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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.660【臨時号】2009.7.30 ◆
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◆ News & Views vol.660 です
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JPNICは、国別インターネットレジストリとして、IPアドレスやAS番号などの
インターネット資源管理を行っています。こうした業務を通じて蓄積された数
的データを活かし、隔週で「数字で見るIPアドレス・AS番号に関する最新動
向」をお送りしています。
第3回となる本号では、「IPv6アドレスの割り振りおよび割り当てにおける動
向」をお届けします。第1回、第2回(*)の内容もぜひ併せてご覧ください。
(*)数字で見るIPアドレス・AS番号に関する最新動向
<第1回 IPアドレス管理指定事業者の動向>
http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2009/vol650.html
<第2回 IPv4アドレスの割り振りおよび割り当てにおける動向>
http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2009/vol655.html
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◆【特別連載】数字で見るIPアドレス・AS番号等に関する最新動向
<第3回 IPv6アドレスの割り振りおよび割り当てにおける動向>
JPNIC IP事業部 川端宏生
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IPv6は、現在のインターネットで多く利用されているIPv4をベースに改良を加
えた、次世代のインターネットプロトコルと言われています。JPNICでは、
2000年よりこのプロトコルを利用したIPv6アドレスの分配を行っています。
□IPv6(Internet Protocol Version 6)
http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-ij.html#02-Ipv6
IPv4アドレス在庫枯渇を目前に控えた現在、この問題の根本的な解決方法とし
て、IPv6アドレスの利用が挙げられています。JPNICからIPv6アドレスの割り
振りを受け、対応を進めているIPアドレス管理指定事業者(以下、IP指定事業
者)も増えてきているようです。そこで第3回となる今回は、このIPv6アドレス
の割り振りおよび割り当ての最新動向についてご紹介します。
JPNICでは2000年1月から2005年5月まで、IP指定事業者を対象として、APNICへ
のIPv6アドレス割り振り申請取り次ぎサービスを行っていましたが、この取り
次ぎサービスにおいてJPNICは、APNICへの申請取り次ぎのみを行っていまし
た。そのため、APNICより割り振りを受けたIPv6アドレスの情報や、IPv6アド
レスを割り当てたネットワークに関する情報は、JPNICデータベースへ登録し
ていませんでした。
しかし、多くのIP指定事業者からのご要望を受け、JPNIC内でIPアドレス登録
管理システムの準備を行い、2005年5月以降はJPNICにおいてIPv6アドレスに関
する申請処理受け付けやデータベース登録を行っています。
◆IPv6アドレス割り振り件数の動向
以下の表は、2005年5月以降のIPv6アドレス割り振り件数の推移です。なお、
IPv6アドレスは、1回の申請でIP指定事業者に/32(/48換算で65,536ネットワー
ク分)のアドレスブロックが割り振られます。/22(1,024アドレス)を最小単位
として、割り当てるネットワークの規模に応じて、細かな単位で割り振りが行
われるIPv4アドレスとは大きく異なります。
【IP指定事業者へのIPv6アドレス割り振り状況(2005年度~2008年度)】
---------------------+----------+----------+----------+----------+
2005 2006 2007 2008
---------------------+----------+----------+----------+----------+
IPv6割り振り件数 5 2 4 21
IPv6保有事業者数 65 67 70 90
---------------------+----------+----------+----------+----------+
この表からもわかるように、2005年度~2007年度までは1年に5件程度であった
IPv6アドレスの割り振り件数が、2008年度に入ってから21件と大きく増えまし
た。その結果、2008年度末時点でIPv6アドレスの割り振りを受けているIP指定
事業者数は、90となりました。2008年度末時点のIP指定事業者数は379ですの
で、約24%のIP指定事業者がIPv6アドレスの割り振りを受けていることになり
ます。
2008年度の割り振り件数がこれほど多くなったのは、大きく二つの原因が考え
られます。
一つは、IPv4アドレス在庫枯渇を見据えて、IPv6への対応を進めているIP指定
