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Working Paper on ICANN Mission and Core Values
翻訳文

(社)日本ネットワークインフォメーションセンター
最終更新 2002年6月19日

この文書は2002年5月6日に公開された
http://www.icann.org/committees/evol-reform/working-paper-mission-06may02.htm
を翻訳したものです。
JPNICはこの翻訳を参考のために提供しますが、その品質に責任を負いません。


ICANNの発展と改革に関する委員会からの
「ICANNの使命および核となる価値に関する研究報告書」

 現在コミュニティにおいて進行中の、 ICANNの発展と改革に関する議論を促進させるために、 ICANNの使命および核となる価値に関する研究報告書を以下に提示いたします。 これらの見解は結論ではなく、したがって、 総括的には理事会もしくはコミュニティへの具体的勧告の根幹を実際に成すものとなるかもしれませんし、 あるいはならないかもしれません。 これらの見解が、今後数週間、 コミュニティにおいてより詳細な議論が行なわれるための基盤となることを期待しています。 2002年5月17日までに寄せられたコメントが最も有益なものとなります。

 この研究報告書に対するコミュニティからのコメントをお待ちしています。 コメントは <reform-comments@icann.org> までお送り下さい。

ICANNの発展と改革に関する委員会
2002年5月6日


ICANNの使命

 The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)は、 グローバルなインターネットの一意の識別子のシステムの調整を責務とする民間セクターの組織です。

 ICANNの使命は、インターネットの一意の識別子のシステムの安定的運用を調整することです。特に以下のようなものが挙げられます。

  1. インターネットにおける3つの一意の識別子の割り振りと割り当ての調整
    • ドメイン名(「DNS」と呼ばれるシステムの形成)
    • インターネットプロトコル(IP)アドレスおよび自律システム(AS)番号
    • プロトコルポート番号およびパラメータ番号
  2. DNSのルートネームサーバー・システムの運用および展開の調整

ICANNの核となる価値

 ICANNは、使命遂行にあたり、 これらの核となる価値および原則を遵守しています。

  1. インターネットの運用上の安定性、信頼性、セキュリティ、グローバルな相互運用性を維持および向上させる。
  2. ICANNの活動を、ICANNの使命の範囲内での、グローバルな調整を必要とするような、もしくはグローバルな調整によって多大な恩恵を受けるような問題に限定することによって、インターネットが生み出し得る創造性および革新を尊重する。
  3. 実行可能な範囲内で、調整業務を関係者の利益を反映するような責任ある組織へ委任する。
  4. あらゆるレベルにおける意思決定およびポリシー策定への国際的な参加を促進する。
  5. インターネットの機能的および地理的多様性を反映させた見識のある参加に基づく理事会を目指す。
  6. 実行可能かつ有益な場合には、ドメイン名登録における競争を導入および促進する。
  7. 実行可能な場合には、市場メカニズムに競争環境の促進および持続を委ねる。
  8. 十分な情報に基づき、技術的に健全な決定を促進するような、オープンかつ透明性のあるポリシー策定メカニズムを採用する。
  9. ポリシー文書の中立的かつ客観的な適用により、割り振りおよび割り当てに関する決定を行なう。
  10. インターネットのニーズに対応し得る速度で措置を行なう。ただし、意思決定プロセスの一環として、最も影響を受ける関係者からの見識あるインプットを受けることとする。
  11. ICANNの実効性を向上させるメカニズムを通じ、インターネット・コミュニティへの説明責任を保持する。
  12. 民間セクターに根ざしつつも、公益のために政府の懸念を配慮の上措置を行なう。これにより、直接的な政府による措置の必要性を最小限に抑えることができる。

