関して、各国の地域インターネット・コミュニティがコンセンサスに達することを重視してきました。ccTLDの委任および再委任について、IANAは、移転に関与する者または移転によって影響を受ける人々、特に、当該ccTLDの創設によって便益を受けてきた国または領域内の人々からの意見を求めています。RFC 1591では次のように説明しています。

 当該ドメインの利害関係者は、指定運用管理者が適切な団体であるということを、重要なこととして同意しなければなりません。

 IANAは、競合するすべての団体が、当事者間で合意に達するように努力をしますが、競合するすべての団体が合意に達しない限り、状況を変えるためにIANAが行動を起こすことは一般的にはありません。唯一、指定運用管理者が実質的に不適正な行動をとった場合に限り、IANAが介入することになります。

 しかしながら、指定運用管理者を選任する際に、利害関係者が何らかの意見を表明することもまた、妥当なことです。

 ポステル博士がccTLDニュースメモ第1号で考察している通り、またICP-1でも繰り返されているように、影響を受ける国または領域の政府または公的当局の見解は、この点に関して大変に重要であると見なされています。政府が、公益においてccTLDの管理を促進する役割を果たしている場合には、政府の見解は特に関係性の強いものとなります。(注4)

 ccTLD管理のためにコンセンサスに基づく調整を行なうということについては、地域インターネット・コミュニティにこのように大きく依存しているわけですが、コンセンサスが成立しない場合においては、地域インターネット・コミュニティの利益が満たされることを確実にするための監視の責任は非常に困難な役割であるとIANAは考えています。そのような状況においては、地域インターネット・コミュニティの利益がいかにして最大限に満たされるかということについての調査・査定において非常に大きな課題を提示されることになるのです。これらの課題によって必然的に、再委任要請の調査プロセスが時に、非常に長くなる結果となっています。(注5)

 ICP-1の発行以来、数件の再委任と1件の委任が行なわれました。 いずれの場合も、IANAは状況を慎重に検討し、各当事者および地域インターネット・コミュニティの責任に対処してきました。2000年2月初旬、IANAは、.pn (ピトケルン島)トップレベルドメインの再委任の要請に関する報告書を発行し、これにおいて再委任は適切であるとの結論を出しました。3月にIANAは、.ps(パレスチナ領域)の委任に関する報告書を発行し、2000年12月には、.ca(カナダ)トップレベルドメインに関する報告書を発行しましたが、これにおいても同様に、再委任は適切であるとの結論を出しました。これらすべての事例において、米国政府は、遅延なくIANAの再委任決定の結果を実施するよう命じました。(ICANNへの移管プロセスを進めている現段階で必要とされる手続です。)(注6)2001年8月、IANAは、.au(オーストラリア)トップレベルドメインは、ICANNとauDAとの間で適切な契約が締結されれば、オーストラリアのインターネット・コミュニティによって設立された広範な基盤を有する組織である auDAに再委任されるべきであると結論づける報告書を発行しました。

B. より正式な取り決めに向けて取り組む必要性

 ccTLDの委任および管理ポリシーの基本原則は継続してうまく役目を果たしているものの、これらの基本原則が文書化される際に用いられた非公式な方法は、ccTLDおよびIANAが運営を行わなければならない枠組みがますます公式的になりつつある状況には適合していません。インターネットおよびccTLDの規模が増大し(あるccTLDの登録数は現在400万以上となっています)、グローバル経済にとっての重要度を増していく中、その責務をより一層明確に示す必要性が明らかになってきています。

 DNSの導入から15年以上経過した現在、IANAの歴史的文書(RFC、ICP、ニュースメモ、および報告書)に記載されていた関係を、一方では引き続き業界主導のボトムアップ的アプローチを採りつつ、インターネット・コミュニティに対してより透明な形で、より予測可能な形で、かつ、より責任が明確な形で、正式化されるべきであるとの考えが、インターネット・コミュニティを通じて広範に広がっていることが明らかになっています。

 この考えは、ICANNを通じての、民間セクターによるインターネットの技術的調整への移行を完了させるために、コミュニティが達成しなければならない要件と一致するものです。米国政府との間に締結された、移行完了に関するICANNの覚書に基づく要件の一つに、ICANNが、インターネットの運営に関わる他の組織と適切な関係を構築し、インターネットの安定的運営を継続して行なうことを保証する形で、その技術管理の責務に応じられるようにするというものがあります。 これらの組織には、ccTLDの管理者や、総括的な調整活動に貢献する用意がある、影響を受ける国または領域の政府などが含まれます。特に、覚書の2000年9月の改定に基づいて、民間セクターによる調整への移行を完了するためには、再委任問題、ポリシー策定責任の割当て、そして当該政府および公的当局との関係を盛り込んだ、「国コードトップレベルドメイン運用組織との安定的な契約」を締結することが要求されています。

