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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1899【臨時号】2022.1.27 ◆
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◆ News & Views vol.1899 です
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2021年11月8日(月)~12日(金)にかけてオンラインで開催された第112回IETF
ミーティングの報告を、vol.1893より連載にてお届けしています。第2弾とな
る本号では、Webを中心に実利用が進みつつあるHTTPおよびQUICを中心に、標
準化の動向をご紹介します。
なお、本号の内容は、JPNICブログでもご覧いただけますので、可能な方はぜ
ひそちらでご覧ください。
JPNICブログ:IETF標準化報告 [第2弾]
~2022年の、HTTP・QUIC関連の標準化トピック~
https://blog.nic.ad.jp/2022/7165
また、vol.1893でお届けした第112回IETFの概要に関するレポートについて
は、下記のURLからバックナンバーをご覧ください。
□IETF標準化報告
○[第1弾] ~IETF 112より~ (vol.1893)
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2021/vol1893.html
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◆ IETF標準化報告 [第2弾] ~2022年の、HTTP・QUIC関連の標準化トピック~
グリー株式会社 開発本部 / インフラストラクチャ部 後藤ひろゆき
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今回は、2021年を振り返りながら、2022年に標準化が行われるトピックにつ
いて紹介していきます。
2021年はWebを中心に、HTTP/3やQUICの実利用が進みました。IETFの取り組み
としては、QUICは2021年5月にRFC 9000として公開されました。HTTP/3も、標
準化が最終段階となっています。このように、QUICやHTTP/3のコア部分の取
り組みはほぼ終わっており、それらの拡張仕様や、発展的な仕組みづくりが
行われました。
それでは、関連するIETFワーキンググループごとに紹介していきます。
■ QUIC WG
先述の通り、QUIC Version 1 (QUIC v1)が、RFC 9000として標準化が完了し
ています。現在、QUIC WGでは、いくつかの拡張仕様に取り組んでいます。
それらは、QUICのパフォーマンスを向上させるものや、QUICの次のバージョ
ンを見据えた取り組みになっています。
大きなトピックの一つとして、「Multipath Extension for QUIC」(*1)が挙
げられます。これは、Multipath TCPのように複数経路を利用してコネクショ
ンを確立するという仕様です。もともとは、QUIC WGのチャーターにもトピッ
クの一つとして上がっていましたが、仕様が複雑だという難点がありました。
QUIC v1の標準化が進み、2021年は再びMultipathのユースケースや要件の整
理が行われました。2022年には、正式にWGアイテムになることが予想されま
す。
もう一つの大きなトピックとして、「Compatible Version Negotiation for
QUIC」(*2)、「QUIC Version 2 (QUIC v2)」(*3)があります。これらは、将
来のQUICバージョンを見据えた準備になります。具体的には、バージョンネ
ゴシエーションの仕組みを設けること、新しいQUICバージョンがインターネッ
ト上でディプロイできることを確認する、という取り組みです。QUIC v2は、
機能的にはQUIC v1とまったく同じですが、このQUIC v2を利用して、バージョ
ンネゴシエーションやディプロイ性の確認を行う目的で、標準化が進められ
ています。
2022年は、QUICの拡張仕様の議論が進むことでしょう。
(*1) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-lmbdhk-quic-multipath/
(*2) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-quic-version-negotiation/
(*3) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-quic-v2/
■ HTTP WG
2021年、HTTP WGは比較的穏やかに進行しました。IETFの本会合でもセッショ
ンを行わず、WGの中間会議を重ねてきました。主な取り組みとしては、HTTP
Coreと呼ばれているドキュメント群の標準化です。これは、HTTP/1.1 (RFC
7231)の仕様からHTTPセマンティクスを分離し、HTTP/2やHTTP/3の仕様から独
立して参照できるようにするという作業です。
このHTTP Coreの仕様群も「HTTP Semantics」(*4)、「HTTP Caching」(*5)、
「HTTP/1.1」(*6)として、標準化の最終段階になっています。RFC Editor
Queueに先に入っていたHTTP/3も、HTTP Semanticsの仕様に依存しているた
め、これらの仕様は2022年にRFCとして公開されるのではないかと思います。