ICANNの使命の意味

 ICANN改革のプロセスにおいてしばしば提起される疑問は、ICANNは、 自身を技術的管理業務に限定しつつ、 どの程度までポリシー問題から離れることができるかということです。 この疑問は、ほぼ普遍的な認識を反映しています。 その認識とは、ICANNの使命がその構造や機能の仕方を決定すべきであり、すなわち、 ICANNの構造はICANNが使命を遂行していく上での助けとなるべきであるというものです。同様に、構造と運営は、 グローバルなインターネット・コミュニティの中でICANNに自信を抱かせるものにすべきです。

 よって、ICANNの構造に関する議論の中心は、 ICANNのポリシー策定の役割の範囲にあります。 ICANNの使命にポリシー策定が含まれれば含まれるほど、 一般からの参加および説明責任のメカニズムの必要性はより大きいものとなります。 逆に言えば、ICANNのポリシー策定の役割が限定かつ制約されればされるほど、 これらの必要性はより小さくなります。

 ICANNの構造改革の鍵は、ICANNの使命を再定義し、 その課せられた責務からポリシー策定を除外することにあると言う人もいます。 この議論は、一見非常に魅力があります。 しかし、ICANNの実際の責務を公正に評価すると、本来、ICANNの使命は、 基本的に技術的なものでありながらも、 技術面以外のポリシー策定における限定的な役割を本質的、必然的に必要とします。 ポリシー策定の責務を排除することはできず、 その責務を他の組織へ移転または委任するほかはありません。 既に多くの分野では行われており、 多様なポリシー策定の責務が地域インターネットレジストリ(RIR)、 特化された分野別トップレベルドメイン(gTLD)のスポンサー、 および国コードトップレベルドメイン(ccTLD)管理者へ委任されていることからも分かります。

 したがって、より有益な質問は次のようなものになります。 「ICANNのポリシー策定機能を、その使命に一致し、 客観性および中立性の原則により制限され、 さらに一般による調査および見直しを条件としながら、 どの程度まで明確に定義された分野に限定することができるのでしょうか?」 「ICANNの現在の機能のうち、 他の適切な(つまり合法的で説明責任を有する)組織に移転すべきものはありますか?」

 本報告書はICANNの使命と実際の責務との関連を分析することにより、 これらの問題の解明に役立てようとするものです。

1. ICANNの使命の根源

 ICANNの使命の遂行は、必然的にポリシーの遵守を伴います。 技術的調整におけるICANNの実質的な行為の多くは、 広範な影響を与える可能性を持つ選択肢を提示します。 逆に、ポリシー策定はしばしば技術的な意味合いを持ちます。 そのような行為において可能性がある恣意性を回避または限定するために、 ポリシー策定は明示的で、一般の人が理解しているポリシーに基づく必要があります。 ICANNの主な強みは、コミュニティの関与に基づき、開かれた、 参加型のプロセスを通じてポリシーを策定していることです。 多くの組織およびスタッフがポリシー策定プロセスに関与する可能性がありますが、 ポリシーの承認または変更についての最終決定は、 ICANNを統治する理事会(現理事会)が行います。 ICANNの運営支援に必要な多数のポリシーは、 ICANNの決定に含まれる技術面以外の意味合いに対応しなければなりません。 そのためには、 理事会をこのような広範な課題に十分に対応する能力のある人々で構成する必要があります。

 技術的機能およびより広範なポリシーの合流、ならびに、 これらの技術的機能の社会への影響は、生来のポリシー策定プロセスの必要性と共に、 ICANN設立へ向けた第一歩が開始された時点から既に明確に認識され、 議論されてきました。 実際に、技術的調整と関連するポリシー策定の不可避的な合流により、学術、政府、 企業およびその他の多くの部門の個人、機関および組織が、 広範囲を包括するICANNの枠組み作りに取り組んでいます。 この意味で、 ICANNがポリシー策定環境の中で活動しなければならないと明言することは、 全く新しいことではありません。

 ICANNの使命(上述の「ICANNの使命」を参照)には、歴史的にInternet Assigned Numbers Authority (IANA)としてまとめられていた機能も含まれています。IANA機能は、1998年以来ICANNが遂行していますが、以下の二つの主要な源から派生しています。