 過去の会合において、ICANN理事会は、ccTLD管理者との契約に前向きに取り組む必要性を確認してきました。 カイロ会合(2000年3月)において、理事会は、ccTLD管理および委任ポリシーに関して、いくつかのプレゼンテーションを受け、長時間に渡る議論を行いました。この会合で、理事会は以下の決議を行いました。

 事務総長およびスタッフは、適切な資金拠出取り決めを含めた、契約書、ポリシー声明、および/または取り交わし文書の草案を、ccTLD管理者、政府諮問委員会、およびその他の利害関係者と協力して作成し、可及的速やかにこれを理事会に提出すると共に、パブリックコメントを求めるためにウェブに掲載するものとする。

 メルボルン会合(2001年3月)において、ICANN理事会はccTLDの問題について協議し、 決議01.37として以下の決議を行いました。

 ICANN 経営陣に対して、引き続き旧来関係の契約の草案完了に向けて積極的に推し進めると共に、随時、三者間関係で受け入れ可能なccTLD契約を遂行することを命ずる。

 ICANNコミュニティ内の利害関係者達はこれらの課題に対処し、 ccTLDの管理と委任に関する現行のポリシーを正式化するための、またある点ではこれを調整するための提案書の作成に懸命に取り組みました。ほとんどすべての提案書が、ccTLDの管理に従事する当事者による責務を明確に記述した契約その他文書の構造を確立することを基本としています。ほぼ2年の間、ICANNおよびccTLD管理者は、ICANN、ccTLD管理者、当該政府および公的当局との関係の適切な形式および内容について、広範に渡る議論に参加してきました。また、政府とccTLD管理者との間、そしてICANNと政府との間でも数多くの議論が行われてきました。

 共同で作業を行うことにより、ccTLD管理者は、多岐にわたる一連のドラフト文書およびベストプラクティス(最善の行動規範)を作成しました。地域インターネット・コミュニティおよびグローバルなインターネット・コミュニティの双方に対するccTLD管理者の重大な責任を認識しつつ、ccTLD 管理者は、各々の多様な地域インターネット・コミュニティの最良の利益に供する共通原則と行動規範の策定に向けての準備および作業に着手しました。これらの活動については、ccTLD管理者のためのベストプラクティスガイドライン(2001年6月1日第4.1版)に説明されています。

 2000年2月、ICANN政府諮問委員会(GAC)は、一般に「GAC Principles」として知られている「国コードトップレベルドメインの委任と管理のための原則」と題する文書を発行しました。 これらの原則は、インターネットのネーミングシステムに関して政府が適正な役割を引き受けるに当たって、政府の手引きとなる「ベストプラクティス」としての機能を果たすものです。その中でGACはインターネットのネーミングシステムを公益において運用されるべき公的リソースであると見ています。

 GAC Principlesは、ccTLD Constituencyのベストプラクティス・ガイドラインの草案と同様、ccTLDに関する長年にわたるIANAポリシーの土台をなす基盤が堅固であることを再確認しています。 つまり、「ccTLD管理者は、地域コミュニティのために公的サービスを実施するものであり、従って、指定管理者には地域コミュニティに奉仕する義務がある」のです。GAC Principlesは、民間セクターがリーダーシップをとるというインターネットの伝統に従い、ccTLDの管理が、地域インターネット・コミュニティに最大限奉仕する形で、ccTLDの安定的運営を促進するために、ccTLD管理者、当該政府およびICANNが協力して作業を行うという、三者間の「責任の枠組み」の範囲内で実施されるべきであることを認めています。管理者は、基本的なccTLDの運用およびポリシー策定の責任を持ちますが、これは政府およびICANNへの説明責任を伴いつつ、地域インターネット・コミュニティを代表して遂行されるものです。

 GAC Principlesは、各国政府が、国内の公共ポリシーの目標に対し、その領域内での最終的な責任を負っていること、およびインターネットのドメインネームシステムが、引き続き効果的かつ相互運用可能なグローバルなネーミングシステムを提供していくことを保証する責任を、ICANNが負っていることを認めています。

 ccTLD ConstituencyおよびGACは、特定要件に関して異なる見解を持つこともありますが、双方とも、以下のニつの基本的ポイントを明確に支持しています。

