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ニュースレターNo.56/2014年3月発行

モンテビデオウィークを終えて

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2013年9月30日(月)から10月4日(金)までの1週間、私は南米ウルグアイの首都モンテビデオに出張していました。目的は、NRO ECおよび I*(アイスター)の合宿検討会合に参加することでした。本稿では、これらの団体に関してご紹介するとともに、会合の内容を取り上げます。なお、それぞれの会合内容に関しては、基本的に公開を前提としたものではないため、概要のご紹介になります。

NRO EC合宿検討会合

NROは「Number Resource Organization」の略で、五つの地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の連合体です。ICANN (The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)や他の団体に対して、IPアドレスやAS番号を管理するレジストリの立場を代表する機能を有しています。特にICANNの中では、2004年に取り交わしたASO-MoUによって、NROがICANNのアドレス支持組織(ASO; Address Supporting Organization)の役割、責任、機能を遂行することが定められています。

その中でEC (Executive Council)は、NROの意思決定を行うグループで、五つのRIRのCEOをメンバーとして構成されます。私はアジア太平洋地域のRIRであるAPNIC (Asia Pacific Network Information Centre)の理事を拝命していますが、その中で、APNICにおける議長とともにNRO ECオブザーバも仰せつかっています。そのため、今回この合宿検討会に参加したということです。

NROは、5RIRを代表して他団体に対応することと、5RIRの協調活動を行うことを目的としていますが、専任のExecutive Secretaryを1人置く以外、すべての活動はRIRの職員が分担で行っています。世の中に対しても、NROよりも各RIRの方が名前が通っているのが実情で、NROとしてのアイデンティティが確立していないという状況にあります。そういう中で、今回の合宿検討会合は、戦略計画立案を目標として、外部コンサルタントをファシリテータに、ワークショップ形式で、9月30日(月)、10月1日(火)の2日間にわたって開催されました。

ワークショップは、NRO ECメンバーであるRIRのCEO以外にも、オブザーバ、随行した各RIRの職員も参加しました。全体検討でも積極的に発言が求められ、小グループに分かれた作業も行いながら「強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)」といったそれぞれの側面から分析する、SWOT分析による戦略領域の検討、ビジョン(理想像として追い求める目標)、ミッション(現在全うするべき使命)の検討を行いました。

私はNROが創設された2003年には既にAPNIC理事を務めていましたが、2日間にわたる集中的な検討で、今に至るまで気づかなかったさまざまな点に気づくことができ、NROがどういうものであるか、何を志向するべきなのか、かなり明確な考えを持つことができるようになりました。今回策定したビジョンとミッションは、正式な採択手順を経て、後日公開される予定です。

I* (アイスター)合宿検討会合

I* (アイスター)は、一般的にはなじみのない言葉だと思いますが、インターネット基盤の技術調整などを行う団体のグループを指し、現段階で、ISOC (Internet Society)、IAB (Internet Architecture Board)、IETF (Internet Engineering Task Force)、IANA (Internet Assigned Numbers Authority)、ICANN、W3C (World Wide Web Consortium)、および五つのRIRの計11組織が参加しています。InternetのIを頭文字にするところが多いことから、Iの後にワイルドカードの*(アスタリスク)を置き、I*(アイスター) と呼んでいます。I*11団体の代表者は、年1、2回会合を持ち情報交換を行っていますが、これをNROの会合に合わせて、10月2日(水)と3日(木)、モンテビデオにて行いました。

会合は、各団体からの情報共有から始まり、以下の内容がそれぞれ報告されました。

RIR NRO共同で行った、Global IPv6 Deployment Monitoring Surveyの結果
IETF 最近米国の国家安全保障局(NSA)がPRISMと呼ばれるプログラムで実施しているらしいことが明るみに出た、pervasive tracking(情報行動追尾)に関するIETF内での議論の状況
W3C マーケティング用途でのtrackingに対する対策を検討する、Tracking Protection Working Groupに関する状況
ICANN 最近国際電気通信連合(ITU; International Telecommunication Union)会議体などで議論が盛んな、インターネットガバナンスの状況

これらはどれも、現在のインターネットにおいて、大きな懸念を持たれている重要課題です。IPv6の普及は、日本でも大手ISPが新規顧客に対してIPv6/IPv4デュアルスタックで提供し始めるなど徐々に浸透していますが、コンテンツ、サービスサイドでの取り組みは停滞している状況です。情報行動追尾は、情報ブロッキングと併せて、利用者にインターネットに対する懐疑心を引き起こしています。インターネットガバナンスの議論は、ITUなどの会議体で堂々巡りの議論を繰り返すばかりの印象が強く、打開策が望まれています。

そこで、会合に参加した団体トップたちは、これらの重要課題に対して積極的に取り組む意志を明確にし、I*(アイスター)11団体共通の姿勢を示す声明文を発表するべきだということになりました。I*(アイスター)会合でこのような声明が出されるのは、初めてのことです。

この声明文は、「今後のインターネット協力体制に関するモンテビデオ声明」と名付けられ、現地における草案検討の後、各団体における承認プロセスを経て、2013年10月7日(月)に発表されました。JPNICでは、既にこの声明文を、和訳とともにWebでお知らせしています。

インターネット関連10団体が「今後のインターネット協力体制に関するモンテビデオ声明」を発表
(現在、IANAはICANNの一部局であるため、10団体となっています)

初めての声明発表に至ったということもありますが、インターネット基盤の運営をリードする団体のトップによる2日間の議論は、非常に密度が濃く、充実したものでした。

写真:インターネット各団体のCEOらの記念撮影
● インターネット各団体のCEOらの記念撮影

滞在記

モンテビデオは、ラテンアメリカとカリブ海地域のRIRであるLACNIC (The Latin American and Caribbean IP address Regional Registry)がオフィスを構える場所で、これらの会合はLACNICオフィスから至近のホテルで開催されました。LACNICオフィスは、中南米地域のインターネット諸団体もオフィスを構える、“Casa de Internet de Latinoamérica y el Caribe”(ラテンアメリカとカリブのインターネットの家)にあり、海岸に面した開放的な雰囲気が漂うオフィスです。10月2日(水)の夕方は、I*(アイスター)関係者と地元のインターネット関係者が一堂に会したレセプションが行われ、歓談の輪が広がっていました。この建物を建設する時点で、こうしたレセプションも収容できるように作ってあるのです。Casa de Internetは、“Internet Hub for Latin America and the Caribbean”と英訳されますが、まさにインターネット関係者みんなが集まるハブとして機能していることが分かります。NRO EC、I*(アイスター)を通じて、この1週間、LACNICの会議参加者に対するもてなしは素晴らしく、Casa de Internetを含め、LACNICのホスピタリティに感銘を受けた1週間でもありました。

写真:Casa de Internet
● LACNICのオフィスが入居する、Casa de Internet

参考

(JPNIC インターネット推進部 前村昌紀)

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