  1. 米国政府。ICANNの創設以前にIANAに資金提供していました。
  2. Internet Engineering Task Force (IETF)。IETFを通じて基本的なインターネットに関する基準(インターネットプロトコルおよびドメインネームシステムを含む)が策定されます。

 ICANNの全般的使命を構成する多様な要素は以下に文書化されています。

 以下の文書はDNSトップレベルドメインに関連するICANNの使命の範囲を詳述しています。

 以下の文書はIPアドレスの割り振りおよび自律システム(AS)番号に関するICANNの使命の範囲を詳述しています。

 その他多数の関連RFCの中で、以下は、 IETFの代理として行なっているプロトコルポートおよびパラメータレジストリの運用に関連するICANNの使命の範囲を説明しています。

 これらの中で、ICANNの使命の根源と範囲を理解する上で最も重要なものは、 ホワイトペーパー、米国商務省とICANNとの覚書(改正版)、 ICANN-米国政府間のIANA機能遂行のための契約、 およびIANAの技術的業務に関するIETF-ICANN 間の覚書です。

2. ポリシー策定は生来のICANNの責務

 ICANNが調整の責務を負う4つの大きな分野(インターネットドメイン名、 IPアドレス、プロトコル番号の割り振りおよび割り当て、 およびDNSルートネームサーバー・システムの調整)は、程度の差はあれ、 必然的にポリシー策定を伴います。 場合により(例えばプロトコル番号の割り当て。IETFの指針が権限を持つ)、 確立されたポリシーの枠組みがIANA機能の遂行を包括的に指導します。 他方の分野では(例えばDNSルートゾーンファイルの管理など)、 新ポリシーの策定または既存のポリシーの精緻化が求められるような問題がしばしば生じます。 (ICANNの現在の具体的な責務の詳細説明については(『ICANNの活動について』<和訳>http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/2002/20020307-mission-statement.html参照。)

a. IPアドレスとAS番号

 IPアドレスとAS番号の割り振りの分野では、 ICANNのポリシー策定の責務はグローバルなアドレスポリシーのみに留まります。 各地域インターネットレジストリ(もしくは下位のインターネットレジストリ)は、 独自のIPアドレスとAS番号の割り振りおよび割り当てポリシーを策定しています。 グローバルなアドレスポリシーが必要とされるのは、 地域インターネットレジストリおよび下位のインターネットレジストリのすべてが同じ3種類のアドレス空間(IPv4、IPv6、およびAS番号)からナンバリング資源の割り振りおよび割り当てを行っているという事実に基づいています。 IANAはこれらのナンバリング空間について最高責任を負い、 地域で確立されているニーズに基づきそれらを大規模ブロック単位で地域インターネットレジストリに割り振ります。 IANAによる割り振りの調整は、インターネットの一意性の維持に不可欠であり、 IANAおよびあらゆるレベルのインターネットレジストリがグローバルアドレスポリシーを遵守することにより、保存、経路制御可能性、 および正確な登録等のグローバルな問題についての目標を維持した上で割り振りおよび割り当てが行なわれるということが保証されます。 既存のグローバルなアドレスポリシーは過去10年以上にわたり策定および精緻化され、 ごく最近ではRFC2050として文書化されました。 グローバルな問題についてのいかなる変更も (例えば新しいインターネットプロトコルまたは技術に対する変更など)、 あらゆるレベルのすべてのインターネットレジストリにわたって調整されなければなりません。 ICANNの手続きの下では、 グローバルなアドレスポリシーはICANNアドレス支持組織により評価、策定されます。 アドレス支持組織はボトムアップ、参加型の構造で、 既存の各地域インターネットレジストリが支援しています。