  1. 委任された管理者が、地域インターネット・コミュニティの利益のために、受託者としての任務を遂行するとの、ccTLDポリシーの基本的歴史的前提が有効であり続けること。(注7)

  2. ccTLDの管理に従事する種々の組織が行ったそれぞれの確約事項を、契約またはこれに相当する書面による法律文書に正式に文書化する必要性があること。

C. 進行中の契約アプローチの構造

契約の基本的主題

 ICANNとccTLD管理者との間で合意に達した契約は、ccTLD管理者が、地域インターネット・コミュニティおよびグローバルなインターネット・コミュニティの双方に対してその責任を遂行し、かつ責任の適切な枠組み内でこれを遂行するというccTLD管理者の公約を規定するものです。ICANN-ccTLD 管理者間の契約では、以下の事項が取り扱われるべきです。

  1. 委任(ccTLDの指定管理者が変更される状況を含む)、および適用される原則。

  2. 地域ポリシーおよびグローバルポリシーの責任。グローバルなインターネット・コミュニティおよびそのポリシーに留意しつつ、地域インターネット・コミュニティの利益のために、かつ地域インターネット・コミュニティとの協議において、ccTLDを管理および運用するためのccTLD管理者の公的サービス提供における義務の確認。

  3. ICANN およびIANAに対する ccTLDの関係、ならびにそれぞれの責任。

  4. グローバルな安定性および相互運用性を監督するためのICANNの資金調達。

 ccTLDポリシーの総括的な目的に最大限に添う形で、これら四つの一般的項目を取り扱うには、各ccTLDの置かれている詳細な状況に十分注意する必要があります。いずれにせよ、上記の項目は、ICANNとccTLD管理者との間の契約(または覚書)において取り扱われるべきであり、そこにおいて各当事者の役割および責務を記載し、決定および取引の監査証跡を提供し、また地域インターネット・コミュニティおよびグローバルなインターネット・コミュニティに対して委任条件を明確にするべきです。

契約の種類:旧来関係の状況および三者間関係の状況

 過去2年にわたり、すべてのccTLDにとって適切な唯一の契約(契約構造)というものは存在しないことが明らかになってきています。当初は、すべてのccTLD管理者にとって使用可能な唯一の契約テンプレートを作成しようとの試みに議論が集中していたのですが、次第に、ccTLDの状況およびそれらの地域コミュニティが著しく多様化しているために、この目標が実現不可能であることが明白となってきました。ccTLD コミュニティは、非常に多様な管理構造、組織的形態、登録ポリシー、責任のメカニズム、および政府との関係によって構成されているのです。

 その結果、何時間、何週間、何ヶ月にもわたる議論を経て、それぞれの国・地域の政府または公的当局の関与の有無によって異なる取り扱いをした方が良い二つの主要な構造状況があることがわかってきました。これらは一般的に、三者間関係の状況(当該政府または公的当局が関与する状況)および旧来関係の状況(当該政府または公的当局が関与しない状況)と呼ばれているものです。

 ここで、この考え方をもう少しはっきりとさせてみた方が良いでしょう。

 簡単に説明しますと、旧来関係の状況では、ccTLD管理者が、従来通りその国で適用される法律に従うことを条件として、但しその他の点においては、IANAおよびICANNの監督のみに基づいて運用を行います。旧来関係の状況では、ccTLD管理者が、地域インターネット・コミュニティおよびグローバルなインターネット・コミュニティの双方に対して適切な受託管理者としての任務を遂行するということを保証するIANAの責務は、従来通り継続していきます。

 三者間関係の状況は、地域インターネット・コミュニティの利益が達成されることを保証する上で、当該政府または公的当局が適切な役割を遂行する用意がある場合に発生します。この状況は、地域インターネット・コミュニティに奉仕するというccTLD管理者の義務の遂行を監督する責務を、正式に政府に割り当てることによって、その領域内における公共ポリシーに対する政府の最終的な権限を活用するものです。三者間関係の状況において、ICANNは、ccTLDの運用がグローバルなインターネット・コミュニティの利益を安定性および相互運用性をもって促進することを保証する責務を担い、また、ccTLDが当該地域外の居住者による登録を奨励する場合においては、その他の特定事項の責務を担います。 この取り合わせには、ccTLD管理者が地域インターネット・コミュニティに奉仕することを監督する任務を、それぞれの地域(すなわち国の)政府の手に託すという利点があり、これはICANNが監督するよりも手近で、しかも制度的にもより好ましい方法なのです。