事業者が増えている点です。IPv6に対応したサービスの提供を可能と判断した
IP指定事業者が準備を進めていることがうかがえます。
もう一つは、IP指定事業者がIPv6アドレスの割り振りを受ける際の条件につい
て、見直しが行われた点です。これまでは、2年以内に200件以上のネットワー
クに対して割り当てを行うことが、条件の一つとなっていました。この「200
件の割り当て」が、IPv6アドレスの割り振りを受けるための大きな障壁であ
る、と考えるIP指定事業者は多く、JPNICやAPNICのオープンポリシーミー
ティングにおいて、条件の見直しに向けた議論が重ねられてきました。
議論の結果、2008年8月15日からは、この「200件の割り当て」という条件が見
直されました。IP指定事業者が既にIPv4アドレスを利用してサービスを提供し
ている場合、2年以内に1件以上の割り当てと、割り当てたIPv6アドレスをイン
ターネットに対して経路広告する予定であることを説明できれば、200件の割
り当てを行わなくても、IPv6アドレスの割り振りを受けられるようになりまし
た。この見直しにより、従来の基準では、IPv6アドレスの割り振り申請を躊躇
していたと思われるIP指定事業者から、6件の申請が行われました。
2008年度は約1/3を占めていた、IPv6アドレスの割り振り申請を躊躇していた
IP指定事業者からの申請は、2009年度には一段落し、割り振り件数は2007年度
までと同じ件数程度となるものと考えています。しかし、IPv6に対応したサー
ビスや機器の普及によって、IPv6の導入を考えるIP指定事業者が増えるようで
あれば、割り振り件数の大幅な増加も考えられます。
◇ ◇ ◇
◆割り振りを行ったIPv6アドレスの用途/サービスの動向
次に、現在割り振りを行っているIPv6アドレスの用途を、割り振りを行ったIP
指定事業者が提供するサービスを手がかりに集計したのが以下の表です。
【サービス別IPv6アドレス割り振り件数(2009年5月末時点)】
----------------------------------------------------------
分類 割り振り事業者数 構成比
----------------------------------------------------------
一般ISP(CATVインターネット以外) 49 51.04%
CATVインターネット 14 14.58%
インターネットデータセンター 21 21.88%
ホスティングサービス 4 4.17%
ASP/コンテンツプロバイダ 0 0.00%
学術機関・公共団体など 3 3.13%
その他(移動体通信事業者・IXPなど) 5 5.21%
----------------------------------------------------------
合 計 96 100.00%
----------------------------------------------------------
(注) IP指定事業者に割り当てられた資源管理者略称別集計の
ため、IP指定事業者数とは一致しません
IPv6アドレスの割り振りを受けているIP指定事業者全体の約66%が、インター
ネット接続サービスを提供しています。一方、ホスティングサービスを提供す
る事業者数は、4%と多くありません。それぞれの分類で割り振りを受けている
事業者の割合にばらつきがあるのは、サービス提供に必要な機器や技術のIPv6
対応状況とも関連があると思われます。
インターネット接続サービスの次に多いのは、インターネットデータセンター
を運用する事業者です。インターネット接続サービスと同様に、顧客が要望す
る前にIPv6対応を行っておく必要があること、サービス提供に必要な機器も
IPv6対応を始めていることなどが、割り振り件数の多さにつながっていると思
われます。
現在有効なIPv6アドレスポリシーでは、IPv6アドレスの割り振りを受けた事業
者が、顧客に対してIPv6アドレスの割り当てを行うことを想定しています。そ
のため、IPv6アドレスの割り振りを受けることのできる条件の一つに、「エン
ドサイトでないこと」という項目が含まれています。ASP/コンテンツプロバイ
ダの運用するネットワークでは、顧客への割り当てを行わないため、IPv6アド
レスの割り振りを受ける条件を満たすことができません。このような理由によ
り、ASP/コンテンツプロバイダで割り振りを受けているIP指定事業者が、0と
なっています。
しかし、IPv6アドレスの割り振りを受けることができない場合にも、他のIP指
定事業者より割り当てを受けることや、JPNICよりプロバイダ非依存アドレス
の割り当てを受けることにより、ASP/コンテンツプロバイダ等でもIPv6に対応
することは可能であると考えています。
学術機関・公共団体の分類では、IPv6への移行を研究するネットワークへの割
り当て、その他の分類では、先端研究やインターネットエクスチェンジポイン
ト(IXP)のネットワークにIPv6アドレスの割り振りが行われています。
以下の表は、提供サービス別のIP指定事業者総数と、IPv6の割り振りを受けた
IP指定事業者数を比較したものです。
【サービス別IPv6アドレス割り振り件数と割り振り率(2009年5月末時点)】
-------------------------------------------------------------------
分類 割り振り
