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ニュースレターNo.63/2016年7月発行

APRICOT 2016/APNIC 41カンファレンス報告 アドレスポリシー関連報告

2016年2月15日(月)〜26日(金)にわたり、APRICOT 2016/APNIC 41カンファレンスがニュージーランドのオークランドで開催されました。ニュージーランドはちょうど真夏の観光シーズンにあたり、また、スーパーラグビーのシーズン開幕直後ということもあって、現地に向かう飛行機や空港の入国審査場は、観光旅行やラグビー観戦目当てと思われるツアー客でごった返していたのがとても印象的でした。

主催者からの報告によると、53の国や地域から654名の参加登録があり、そのうち531名が実際に会場に足を運んだとのことでした。本稿では、このAPRICOT 2016/APNIC 41カンファレンスの様子を、アドレスポリシーの動向を中心にご紹介します。その他の動向については、概要と詳細なレポートへのURLをご紹介していますので、そちらも併せてご参照ください。

カンファレンスの構成について

APRICOT 2016/APNIC 41カンファレンスではこれまでと同様に、会期を大きく二つに分けてプログラムが構成されました。

会期前半のワークショップは、BGPやMPLSといったトピックについて、業界の第一人者から話を聞きながら、ハンズオンなども含めた演習形式で行われます。

後半は、IRR、DNSやアドレス管理といった、ネットワークの運用者にとって基礎的な内容に関するチュートリアルのほか、「APOPS (Asia Pacific Network Operators Forum)」「SIG (Special Interest Groups)」「BoF (Birds of a Feather)」「AMM (APNIC Member Meeting; APNIC総会)」などの会議・セッションで、各種の最新動向の報告やポリシーに関する議論などが行われます。

各プログラムの内容や、その際に利用された資料の大半は、Webサイトで参照できます。発表資料や質疑応答をまとめた発言録、当日の発表風景の映像・音声などが公開されています。

今回はこれらのプログラムの中から、アドレスポリシーに関する議論を中心にご紹介します。

ポリシーに関する議論について

今回のアドレスポリシーSIGでは、これまで継続議論となっていた1点のポリシー提案について、議論が行われる予定でした。しかし、カンファレンス直前に、提案者から提案を取り下げとする旨の発表がありました。

そのため提案としては議論は行いませんでしたが、提案の背景となった問題点を共有し、今後の検討につなげることを目的として、議論の時間が設けられることとなりました。

ここでは、提案の内容をご紹介します。取り下げとなってしまいましたが、ポリシー提案が行われた背景や、これまでのAPNICカンファレンスではどのような議論が行われたかについては、ニュースレターのバックナンバー※1を併せてご覧ください。

・WHOISでの詳細な割り当て情報の登録(提案番号:prop-115)

提案者 廣海緑里氏/藤崎智宏氏
概要 IPv4では「ポート番号」を、IPv6では「割り当てアドレスサイズ」の情報をWHOISに追加し、これらの情報でも登録情報を検索できるようにする。
(提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-115
結果 ポリシーSIG MLでの継続議論

提案ではIPv4とIPv6の両方を対象としていましたが、今回の議論では、IPv6のみを対象とすることについて、会場の参加者からの意見を求めたところ、特段のコメントはありませんでした。またその後の議論でも、IPv6に関するコメントがほとんどを占めており、IPv6についてフィルタリング情報を提供することには意味があるものと考えている人が多かったのではないでしょうか。

また、提案内容自体を正しく理解をしている人が少なく、実際のフィルタリング方法についての議論となる場面もありました。いくつかのやり取りの結果、フィルタリング方法について議論を行うことが提案の目的ではないことが理解されたようでしたが、議論を深めるためにはまだまだ時間が必要ではないかという印象を持ちました。

最後に、この議論を今後も進めるかどうか、挙手による確認が行われたところ、反対を表明する人が多く見受けられました。これらの確認の結果を踏まえて、今回議論された内容をどのように取り扱うかについては、提案者が今後検討することになっています。

WHOISの正確性向上について

今回のアドレスポリシーSIGでは、今回ご紹介したフィルタリング情報の提供に関する議論のほかにも、WHOISの正確性向上に対するAPNIC事務局での取り組みを紹介するセッションが設けられていました。

APNICでは、提案の提出から実装までの一連の流れをポリシー策定プロセスとして定めています。今回のAPNICカンファレンスの開催にあたっても、このプロセスに従い、WHOISの正確性向上のための提案が提出されたそうです。チェアによる確認の過程で、準備不足の部分もあったとのことで、提案者と相談した結果、提案としては議論されないこととなりました。しかし、チェアとAPNIC事務局で相談した結果、関連する話題をAPNIC事務局から紹介することとなったようです。提案者がこのセッションで出たコメントなどを踏まえて、次回のAPNICカンファレンスで再度提案を行うことも想定されます。

APNICと同じくJPNICにおいても、WHOISによる情報提供を行っていますので、APNICでの取り組みにも非常に注目しています。セッションでの具体的な内容のご紹介はここでは省略しますが、ポリシーワーキンググループにより開催されるJPNICオープンポリシーミーティングにおいて、APNICカンファレンスの報告を行う予定です。ご興味のある方はぜひご参加いただければと思います。

オープンポリシーフォーラム
http://jpopf.net/

IPv4アドレス移転に関するセッションについて

APNICカンファレンスに参加される方の中には、IPv4アドレス移転に関する動向に関心をお持ちの方も多いかと思います。ここ数回のカンファレンスでは、IPv4アドレス移転に関するセッションが設けられています。