 三者間関係の状況および旧来関係の状況については広範に渡って議論されてきており、ICANNとccTLD管理者との間でどのような種類のモデル契約が適切かを評価するためには、これらを詳細に分析する必要があります。以下でこの分析を実施するに当たっては、これら二つのモデルがあったとしても、三者間関係の状況または旧来関係の状況のそれぞれに、小さな変更を加えた修正版が生じる可能性があることを念頭に置いておく必要があります。同様に、この二つのモデルの中間的なものが発生する可能性もあります。

 旧来関係の取り決めまたは三者間関係の取り決めのどちらを選択するかということは、それぞれのccTLD特有の状況、およびその政府との関係に依存します。どちらの取り決めを選択し適用するかは、適宜実施される地域インターネット・コミュニティとの協議をもって、基本的には政府とccTLD管理者との間での問題となります。コミュニティにおける議論の主旨としては、ICANNはどちらの種類の取り決めにも(適切な条件が満たされた場合)対応すべきであるが、ICANNの中立的な立場から、その国の法律およびポリシーに準じて、政府とccTLD管理者がどちらの取り決めを選択するかを当事者間で決定するようにすべきであるとしています。

三者間関係モデルの適用

 一般に、三者間関係の状況が発生するには、以下の事項が順次満たされることが条件となります。

  1. 当該政府または公的当局は、三者間関係モデルにおいて考えられる責任の協力的枠組みの中で支援することに関心を持つべきである。

  2. 当該政府または公的当局は、この役割を遂行する能力を有するべきである。多くの場合、政府は、権限を付与する制定法が存在しなければ、三者間関係の契約を締結できない旨を示しており、こういった法律は制定に時間を要する。

  3. 当該政府または公的当局およびccTLD管理者は、GAC Principlesの第9条に記載される事項を対象として取り扱う適切な契約またはその他の取り交わし文書を締結すべきである。一般的に、政府とccTLD管理者間の取り交わし文書によってこれらの事項に対処する際の明確な方法は、適宜行なわれる地域インターネット・コミュニティとの協議の上、これらの当事者間において解決していくというものである。

  4. 当該政府または公的当局は、通常は書簡にて、ccTLD管理者の委任についてICANNに正式に通達すべきである。その書簡において、政府はまた、(政府‐ccTLD管理者の取り交わし文書の内容に関する)GAC Principlesの第9条に説明される条項を管理者にどのように遵守させるかをICANNに通達し、それぞれの地域(すなわち国)の利益および公共ポリシーが達成されることを保証するとの確約を明言し、かつインターネット全体の安定性および相互運用性を保証する形でDNS(ccTLDを含む)を調整するICANNの責務を認識すべきである。

  5. ICANNへの政府による通達(上記第4項)の内容を受けて、三者間関係の状況を成立させる取り交わし文書を完成させるために、ICANNは通常、下記に記載する通り、ccTLD管理者との適切な契約を作成する作業に着手する。

三者間関係の状況における「ccTLDスポンサ契約」の規定

「ccTLDスポンサ契約」として知られる、ICANNとccTLDの管理に責任を有する組織との間のモデル契約は、ICANNの法務スタッフおよび三者間関係の状況における契約締結に当たって利害関係を有する複数の組織との間の協議に基づいて作成されたものです。掲載されているこのモデル契約は、GAC Principlesの第10条の一般的な考えに従うものです。また、これには、国際商業会議所によるものを含め、紛争処理メカニズムに関してccTLD constituencyが収集した種々の資料も取り入れられています。以上のことを手短にまとめると、モデルccTLDスポンサ契約では、上記に特定された四つの主題について、次のように対応しています。

  1. 委任および再委任: 本契約では、本契約終了までは、スポンサ組織がccTLD管理者としての任務を遂行すると規定されている。契約の終了とは、同組織が政府との(国益に関する)取り交わし文書に違反した場合、または相互運用性を促進するポリシーを遵守するといったグローバルな利益に関するICANNへの公約に違反した場合に発生するものである。(第2.10項、第3.1項、および第6.2項)