b. インターネットドメイン名

 DNSに関するICANNの責務には、 技術面および技術面以外の両方のポリシー業務が含まれます。 両者はIANAの長年の責務である 「ドメインネームシステム(DNS)の全般的な調整および運営管理、 特にトップレベルドメインと呼ばれる名前空間の部分の委任」 (RFC1591より)に基づいています。 この責務にはDNSルートゾーンファイルの管理者としての役割が含まれます。 ルートゾーンはDNSトップレベルドメインのインターネットの権威あるインデックスです。 これに含まれるのは2文字のccTLD登録および3文字以上のgTLD登録です。 DNSの現在のアーキテクチャおよびその予測される進化において、 識別子の一意性はDNSの階層的な性質に基づいています。 それにより、ドメイン名に関するICANNのポリシーは、 中央調整の必要性を適宜認識しながら、同時に中央による調整を必要としない問題は、 影響を受ける当事者の利害を反映するような責任ある組織に委任しようとしています。 DNSデータベースは分散的な性質を持っているので、 例えば、地理的に制約された地域内におけるDNSの運用等では、 識別子の一意性およびインターネットのグローバルな相互運用性に関わるその他の問題が保証される限り、 ポリシー策定の責務の大部分は委任可能です。

 主としてTLD固有の問題に関するポリシーの責務の委任が歴史的に好まれてきたということは、IANAがccTLD管理者に対し、登録要件、価格、紛争解決、ビジネスモデル、 ローカルコミュニティの参加およびポリシー策定のメカニズムの策定責任を委任したという過去の慣行により例証されています。 ローカルなインターネットコミュニティへの説明責任が損なわれた場合には、 別の管理者へ移行するという必要性により、 IANAのccTLDへの委任慣行はコミュニティの利益を最も反映する方法で決定が行われることを保証するのに役立ちます。 最近では、責務を理にかなった形で委任することを過去に選択してきた経験は、 特定目的のgTLD(.aero、.coopおよび.museum)のスポンサーに対し、 ポリシー策定責務を迅速に委任したことに反映されています。

 対照的に、ICANNは、.com、.net、.org、.info、 .nameおよび.biz等スポンサー無しgTLDに対するICANNの使命に従い、 適切と見なされるレジストリレベルのあらゆるポリシー策定において、 より直接的で重要な役割を果たしています。 実際に、ICANNはスポンサー無しgTLDレジストリのためのグローバルなインターネットコミュニティーの開かれたポリシー策定フォーラムとしての役目を務めています。

 ccTLDおよびgTLDの両方に影響するDNSルートゾーンファイルの運営管理も、 DNSのセキュリティや国際化ドメイン名のプロトコル・スイート等の進化する新しいプロトコルの実装から生じる可能性のある複雑な技術上のポリシー決定を必然的に伴います。 これらの決定には、広範な技術面以外のポリシーの意味合いを持つものや、 検討が必要な要件を持つものもあります。

 ICANNのレジストリレベルのgTLDに関するポリシーには技術面以外の性質のものもありますが、 すべては一意の識別子の割り当てを調整し、 これらのシステムの安定的な運用を確保するというICANNの使命に直接関わるものです。 例えば、gTLDの紛争処理メカニズムの必要性は一意の割り当ての問題に起因します。 割り当てられたドメイン名の文字列自体が争われます (多くのccTLDは同様の理由から紛争処理メカニズムの実施を選択しました)。 同様に、レジストラの競争は、 gTLDレジストリがドメイン名所有者のニーズに対応する能力に直接関係します。 これは、少なくともレジストリ間の競争自体がその目的を満たすのであれば、 それまでの間に関してのことです。 対照的に、電子メールメッセージの内容、ftpファイル、 またはウェブページについての紛争は、 割り当てられたドメイン名に本来的に何ら関係のないものであり、したがって、 ICANNのポリシー策定の範囲外となります。 それゆえにICANNは、ウェブサイトのコンテンツ、電子メールメッセージの内容、 またはその他ドメイン名によりアクセスされるものについて、 ポリシーの中心に据えることはありません。