全事業者数 事業者数 割り振り率
-------------------------------------------------------------------
一般ISP(CATVインターネット以外) 122 49 40.16%
CATVインターネット 118 14 11.86%
インターネットデータセンター 88 21 23.86%
ホスティングサービス 56 4 7.14%
ASP/コンテンツプロバイダ 14 0 0.00%
学術機関・公共団体など 12 3 25.00%
その他(移動体通信事業者・IXPなど) 11 5 45.45%
-------------------------------------------------------------------
合 計 421 96
-------------------------------------------------------------------
(注) IP指定事業者に割り当てられた資源管理者略称別集計のため、
IP指定事業者数とは一致しません
一般ISPの分類に該当するIP指定事業者の約40%、インターネットデータセン
ターに該当するIP指定事業者の約24%が、IPv6アドレスの割り振りを受けてい
ます。分類毎の割り振り率はまだ高くありません。CATVインターネットやホ
スティングサービスの分類に該当するIP指定事業者の割り振り率は、さらに低
くなり、10%程度となっています。
前述の【サービス別IPv6アドレス割り振り件数】のところでもご紹介したよう
に、顧客に対して、IPv6によるサービスを提供するという目的は同じでも、
サービス提供に必要な機器や技術のIPv6対応状況によって、割り振りを受けて
いる指定事業者の割合が変わってくる点は興味深い結果となりました。特定の
分野に偏りなく、すべての分野において、機器や技術の早急なIPv6対応が望ま
れます。
その他に特筆すべき点は、その他の分類に含まれるIXPです。IXPサービスを提
供するIP指定事業者の多くは、既にIPv6アドレスの割り振りを受けています。
IXPは、複数のネットワークが相互に接続されている拠点であり、接続事業者
のIPv6による接続への要請に応えられるよう、いち早く準備を進めているよう
です。
◇ ◇ ◇
◆IPv6アドレス割り当て件数の動向
ここからは、IP指定事業者に割り振りが行われたIPv6アドレスの利用状況
(JPNICデータベースへの登録状況)についてご紹介します。
ネットワークに対してIPアドレスを割り当てる場合には、そのIPアドレスに関
するネットワーク情報をJPNICデータベースに登録する必要があります。以下
の表は、JPNICデータベースに登録されたIPv4アドレスおよびIPv6アドレスの
割り当て先に関する情報(ネットワーク情報)の件数をまとめたものです。
【年度毎のIPアドレスの割り当て件数(2005年度~2008年度)】
---------------------+----------+----------+----------+----------+
2005 2006 2007 2008
---------------------+----------+----------+----------+----------+
IPv4割り当て件数 91,285 40,584 82,561 102,559
IPv6割り当て件数 3,646 6,293 5,280 4,622
---------------------+----------+----------+----------+----------+
IPv4アドレスでは、ネットワーク情報の登録数が年々増えるとともに、IPアド
レスの割り当て先に個人名が含まれるケースが多くなっているようです。各家
庭のネットワークに対して、例えば/29(8アドレス)のように、まとまった数の
IPv4アドレスが割り当てられるケースが増えてきていることも理由の一つと
なっています。
一方、IPv6アドレスに関するネットワーク情報の登録数は、IPv4アドレスに比
べて4%~15%程度となっています。内訳は、IP指定事業者自身や企業、学術機
関が運用するネットワークとなっており、IPv4アドレスのように各家庭のネッ
トワークに対して割り当てられるケースは少ないようです。
IPv6アドレスは、利用できる個数がIPv4アドレスと比べて桁違いに多いという
特長を生かして、家電や自動車など、今までインターネットの利用を想定して
いない分野への応用が期待されています。これらの分野でもインターネットが
積極的に利用され、パソコンをはじめとする情報機器以外にもIPv6アドレスが
割り当てられるようになれば、IPv6アドレスのネットワーク情報の登録数も増
えてくるのではないでしょうか。
◆最後に
これまで3回にわたって、IP指定事業者やIP指定事業者に分配するIPv4および
IPv6アドレスに関する動向をご紹介してきました。JPNICでは、IP指定事業者
以外に対してもIPアドレスやAS番号の分配を行っています。これらのうち、
次回は、「JPNICが管理するプロバイダ非依存アドレスの分配状況」について
ご紹介する予定です。
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わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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