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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.725【定期号】2010.3.15 ◆
_/NIC
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◆ News & Views vol.725 です
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2009年2月のICANN理事会での決議を受け、ルートゾーンスケーリングに関す
る調査がICANNにより実施され、同年9月に調査報告書が完成し、その後11月
末まで意見募集に付されました。
本号では、その調査の過程と、意見募集の際にも多くのコメントが寄せられ
た完成した報告の問題点について詳しく解説します。
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◆ 目次
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【 1 】特集 「ICANNでのルートゾーンスケーリング調査について」
【 2 】News & Views Column
「IPv4アドレス在庫枯渇とIPv6インターネットに向けて準備すべき
こと」
株式会社ネットワークバリューコンポネンツ 松本直人氏
【 3 】インターネット用語1分解説
「Bogonとは」
【 4 】統計資料
1. JPドメイン名
2. IPアドレス
3. 会員数
4. 指定事業者数
【 5 】イベントカレンダー
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【 1 】特集 「ICANNでのルートゾーンスケーリング調査について」
JPNIC インターネット推進部 山崎信
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ルートゾーンスケーリング(*1)とは、DNSSECの導入、DNSサーバへのIPv6アド
レス付与、IDN ccTLDおよび新gTLDの追加などによりルートゾーンが拡張され
ることによる影響を指します。
本稿では2009年にICANNによって行われた、DNSSEC(*2)や新gTLDに関連するルー
トゾーンスケーリング調査について、掘り下げてお伝えします。
(*1) JPNIC News & Views「インターネット用語1分解説(vol.712)」
http://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/rootzone-scaling.html
(*2) http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-ah.html#01-DNSSEC
■調査の経緯
2009年2月のICANN理事会決議(2009-02-03-04)(*3)で、同月中のルートゾーン
スケーリング調査に関する委任事項(Terms of Reference; ToR)の作成と、同
年5月15日までの報告および勧告の提出を、理事会に対して行うことが定めら
れました。
ToRには、主に提出物として何を記載すべきか詳細に記述されています。その
中で、本調査の主要な成果物は、ルートサーバシステムの各部分がどのよう
に関連しているのかを示す作成されたモデルであるとうたっています。この
モデルを作成することで、各変数を変化させた場合にどのような結果になる
かが予想できるとしており、このモデルは定量的であればあるほどよいとさ
れています。提出物について規定している部分では、TLD数が「数百から1万
まで」「1万から30万まで」「30万以上」の三つの場合に分けて、それぞれの
場合における影響を推定するよう求めています。
ToRの発行は大幅に遅れ、同年5月5日付で発行されました。発行のアナウンス
(*4)は5月29日付でなされ、7月31日まで意見募集に付されました。
次に、ICANNシドニー会議の一環として、6月22日に本件に関して調査チーム
(Study Team)および運営グループ(Steering Group)の一部メンバーが、プレ
ゼンテーションを行いました。
その後、9月18日付で報告書完成のアナウンス(*5)があり、11月29日まで意見
募集に付されました。調査チーム名で提出されたこの報告書(*6)には、要旨
にて次の2点が示されています。
- DNSSEC、新TLD、IDN、およびIPv6アドレスを同時にルートに追加すること
に伴うリスクは、現在のルートサーバ運用の仕組みを変えることによって
のみ対処可能
- 今の仕組みを変えずに優先順位をつけて導入するとすれば、DNSSECがその
他の三つに先駆けて導入されるべき
この結論を出した根拠は、ルートサーバオペレーターに作業負荷がかかり、
余裕がなくなりすぎるためと説明されています。
また、モデルによる解析の結果では、モデルが十分でないため、この結果の
信頼性は限定的であるとしながらも、5,000~8,000TLDを超えたあたりで、
TLDの変更要求処理に要する時間が現実的でなくなる(100時間程度)可能性が
示されています。
なお、上記モデル化の部分についてはTNO(*7)が担当し、別に報告書(*8)を発
行しています。こちらは10月1日より11月29日までに意見募集が実施(*9)され
ました。
10月28日には、ICANNソウル会議にてルートゾーンスケーリング調査について
のセッションがあり、調査結果が発表されました。
(*3) http://www.icann.org/en/minutes/minutes-03feb09.htm
(*4) http://www.icann.org/en/announcements/announcement-29may09-en.htm
(*5) http://www.icann.org/en/announcements/announcement-2-18sep09-en.htm
(*6) http://www.icann.org/en/committees/dns-root/root-scaling-study-report-31aug09-en.pdf
(*7) Nederlandse Organisatie voor Toegepast Natuurwetenschappelijk
Onderzoek: オランダ応用化学研究機構
http://www.tno.nl/
(*8) http://www.icann.org/en/committees/dns-root/root-scaling-model-description-29sep09-en.pdf
(*9) http://www.icann.org/en/announcements/announcement-2-01oct09-en.htm
■本調査についての問題点