その他にも、Cookieの仕様や、HTTPメッセージの優先度制御の仕組みなどの
取り組みが進められています。
2022年はHTTP/3の標準化とともに、引き続きHTTPのメンテナンス作業が行わ
れるでしょう。
(*4) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-httpbis-semantics/
(*5) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-httpbis-cache/
(*6) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-httpbis-messaging/
■ WebTransport WG
WebTransportは、比較的新しいWGです。まず簡単に、WebTransportとは何な
のか説明します。
もともとWebでは、HTTP上で双方向のアプリケーションデータのやり取りを行
うために、WebSocketという仕組みが利用されていました。そういった中で現
在、HTTP/3というプロトコルが出てきました。HTTP/3はQUIC (UDP)上で動作
し、仮に経路上でパケットロスやパケットの順番が入れ替わったとしても、
それ以外の受け取ったパケットについては、処理を進めることができます。
このHTTP/3の特性を、Webでの双方向アプリケーションデータのやり取りに活
かしたいというのが、WebTransportという新しい仕組みのモチベーションに
なります。
特に、パケットロスがあったとしても、再送をしないアプリケーションデー
タの送信というのは、今までのHTTPではできないことです。
2021年、このWebTransportは下位層にQUICを使うか、HTTP/3を使うかという
議論が行われていました。議論のすえ、HTTP/3を利用したもの(*7)の標準化
を進めるコンセンサスが得られました、また、合わせてHTTP/2を利用するも
の(*8)も、標準化をすることに決まりました。
WebTransportは、すでに一部のブラウザで実装が進められており、2022年は
WebTransportの実利用および仕様のブラッシュアップが行われるでしょう。
(*7) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-webtrans-http3/
(*8) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-webtrans-http2/
■ Masque WG
Masque WGも、比較的新しいWGです。Masqueは、Multiplexed Application
Substrate over QUIC Encryptionの略であり、確立したHTTPコネクション(主
にHTTP/3を想定)上で、別の通信をトンネリングする仕組みの標準化を行って
います。例えば、Masque ProxyサーバにHTTP/3コネクションを確立した後に、
そのコネクションを利用し、UDPパケットをProxyしてもらうといったユース
ケースを検討しています。
また、AppleのPrivate RelayがこのMasqueの仕組みを使って、第三者のWeb
サービスに対してユーザーのIPアドレスを隠すサービスを展開していること
もあり、比較的ホットなトピックになっています。
2021年は、UDPパケットを転送する仕組み(*9)、IPパケットを転送する仕組み
(*10)などの議論を行い、それぞれWGアイテムとなっています。2022年は、引
き続きこれらの仕様のブラッシュアップ作業が進められるでしょう。
(*9) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-masque-connect-udp/
(*10) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-masque-connect-ip/
■ Media over QUIC
Media over QUICは、まだワーキンググループにすらなっていませんが、IETF
本会合中にサイドミーティングが行われるなど、比較的ホットなトピックで
す。
その名の通り、QUIC上でメディアデータをどのように転送するか議論を行っ
ています。ライブメディアでは、いかに速く配信者から動画を受け付け、視
聴者に届けるかが重要なポイントになります。そこでQUICを利用できないか
というのが、モチベーションになっています。
2021年は、ライブメディアを扱うステークホルダ間で、要件やユースケース
の取りまとめが行われました。一方で、FacebookやTwitchでは、すでにそれ
ぞれ独自の方法で、Media over QUICを行っている旨共有されています。関心
を持つ企業は多いですが、いくつかのユースケースがあり、まだ方向性は固
まっていません。
2022年は、関心を持ついくつかの企業から、具体的な実装や提案仕様などが
出てくるのではないでしょうか。それらを出発点に、標準化の方向性も見え
てくることでしょう。
■ おわりに
2021年は、やはりQUICの標準化が大きなトピックでした。QUIC v1の標準化が
完了するとともに、ここまで紹介したように、QUICやQUICを利用するHTTP/3
の応用の議論が多く行われました。
2022年は、2021年に上がった議論をもとに、それぞれのトピックが標準化に
向かう年になりそうです。まだまだ、熱いトピックですので、興味のある皆
様は、関連するWGの議論を覗いてみてはいかがでしょうか。
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