今回も「Making ends meet: IPv4 exhaustion and the transfer market」と題するセッションが設けられました。このセッションは、IPアドレスの管理組織や仲介事業者など、IPv4アドレス移転に関係する組織の担当者をパネリストに迎えて、それぞれの立場からの報告と議論で構成されています。

APNICでは現在、北米地域のARINおよびヨーロッパ地域のRIPE NCCとの双方向のIPv4アドレス移転を可能としています。APNICの移転履歴からも、ARINとの移転はAPNICへの流入がほとんどを占めており、/24 (256アドレス)や/22 (1,024アドレス)といった単位ではなく、/16 (65,536アドレス)単位で移転するケースが多いことがわかります。ARIN地域では、歴史的経緯から、他の地域よりも多くのIPv4アドレスが管理されており、このIPv4アドレスがAPNIC地域に流入しているようです。JPNICにおいても、特に/16よりも大きなIPv4アドレスの移転において、ARIN地域のIPv4アドレスが流入してくるケースが最近増えてきています。

また2015年9月24日には、ARIN地域における通常在庫が枯渇※2したため、ARIN地域内での移転についても、これまで以上に活発になることが想定されていました。

ARINのJohn Curran氏からは、ARIN地域における通常のIPv4割り振り件数は減少する一方、IPv4アドレス移転は増加傾向にあることが報告されています。仲介事業者であるSandra Brown氏からは、2015年9月以降、ARIN地域における移転IPv4アドレス数が増加していること、/16を例にした場合の取引価格が上昇傾向にあることが報告されています。同じく、仲介事業者であるGabe Fried氏からも、時期的な変動要素はあるものの、2015年9月以降の移転件数は増加傾向にあることが指摘されています。

移転価格、IPv4アドレスと地理的情報(ジオロケーション)、経路情報のフィルタリング、ハイジャッキング(割り当て先組織以外の不正利用)、SPAMに関するデータベース(ブラックリスト)など、技術的な面だけ見ても、IPv4アドレス移転に関して考える必要のある課題は多岐にわたります。1時間半のセッションでしたが、質疑が尽きることなく終了しました。

セッション中、APNIC地域における分析や事例紹介が少なかった点が残念でしたが、今後開催される同様のセッションでは、APNIC地域のIPv4アドレスの実態について取り上げられることを期待しています。

APNIC Annual General Meetingについて

APNIC 41カンファレンスの最終日には、APNIC Annual General Meeting (AGM)が開催されました。AGMでは、APNICの活動内容に関する報告、APNIC 41カンファレンス期間中に開催されたSIGや各種セッションの報告、次回のAPNIC 42カンファレンスの紹介などが行われました。

通常、春に開催されるAPNICカンファレンスでは、APNIC理事会メンバー(EC)を選出するための選挙が行われます。ECの任期は2年となっており、1年ごとに半数が改選となります。今回の選挙では7名が立候補しており、その中から3名が選出されました。

候補者のプロフィールは、APNICのWebサイトで事前に公開されますので、会員の多くはその内容を参考にして、前日までに専用ポータルサイトからオンライン投票を済ませます。AGM当日の候補者自身によるスピーチを確認してから投票する会員や、他の会員からの委任を受けて投票する場合には、紙の投票用紙が利用されます。

今回選出された3名に加えて、今回の改選対象には含まれない4名、およびAPNIC事務局長の8名で、APNIC理事会の新体制がスタートしています。

APNIC理事会の新体制は以下の通りです(括弧内は現在の所属および出身国・地域)。任期やECメンバーのプロフィールはAPNICのWebサイトに掲載されています。

※ ☆は今回新任のEC
・Gaurab Raj Upadhaya氏(Limelight Networks:ネパール)
・James Spenceley氏
(Vocus Communications Limited:オーストラリア)
・Jessica Shen氏(CNNIC:中国)
・Kam Sze Yeung氏(Akamai Technologies:香港)
・Kenny Huang氏(TWNIC:台湾)
・Paul Wilson氏(APNIC事務局長:オーストラリア)
・Rajesh Chharia氏
(Internet Service Providers Association of India:インド)
・Roopinder Singh Perhar氏
(Netplus Broadband Services Private Limited:インド)

2000年10月以来ECを務めていたJPNICの前村は、APNIC 41カンファレンスをもって退任しました※3。退任にあたってのスピーチで感極まる前村に、会場参加者からは惜しみない拍手が送られました。また、前村から日本のみなさまへ向けての、メッセージへのリンクも次ページにてご紹介していますので、そちらも併せてご覧いただければと思います。

次回APNICカンファレンスについて

次回のAPNIC 42カンファレンスは、2016年9月29日(木)〜10月6日(木)に、バングラデシュ・ダッカで開催されます。また、次回APRICOTとの共催となるAPRICOT 2017/APNIC 43カンファレンスは、2017年2月20日(月)〜3月3日(金)に、ベトナム・ホーチミンでの開催が予定されています。

セッションの合間やレセプションなどの時間には、参加者同士で情報交換を行っている姿をよく目にしました。アジア各地の情報を手に入れるには、絶好の機会かもしれませんね!メールマガジンやブログではなかなかお伝えすることが難しい会場での雰囲気を、ご自身で感じ取ってみてはいかがでしょうか。

写真: SkyCity Convention Centre
● 会場となったSkyCity Convention Centre

(JPNIC IP事業部 川端宏生)


※1 prop-115に関する過去の議論
APRICOT 2015におけるAPNIC 39カンファレンス報告
https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No60/0610.html
APNIC 40カンファレンス報告
https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No62/0610.html
※2 北米地域レジストリにおけるIPv4アドレス在庫枯渇のお知らせ
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2015/20150925-01.html
※3 前村昌紀のAPNIC EC (理事)退任および次期EC選挙結果のお知らせ
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2016/20160226-01.html

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