  2. 地域ポリシーおよびグローバルポリシーの責任:ccTLD管理者は、政府の監督下で、地域の利益に影響を及ぼすポリシーを策定する自治権を有している。ccTLD管理者は、相互運用性、運用能力、ccTLDの運用業務、ならびに委任および登録データの透明性に関するICANNポリシーを遵守することに同意する。ccTLDポリシーが、当該地域外に居住する団体または個人による登録を奨励または促進している場合、管理者は、その事項に特に適用可能なICANNポリシーを遵守する。但し、政府が遵守しない旨を指示した場合はこの限りではない。(第4.5項)

  3. ccTLD-ICANN/IANAの関係: 第3項では、種々の仕様に基づいて、ICANNがccTLDにルートゾーンサービスを提供する旨が規定されている。ccTLD管理者は、第4項における安定性および相互運用性を促進するための様々な運用要件に同意する。

  4. ICANN への資金拠出:ccTLD管理者は、「コンセンサスを基にICANNが作成したICANNの全体的な資金要件(積立金を含む)に基づいた公正な尺度に従い」ICANNへの資金拠出に貢献することに同意する。(第4.6項)
三者間関係の状況のための「ccTLDスポンサ契約」モデルを読むには、ここをクリック。

旧来関係モデルの適用

 当該政府または公的当局が、三者間関係の状況への参加に関心を示していない場合、または権限を付与する制定法が存在しないかその他の要因のためにこれを実行できない場合には、ICANNとccTLD管理者との間の二者間取り決めも可能です。これらは「旧来関係」の状況と呼ばれています。

 しかしながらccTLD Constituency内および政府諮問委員会内の議論に基づいて、旧来関係モデルの適用にはいくつかの制限が設けられています。考え得る制限事項は下記の通りです。

  1. ICANNは、政府に対して、三者間関係の状況に参加を希望するか、または参加可能であるかを検討させるために、ccTLD管理者との協力のもと、現在契約について議論されている旨、また、その議論は各ccTLDおよび各国の状況がそれぞれ独特であり、この事実を尊重しながら行なわれている旨を政府に通知することを約束している。

  2. 再委任の要請が出されている場合には、その決定がなされるまでは、通常、旧来関係の状況もしくは三者間関係の状況のいずれであっても、契約を締結しないほうが適切であると考えられる。

  3. さらに、管理者および政府間では、ccTLD管理者が当該政府または公的当局の法域内に居住していない場合には、当該政府または公的当局からの同意を得ない限り、旧来関係モデル契約を締結すべきではないという意見が大勢である。

 GACもまた、メルボルンのコミュニケにおいて、「旧来関係」契約は、三者間関係の状況への参加について当該政府または公的当局からの適切な表明を得るまでの間の、臨時かつ暫定的な性質を有するものであるべきとの見解を表明しています。一部のccTLD Constituencyメンバーは、この見解に懸念を示しており、この問題を煮詰めていくためには、 ccTLD Constituency、政府諮問委員会およびその他のインターネット・コミュニティのメンバーとの間で更なる協議が必要であると思われます。

 しかしながら一方で、政府が三者間関係の状況に参加する準備が整っていない状況では、整然とした安定的な関係を促進する上で、暫定的な二者間の公約を表明する簡略な文書の作成を推し進めていくことが望ましいことであり、このことは議論の余地がありません。このために、ICANNの法務スタッフは、旧来関係の状況を考慮して、覚書モデルを作成しました。このドラフトを作成するに当たって法務スタッフは、特に、2000年11月26日にccTLD constituency が作成したドラフト「ccTLD管理者とICANNとの間のサービス契約」(その対象とする主題について)および 「ccTLD管理者のためのベストプラクティス・ガイドライン」第4版を参考にしました。

 この覚書モデル(下記にリンク)は、いずれかの当事者が通知を行うことによって終了可能となるよう意図されており、法体系内で強制力を持ついかなる義務をも生み出すものではありません。 しかしながら、このような無期限の有効性を持たない覚書であっても、旧来関係の状況に明確さと安定性の基準を付加することを目的とする、ICANNおよびccTLD管理者が意図した公約を覚書として記録するという利点を持っています。当該政府または公的当局が明示的に異議を表明していない場合には、覚書の書式を作成することは、DNSの安定性を維持していくというICANNの総括的な使命を促進することになります。

旧来関係の状況のための、無期限の有効性を持たない覚書モデル(原文)を読むには、ここをクリック。

 特定の状況において、かつ当該政府または公的当局の承認を得た場合には、旧来関係の状況において、義務を強化し委任の期間を定めた契約を締結することが適切な場合もあります。このような契約の正確な概要を設定するには、必然的に当該国の当事者間による協議が必要となります。