まず、理事会決議において、ToR作成および報告書/勧告提出の要請が誰に対
して行われたのかは、理事会議事録を見ても直接的には明確にされていませ
んが、ICANN事務局による本調査についてのアナウンス(*4)によれば、セキュ
リティと安定性に関する諮問委員会(SSAC)(*10)、ルートサーバシステム諮問
委員会(RSSAC)(*11)およびスタッフに対してとなっているようです。
(*10)http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-kz.html#03-ssac
(*11)http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-kz.html#03-RSSAC
その結果、でき上がったToRについては、誰が作成したのか記載がありません。
また、調査チームおよび運営グループについては、前者はDNSの専門家、後者
はSSACとRSSAC、およびICANNスタッフからなると、構成メンバーが公表され
てはいますが、理事会決議およびToRでは明確に位置付けられていません。
ICANN からのアナウンス(*5)では、コンサルティング会社であるInterisle社
が調査のために選定されたとも発表されており、報告書本体には、「調査チー
ムが運営グループのために作成した」とは記載されているものの、本当に誰
が報告書を作成したのか、関係も含めて不明瞭です。
さらにはこの報告書中での、「DNSSEC、新TLD、IDN、およびIPv6アドレスを
同時にルートに追加することに伴うリスクは、現在のルートサーバ運用者の
仕組みを変えることによってのみ対処可能」「DNSSECがその他の三つに先駆
けて導入されるべき」という結論は、数字が入っていない概念図によって導
かれており、モデルに基づくものではありません。調査結果および勧告の章
ではモデル解析の結果は使われておらず、さまざまな箇所で技術的な解説が
なされているものの、ToRが求めているものとは異なった内容となっています。
以上のことから、報告書の内容はToRが求めるものからはかなり程遠い内容と
なっていると言えるでしょう。
報告書に対する意見募集で寄せられたコメントの多くは、定量的な分析が不
十分であることと、ToRと報告書内容とのずれがあることを指摘しています。
意見募集期間が終了してから3ヶ月が経ちましたが、寄せられた意見のまとめ
および分析は、本稿執筆時点ではまだ発行されていません。
2010年2月15日に、ICANNスタッフからSSAC/RSSACからの報告を待ち望んでい
るとの表明がされましたが、本稿執筆時点では両諮問委員会からの報告もな
されていません。ただし、SSACからは、2009年12月17日付でルートゾーンス
ケーリング調査報告書およびTNO報告書へのコメント文書(*12)が公開されて
います。この文書においても、ToRと報告書内容との隔たりについて指摘がさ
れています。
(*12) SAC042 http://www.icann.org/en/committees/security/sac042.pdf
■終わりに
ルートゾーンへのDNSSEC導入は、2009年12月より順次導入に向けて準備が進
んでおり、2010年5月から6月にかけて最終判断がなされた上で、7月1日まで
に終わらせることになっています。また新gTLDについては、2010年中の導入
をめざすとされています。
今後、本調査がモデルの改良などを盛り込んで再度なされるのか、もしくは
たなざらしになるのかはわかりませんが、DNSSECおよび新gTLDのスムーズな
導入のためにも改善され、誰でもモデルにより試算ができるようにしてもら
えれば、と筆者は思います。
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【 2 】News & Views Column
「IPv4アドレス在庫枯渇とIPv6インターネットに向けて準備すべき
こと」
株式会社ネットワークバリューコンポネンツ 松本直人
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IPv4アドレス在庫枯渇問題は、1990年代から現在まで何度か指摘されてきま
したが、今日では在庫の残りがいよいよ10%を切る状況となっています。そ
のたび毎に対策が取られ、インターネットは安定的に運用されてきましたが、
これを利用者の視点に立って考えると次のことが見えてきます。
電子メールの交換、オンラインショッピング、オンライントレードなど、お
およそ生活の中で、しっかり根ざしたインフラに成長しているものの、これ
らの通信はメールのアプリケーションやWebブラウザを経由したものであり、
IPアドレスのバージョンの違いについて、意識していない割合が現在は高い
ということです。自身の家族の利用方法などを思い描くと、おおよそ頷ける
傾向ではあります。
IPv4やIPv6などのプロトコルの違いにより、サービスの利用方法やコミュニ
ケーション手段に何らかの制限が掛かってしまう場合には、その旨を利用者
へ、しっかりと通知・代替手段の提示をしていくことが重要になります。
IPv4とIPv6は異なるプロトコルです。どのくらいのスピードでIPv6が普及す
るのかはわかりませんが、通信技術の歴史を見ると二つが混在する期間は、
十数年から数十年単位と考えられます。
一般に、「利用者数が100万人を超えるとメディアとしての価値を生む」と
いう話がありますが、これら指標となる規模を見極めた上でビジネスに取り
組むという姿勢がとても重要になるでしょう。
新たなシステムを構築する場合は常に、「どれぐらいの規模」「何が使える
か」をまず考えてから取り組んでいくと良いです。
■著者略歴
松本 直人
1996年より特別第二種通信事業者のエンジニアとして、インターネット網整
備に従事。その後システム・コンサルタント,ビジネス・コンサルタントを
経て、2008年より株式会社ネットワークバリューコンポネンツにて新規ビジ
ネス開発を担当。技術開発からビジネス構築までを一気通貫で担当する。
仮想化インフラストラクチャ・オペレーターズグループ(VIOPS)の発起人の一
人でもある。
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【 3 】インターネット用語1分解説
「Bogonとは」
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「bogon」とは、インターネットの経路制御において、広告可能アドレスとし
て登録されていないアドレスブロックやAS番号を指し、ルーティングテーブ
ル(経路表)(*1)に本来現れるべきではない経路情報を「bogon経路」と言いま
す。
bogon経路には、IANAによる割り振りが行われていない未割り振りIPアドレス、
プライベートIPアドレス、IANAが予約しているIPアドレスなどが含まれてい
るため、常に決まった経路とは限りません。予約アドレスなどはIETFの議論