 いつ、どのように新しいTLDをルートに追加するのか、 そして誰がそれを運用するのかということに関する決定は、 技術的な性質を持つだけでなく、 実際にルートゾーンファイルを運用管理する技術的行為と不可分の関係です。 したがって、これらの決定はグローバルベースで適切に行われており、また、 ICANNの技術的調整の責務と関連して論理的に行なわれなければなりません。 理論上は、その他の何らかの組織がこれらの決定を行なうことも可能ですが、 しかし何故それが望ましく、効果的、効率的、 もしくは最適であるのかは明確ではありません。

 新TLDのルートへの挿入、または既存のTLDの再委任は、 必然的に次のような問題に対する答えに関係しています。 それらの問題とは、どのTLDについて、誰が関連するレジストリを運営すべきか、 必要であるとすればどのような規制をそのようなTLDおよびレジストリに課すべきか、 運用権はいつ、どの位の期間委任すべきか、 いつ変更すべきかもしくは変更すべきでないかの決定権を誰が持つべきか、 技術およびその他の実績基準はどのように評価すべきか、といったようなものです。 そしてこれらの問題の範囲を超えるものとしては、何をあらかじめ定義すべきか、 何を市場の裁量に委ねるべきか、そしてどの程度の決定執行が要求されるか、 といった問題があります。 すべてはインターネットの安定性の維持という枠組みの中で行われ、 競争および国際化といったICANNのその他の核となる価値に関係しています。

 これらはすべて、 ルートゾーンファイルの運営管理の課程において取組まなければならないポリシーに関する問題です。 これらの問題は1つ以上の組織が対応すべきものであり、 ICANNは本質的にこれらの他の組織による決定を技術的に実装することに限定すべきであるという人もいます。 そのような分断化から何が得られるのかは不明です。 なぜならそれは不可避的により多くの管理を伴い、調整が複雑になり、 単一の調整組織が存在しないためにポリシー決定の衝突を伴うと予想されるからです。 結局、ICANNを機能上の境界線に沿って分割すれば、 別個の組織を調整する新しい組織の必要性が再び増すことになるでしょう。 それは、議論の多い環境というICANNの特徴の大部分を占める状況を繰り返すだけになる可能性が高いでしょう。 つまり、問題を分散し、倍加させるけれども、解決はしないということです。 間違いなく、ICANNは、それが合理的である場合には、 適切な組織に調整の責務を今後も委任することができますし、委任すべきです。 このような選択は、ICANNの使命に一致する場合はいつでも分散化されるべきです。 しかし、最終的には、 ルートに関するポリシー策定およびその他技術的な機能を調整する単一の組織が存在することになるでしょう。 たとえそのような単一の組織が、 他の組織に委託された特定の問題に関する決定を考慮した上で決定を行なうとしてもです。 もしこのような単一の組織がICANN(必要な場合改革するとして)でないとすれば、 誰でしょう? 米国政府でしょうか? 国際条約に基づく組織でしょうか?

c.プロトコル番号

 プロトコルのナンバリングの分野では、ICANNは、長期間かけて策定され、 容易に実施可能なポリシーに従っています。 つまり、ICANNは、「創設者」が策定した、 特定のレジストリが関与している指針に従い、 パラメータ値とプロトコル値のレジストリを単に管理しているだけです。 「創設者」は、 ほとんどすべての場合Internet Engineering Steering Group(IESG)およびInternet Architecture Board(IAB)を指します。

d. DNSルートネームサーバーシステム

 ICANNは、 DNSルートネームサーバー・システムが安定的に機能するよう調整する責務を負っています。 これには、ポリシー指向の業務、ならびに技術上および運用上の業務が含まれます。 DNS問い合わせの最上位での解決について、DNSは、 13台の地理的に分散配置されたルートネームサーバー (これらはアルファベットの文字により識別)に依存しています。 12名のルートネームサーバー運用者がおり、大学、軍の機関、民間企業、 非営利組織と多岐にわたっています。 ルートネームサーバー運用者全員はボランティアであり、 そのサービスに対して、外部から一切の報酬を受け取っていません。

