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【 1 】特集 「ENUM研究グループ報告書完成」
JPNIC 企画課 根津智子
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ENUM(tElephone NUmber Mapping)とは、電話番号を用いて、インターネット
上のサービスを識別する仕組みです。具体的にいうと、電話番号をまずドメイ
ン名の形に変換し、それをDNS(Domain Name System)で、相手のURI
(Uniform Resource Identifiers)と対応づけます。それによりそのURIで指
定されたアプリケーション、たとえばIPネットワーク上の電話やメールなどに
接続することが可能になります。
我国では、総務省「IPネットワーク技術に関する研究会」においてIP電話の実
装手段の一つとして紹介されたことを契機に、幅広く注目を集めることになり
ました。
JPNICでは、日本の実情に即したENUMの管理運用方式や技術標準を民間の主導
にて提案することを目的として、「ENUM研究グループ」を昨年の9月に設立し
ました(詳しくは JPNIC News & Views vol.39
http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2002/vol039.html をご参照下
さい)。その後本年5月までの間、23会員の方々と研究会、分科会等の活動を
通してENUMの実現方式や運用方式、関連する技術的課題の検討を行ってきまし
た。5月23日にこの研究会活動の集大成として「ENUM研究グループ報告書」が
完成しましたので、その概要をご紹介いたします。
◆第1章 はじめに
この研究会を始めてまず最初に解決しなければならなかった課題は、関連
用語の統一です。ENUMがIETFとITU-Tを舞台にして並行して検討が進めら
れている状況を反映して、本研究会でもインターネット、電話の両業界の
有識者が会することになりました。隣接業界とはいえ、双方の間には技術
用語の解釈には微妙な隔たりがあり、今後技術的な議論を掘り下げていく
ためには関連用語の再定義からスタートするべきと考え、統一用語集を編
纂しました。
◆第2章 ENUMの概要
ENUM動作例や仕様、DDDS(Dynamic Delegation Discovery System)、
Tier構造とDNSのゾーン構造についてまとめました。また、関連団体の活
動概要としては、各国のENUMトライアルの状況についても言及しています。
◆第3章 ユーザENUMとオペレータENUM
全研究会活動を通じて最も時間と労力を費やしたテーマであり、本報告書
の一番の成果ではないかと自負する部分です。これまでさまざまな立場か
らの接続場面を想定して混然と議論されていたENUM自体を、世界で初めて
「オペレータENUM」と「ユーザENUM」という二つのENUMに整理し、類型化
することを試みました。
日本ではIP電話サービスのルーティングの一手段としてENUMに注目が集まっ
ていますが、この場合のように電話番号の割り当てを受けている事業者が
主体となり、自社サービス提供の意図でENUMレコードを設定する場合は
「オペレータENUM」と定義します。
一方、電話番号を利用しているユーザ自身が主体となり、自らの意志で接
続したいアプリケーションを特定し、ENUMのレコードを登録する場合は
「ユーザENUM」と呼びます。ENUMをこのように登録主体別に二分化したこ
とにより、主な検討課題であった、ENUMによって解決できるもの(できな
いもの)の明確化や登録モデルの策定、またセキュリティ対策についても、
それぞれの視点から体系的にまとめることが可能となりました。
◆第4章 ENUM導入によって期待されるもの(解決が期待されるもの)
前章で定義した「ユーザENUM」「オペレータENUM」のモデルを、インター
ネット電話および既存の電話への着呼等の実装例に発展させ、各々の場合
に実現できる番号解決スキームに関して考察しました。
◆第5章 SIPとSIPのENUM対応
インターネット電話で主流となることが期待されるセッション確立のため
のプロトコルであるSIP(Session Initiation Protocol)の概要とSIPサー
ビスのENUM対応等について述べています。
◆第6章 ENUM登録の流れ
ITU-Tで定義されているENUMのレジストリ・レジストラモデルや、一般的
なレジストリ・レジストラモデルの登録管理手順・情報をまとめたうえで、
ENUMで想定されるさまざまな登録手順のバリエーションを提示しています。
◆第7章 個人情報保護とセキュリティ、信頼性
ENUMのセキュリティについては、ENUM固有の課題もありますが、DNSに起
因する課題、ENUMを含むコミュニケーションサービスに関する課題、イン
ターネット上のネットワークシステムに起因する課題もありますので、そ
れらを分類し、問題点を整理しています。
◆第8章 最後に
本研究会では、ENUMの実装における技術面での可能性とその課題をテーマ
として活動してきました。実際にサービスとして提供するまでには、これ
以外にも現行の電気通信事業法等代表される制度面の課題や、課金等のビ
ジネス面での課題の検討を併せて進めることが必要となります。
◆附録
インターネット業界の人にはなじみの薄い電気通信番号(電話番号)とそ
の規則についての解説と、研究グループのメンバーの名簿を掲載していま
す。
最後になりましたが、約9ケ月にわたり研究会活動にご尽力いただいた関係者
の方々には、この場を借りてご協力に感謝いたします。
□「ENUM研究グループ報告書」について詳しくご覧になりたい方はこちらから
http://www.nic.ad.jp/ja/enum/report/enum-report2003.pdf
□ENUMとは何か知りたい方はこちらから
JPNIC Newsletter No.21「インターネット10分講座●ENUMとは」
http://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No21/080.html