によって変更される可能性もあり(最近ではRFC 5735~5737が発行されまし
た)、また、インターネットレジストリのIPアドレス割り振り状況によっても、
bogonとされる経路は常に変化します。
RIPE NCCやAPNICなどのRIR(地域インターネットレジストリ)(*2)では、過去
にbogon経路とされたIPアドレスブロックを新規に割り振る場合、その到達性
を確認する取り組みが継続して行われています。
The Bogon Reference
http://www.team-cymru.org/Services/Bogons/
de-bogon project
http://www.ris.ripe.net/debogon/
(*1)http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-ka.html#12-routingtable
(*2)http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-ta.html#14-tiikirejisutori
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【 4 】統計資料
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1.JPドメイン名
o 登録ドメイン数(2009年10月~2010年3月)
--------------------------------------------------------------------------------
日付| AD AC CO GO OR NE GR ED LG GEO GA GJ TOTAL
--------------------------------------------------------------------------------
10/1| 272 3527 332228 791 25350 16995 8038 4567 1884 2897 588459 131762 1116770
11/1| 272 3524 333015 791 25465 16980 8027 4575 1883 2891 594862 132405 1124690
12/1| 274 3526 333680 787 25544 16963 8027 4564 1883 2883 601663 133287 1133081
1/1| 274 3528 334755 791 25658 16987 8024 4562 1876 2884 607066 133754 1140159
2/1| 275 3533 335002 789 25720 16943 7999 4568 1876 2872 612390 133513 1145480
3/1| 275 3537 335535 790 25810 16972 7982 4579 1875 2864 618249 133192 1151660
--------------------------------------------------------------------------------
GA:汎用ドメイン名 ASCII(英数字)
GJ:汎用ドメイン名 日本語
2.IPアドレス
o JPNICからの割り振りとJPNICへの返却ホスト数(2009年9月~2010年2月)
------------------------------------------
月 | 割振 | 返却 | 現在の総量
------------------------------------------
9 | 395264 | 102400 | 66613182
10 | 576512 | 0 | 67189694
11 | 226304 | 0 | 67415998
12 | 235520 | 0 | 67651518
1 | 1020928 | 0 | 68672446
2 | 349184 | 0 | 69021630
------------------------------------------
□統計情報に関する詳細は → http://www.nic.ad.jp/ja/stat/
3.会員数 ※2010年2月25日 現在
---------------------
会員分類 | 会員数 |
---------------------
S会員 | 3 |
A会員 | 1 |
B会員 | 4 |
C会員 | 5 |
D会員 | 127 |
非営利会員| 10 |
個人推薦 | 35 |
賛助会員 | 39 |
---------------------
合計 | 224 |
---------------------
□会員についての詳細は → http://www.nic.ad.jp/ja/member/list/
4.指定事業者数 ※2010年3月8日 現在
IPアドレス管理指定事業者数 393
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 5 】イベントカレンダー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2010.3.17(水)~21(日) LACNIC XIII
(Curacao, Netherlands Antilles)
2010.3.19(金) IPアドレス管理指定事業者定例説明会
(東京、JPNIC会議室)
2010.3.21(日)~26(金) 77th IETF (Anaheim, CA, USA)
2010.3.25(木) 第25回IPアドレス管理指定事業者連絡会
(東京、日本教育会館)
--------------------------------------------------------------------
2010.4.18(日)~21(水) ARIN XXV (Toronto, Ontario)
--------------------------------------------------------------------
2010.5.3(月)~7(金) RIPE 60 (Prague, Czech Republic)
2010.5.23(日)~6.4(金) AfNOG-11 and AfriNIC-12
(Kigali, Rwanda)
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わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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@ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp
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