 DNSが適切に機能するために必要なことは、 ルートネームサーバー運用者が密接な協力のもとにそれぞれの責務を遂行することです。 ICANNのルートサーバーシステム諮問委員会(RSSAC)は、 12名のルートネームサーバー運用者と外部から招かれた専門家によって構成されており、 ルートネームサーバーの分散化と配置場所、 ならびに改良されたアーキテクチャおよびプロトコルの実装等に関するポリシーの策定および実施の調整を促進します。 従来、ルートサーバー運用者自身が、 ルートサーバーシステムの安定的運用を保証するために必要となる調整活動の大部分を行なってきました。

 これらのポリシー決定には、 技術面および技術面以外の要素が相互に関連する問題が不可避的に含まれます。 それらは中央的な調整を必要としています。 ルートネームサーバーの運用について現状を継続するという決定すら、 中央的なポリシー決定によるものです。 なぜなら、おそらく多様性における力の方がその他の問題より重要であるからです。 この場合もやはり、 ICANNより他の組織の方がこれらの業務を果たすのに適している理由は明らかではありません。

3. ICANNの構造と改革の意味

 現在進行中の議論は以下のいくつかの点を浮き彫りにしようとしています。

  1. ICANNの核となる使命のうち、本質的および不可避的に技術面以外のポリシー策定を伴うもの。
  2. ICANNのポリシー策定の役割の範囲。ICANNの使命の範囲内で、識別子のセットにより著しく異なる。
  3. ICANNのポリシー策定の責務は、適切なグローバルな責務の分野に限定される(および限定されるべき)。
  4. これらのグローバルなポリシー策定機能は完全には排除できない。すなわち、ICANNもしくはその他の組織により遂行されなければならない。

 ICANNの使命に関するこれらの所見から、 以下のようなICANNの構造改革の意味が引き出されました。

 まず、ICANNの使命および責務を綿密に検討すると、 現在のICANNのポリシー策定の分野は、 上記の説明の範囲に収まっていないために特定するのは困難であり、 したがってICANNの責務としては不適切です。 可能なことは、せいぜい、 理論的に他の組織に移転可能なポリシー策定業務を特定することです。 例えば、ccTLDの委任および再委任についてのICANNの責務を、 米国政府または国連のような国際条約に基づく組織に移転することは可能です。 しかしいずれの場合も、 そのような組織は必ずccTLDの再委任要請を評価するという同様の必要性が生じることになるでしょう。 これらの業務がIANA機能の一部としてICANNによって遂行されるのではなく、 単に別の組織によって遂行されるということです。 1990年代に、 ここで説明したような状況が国際的なコミュニティーの強い抗議を引き起こし、 このような手段を、原則上および実際上、現在および見通し得る将来にわたり、 実質的に不可能にしました。 そしてそのような分離が行われた場合には、DNSのメカニズムの堅固性、 整合性をグローバルに保証するために、 他の組織と技術ポリシーを調整する必要があるでしょう。

 第2に、ICANNは自己のポリシー策定活動を、 グローバルな調整もしくはポリシー策定がICANNの核となる使命に関連し、 さらにグローバルベースで適切に実施されるような分野のみに継続して限定すべきです。 このような結論が認めているのは、 適切な責任を負うパートナー組織(例えば地域インターネットレジストリ、IETF、 DNSルートネームサーバー運用者、 ccTLDおよびスポンサー付きgTLD組織等)の役割をICANNが尊重した場合にICANNが最も有益に機能するであろうということです。