D. これまでの進捗状況および次のステップ

 ICANN の法務スタッフは、ICANNと管理者との間の契約条件に関して、三ヵ国(オーストラリア、カナダおよび日本)のccTLD管理者と協議を重ねてきました。いずれの場合においても、当該政府の当局者には、これらの法務関連協議の開始時に通知を行い、また常時状況報告を行ってきました。

 その他多くの場合には、ccTLD問題に関する他のICANN連絡担当責任スタッフが、ccTLD管理者および政府当局者と事前協議を行ってきました。これらの事前協議では、多くの国のccTLD管理者が、ICANNとの契約に関する適切な表現について協議する用意があることが明示されています。

 オーストラリアの場合は、協議の結果として、ICANNと.au Domain Administration Limited(auDA)との間のccTLDスポンサ契約を、両組織の理事会による承認を条件として締結することになりました。これは、auDAがオーストラリア政府と適切な取り交わし文書を締結している三者間関係の状況による契約です。これに対応してオーストラリア政府は、auDAを .au ccTLD の委任者として承認し、また「グローバルなコミュニケーションと商取引のための効果的かつ便利なメカニズムとして引き続き機能する形で、インターネットの技術的調整を監督する」ICANNの責務を認めつつ、地域インターネット・コミュニティに対するauDA のサービスを監督する、三者間関係の状況に基づく自身の責務を遂行することを確約しました。このccTLDスポンサ契約案は、2001年9月10日のICANN理事会に提出され、検討される見込みです。

 (尚、モンテビデオ会合以降、ICANNスタッフは、契約の状況に関するプレゼンテーションを多数実施しています。2001年9月20日から21日にかけてのCENTRの会合では、ccTLD連絡担当者 Herbert Vitzthum 氏が、「ICANN ccTLD契約」と題するプレゼンテーションを行いました。)


注:

1 RFC 1591に記載されている通り、1985年のDNSの導入に当たって、 IANAは、公益におけるインターネットのユニークな識別子の空間を管理する自身の使命の一部として、DNSの運用管理に対して全般的な責任を引き受けました。「The Internet Assigned Numbers Authority (IANA)は、ドメインネームシステム(DNS)の全般的な調整と管理、特にトップレベルドメインと呼ばれる名前空間の委任に関して責任があります。」

2 RFC 1591に記載の通り:

 これらの指定を受けた機関は、それぞれに委任されたドメインの受託管理者であり、そのコミュニティに対してサービスを提供する義務があります。

指定運用管理者は、国コードの場合、当該国にとっても、グローバルなインターネット・コミュニティにとっても、トップレベルドメインの受託管理者ということになります。

ここでの留意点は、ドメインの「権利」と「所有権」に関係することではなく、コミュニティへの「責任」と「サービス」に関係することであると理解するのが適切です。

3 「当該ドメインが適正に運用されず、継続的な問題がある場合、その委任が解約される可能性があり、その場合、別の指定運用管理者が委任されることになります。」RFC 1591

4 .pn トップレベルドメインの再委任要請に関するIANA報告書 (2000年2月11日)

5 ccTLDニュースメモ第1号に記載の通り:

例外的に、当事者が合意に達することができず、IANAが問題解決を要請されたこともある。通常、この手続きには長時間を要し、少なくともいずれか一方の当事者に不満が残ることになるので、当事者間で合意に達することができれば、これにこしたことはない。

6 2001年6月、IANAはまた、前ザイール共和国のccTLD(.zr)を削除すべきであるとした報告書を発行しました。この措置は遅延なく実施されました。

7 ccTLD Constituencyの、ccTLD管理者のためのベストプラクティス・ガイドライン(2001年6月1日第4.1版)より:

 ccTLD 管理者とは、委任されたドメインの受託管理者であり、そのドメインが代表するコミュニティおよびグローバルなインターネット・コミュニティに奉仕する義務があります。トップレベルドメインの「権利」と「所有権」を問題にするのは不適切であり、コミュニティへの「責任」と「サービス」を考慮することが適切です。

GAC Principles(2000年2月23日)より:

RFC 1591の原則は有効であり続ける。ccTLD管理者は、地域コミュニティのために公的サービスを遂行するものであり、従って、指定管理者には、地域コミュニティに奉仕する義務がある。 指定管理者はまた、グローバルなインターネット・コミュニティに対する責任も負っている。

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