 第3に、ICANNのポリシー策定構造は、 その使命の範囲内で特定されている個々の識別子空間に関しては、 ポリシー策定活動の範囲に比例するように合わせるべきです。

 例えば、IANAのプロトコルポートおよびパラメータのレジストリ機能については、 別個のポリシー策定メカニズムは必要ではありません。 なぜならICANNの役割は厳密にIETFの指針にしたがう管理的なものであるからです。 本質的に、 IETFはそれらの機能に関しポリシーを策定するメカニズムとして機能しており、 ICANNはIANA機能を遂行する上で、その結果のポリシーに従います。 対照的に、スポンサー無しgTLDに関しては、 ICANN自身がグローバルなポリシーフォーラムとして機能しており、同時に、 ICANNの必然的に広範囲にわたる役割でもって、 それらのレジストリとの調和を維持しています。 これら2つの中間には、スポンサー付きgTLDレジストリ、 ccTLDレジストリおよびIPアドレス割り振りに関するグローバルなポリシー策定の調整があります。

 第4に、各識別子空間に関するポリシー策定のメカニズムは、合理的な場合、 分離し、互いに区別した状態のままにすべきです。 これは、ICANN構造は以下のそれぞれについてポリシー策定チャネルを特別に提供することができるようにすべきであるということを意味しています。

  • スポンサー無しgTLDレジストリ
  • スポンサー付きgTLD レジストリ
  • ccTLDレジストリ
  • IPアドレッシングおよびAS番号
  • プロトコルポートおよびパラメータのレジストリ
  • DNSルートネームサーバー

 3つの支持組織およびRSSACによって、現在のICANNの構造は、 実際にこの種の分離を認めようとしています。 しかし、スポンサー無しgTLD、 スポンサー付きgTLDおよびccTLDに関するICANNの立場は非常に異なっており、 それぞれに適切なポリシー策定メカニズムを検討するよう助言しています。

 同様に、 IPアドレスおよびプロトコル番号の調整に関するICANNのポリシー策定の責務は多様であるので、 これらの2つの活動に関するポリシー策定チャネルが1つであるのは適切ではないかもしれません。 これが意味するところは、プロトコルポートおよびパラメータのレジストリについて、 IETFだけがそのポリシーを決定しており、 現在のプロトコル支持組織のその他のメンバーは行なっていないという認識に基づき対応しなければならないということです。

 第5に、ICANNの責務のうちのいくつかは、 ICANNの責務のあらゆる領域にまたがっており、 組織間を調整する何らかのメカニズムを必要とします。 典型的な例はセキュリティであり、これは現在のICANNの枠組みの中では、 諮問委員会が引き受け、 インターネットのネーミングおよびアドレス割り振りシステムにわたるセキュリティリスクを分析し、 調整の上での対応を勧告しています。

 第6に、十分に編成された構造および明確に定義された使命は、 ICANNが成功するために重要なものですが、そのどちらか一方だけでは、 ICANNが与えられたグローバルなポリシー策定の範囲内にとどまることを十分に保証するものではありません。 構造がいかに周到なものであっても、 ポリシー策定プロセスは新しい分野における新しいポリシー策定についての新しい要求に直面するでしょう。 どれほど慎重に作成しても、 使命に関する声明書には不可避的にあいまいな部分が残るでしょう。 構造および使命に関する声明書に依存することは、 人為的要因に対する思いやりによって抑制されなければなりません。 ICANN理事会、評議会、および委員会は、 資質の高い人々により構成されなければなりません。 それは、 ICANNの構造の手続き上のチャネルおよびその使命の実質的な限界を尊重しながら、 発生する諸問題を理解することができ、可能性のある解決策を評価する上で、 優れた、幅広い承認を得られるような判断を適用することができる人々です。 ICANN理事会のメンバーは、理事会の中で合意に達することができ、 日常の業務で関係のある特定の支持組織の利益ではなく、 より一般的な利益を追求することができ、意見を求め、 かつ理事会の協議の結果を説明できるよう、 効果的なコミュニケーションを図れることが重要です。

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