メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway 採用情報
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.92/2026年3月発行

インターネットガバナンスのこの10年~WSISを中心に~

2025年はWSIS+20(世界情報社会サミットの20周年評価)で明け暮れたと言ってもよいと思いますが、 本稿ではそれも含め、 WSIS+10(世界情報社会サミットの10周年評価)以降の10年を振り返りたいと思います。

01 WSISとは

World Summit on the Information Society (WSIS、世界情報社会サミット)は、 1998年の国際電気通信連合(ITU)全権委員会議の決議73※1、 および国連総会第56回会期の第90回本会議における2001年12月21日の決議(A/RES/56/183)※2により開催された、 情報社会をテーマとした国連サミットです。

当時ITU事務総局長であった内海義雄氏(任期1999-2006年)からの提案※3 ※4、 そしてその後のITU理事会決議※5および他国連機関との検討により2段階の開催とすることになったと思われます。 第1回会議は2003年12月10日から12日までスイス・ジュネーブにて開催され※6、 第2回会議は2005年11月16日から18日の会期でチュニジア・チュニスにて開催されました※7

通常の国連サミットと異なり、各国政府首脳以外に民間企業、 非政府組織(NGO)、市民団体、メディアも参加でき、 マルチステークホルダープロセスによるものとなった※8のが特筆すべき点です。

各サミット会合の主な概要は次の通りです。

◉第1回(ジュネーブフェーズ)
○2002年7月に第1回、2003年2月に第2回、 2003年9月に第3回の各準備会合にて成果文書案がまとめられ、 それ以外にもアジア太平洋地域としての東京での会合(2003年1月)を含む各地域会合が開催されました。 第1回準備会合で二つ成果文書を取りまとめる内容の提案が議論の結果議長から提示され※9、 最終的に以下の二つの成果文書がサミットで決議されました。
  • Geneva Declaration of Principles(ジュネーブ基本宣言)※10
  • Geneva Plan of Action(ジュネーブ行動計画)※11
◉第2回(チュニスフェーズ)
○2004年6月、2005年2月、2006年9月の3回準備会合が開催され、 第3回準備会合が一旦中断後、 再開時に出された案※12に沿って、 サミットでは以下の二つの成果文書が決議されました。
  • Tunis Commitment(チュニスコミットメント)※13
  • Tunis Agenda for the Information Society (情報社会に関するチュニスアジェンダ)※14

02 WSISアクションラインおよびWSIS Forum

ジュネーブ行動計画に含まれた11の行動方針はWSISアクションラインと呼ばれます。 各項目はJPNICニュースレターNo.89「世界情報サミットの20周年評価」※16に譲りますが、 情報通信技術(ICT)のさまざまな分野をカバーしています。

これらの実施状況について、 当初は個別の会合で評価がされていましたが、 2009年以降はWSISフォーラム※17でまとめて評価が行われています。 WSIS Forumは国際電気通信連合(ITU)、 国際連合教育科学文化機関(UNESCO)、 国連開発計画(UNDP)、 国連貿易開発会議(UNCTAD)の共催で開催されています。 2024年と2025年はWSIS+20 High-Level Eventと命名されました※18が、 2026年は再びWSIS Forumに戻りました※19。 2025年のイベントについては、 JPNICブログで内容を報告しています※20

03 WSIS+10

チュニスアジェンダの111項にて、 「2015年までにWSISの成果実施の全般的な見直しを行う」ことが謳われた流れだと思われますが、 2006年4月の国連総会決議A/RES/60/252※21、 および2010年12月の国連総会決議A/RES/65/141※22にて、 IGFの期限を5年間延長して2015年まで継続すること、および、 2015年にはWSISの10周年評価(WSIS+10)を行い、 IGFをさらに継続するかどうかなどを検討することが決まりました。

2014年8月には国連総会が決議A/RES/68/302※23を採択し、 2015年12月の国連総会において2日間のハイレベル会合を開催すること、 および準備プロセスにおいては国連加盟国政府以外のステークホルダーに向けたコンサルテーションを行うことが決定されました。 それに向けた準備プロセスとして、 2015年6月に国連総会議長により共同進行役が任命されて政府間交渉プロセスが開始され、 準備会合後には政府以外のステークホルダーに向けたコンサルテーションが行われました。

2015年12月15日から16日にかけて、 国連総会ハイレベル会合が開催され、 成果文書A/RES/70/125※24が採択されました。 成果文書では、IGF開催期間を2025年までの10年間延長すること、 2025年にWSISの成果評価を行うハイレベル会議の開催を推奨し、 2030アジェンダ(持続可能な開発目標、SDGs)との統合、 デジタル格差が継続していることへの懸念、 オンラインにおける人権保障、 信頼とセキュリティの構築などが記載されています。 成果文書の主な内容はJPNICニュースレターNo. 89でも取り上げています※25

04 WSIS+10とWSIS+20の間の出来事

IANA機能の監督権限移管

WSISジュネーブフェーズで議論となった、 ドメイン名/ルートゾーン・IPアドレス・AS番号・プロトコルパラメーターの管理を行うIANA機能の監督権限が、 2016年に米国政府から民間へ移管されました。 具体的には、米国政府がIANA機能をICANNに委託し、 ルートゾーンの編集については直接承認する体制だったところを、 コミュニティの代表からなる評価委員会などが資源ごとに監督する体制となり、 ルートゾーンの米国政府による承認プロセスはなくなりました。 詳細はJPNICニュースレターNo.64「インターネット史に残る歴史的な第一歩 ~IANA監督権限の移管がついに実現~」※26もしくはJPNIC Webの当該ページ※27をご参照ください。

パリコール@IGF2018

パリで開催されたIGF 2018の開会式におけるフランスのマクロン大統領による演説で、 インターネットとそれに依存する社会が、 インターネット経由の悪意による攻撃に脆弱であることに対する危機感が訴えられ、 その上で国際社会やインターネットのステークホルダーが、 IGFに集って対話をする以上に、実効性のある対応を、 力を合わせて行っていくことを呼びかけられました。 演説の内容は「サイバー空間における信頼性と安全性に関するパリコール」※28としてまとめられています。 詳しくはJPNICブログ記事※29をご覧ください。

IGF2023@京都

IGFが、初めて日本で開催されました。 開催地が京都であったためか、参加者数は9,279名、 うち現地参加者数が6,279名となりました※30。 議論の内容は多岐にわたりましたが、 AIに関するセッションが多く見受けられたことと、 この回ですでにWSIS+20やグローバル・デジタル・コンパクトについて議論されていました。 日本政府がホストということで、 「信頼性のある自由なデータ流通」(DFFT)に関するハイレベルパネルセッションも開催されました。 WSIS+20に関するハイレベルパネルでは、 インターネットの利用者が大幅に増えたこと、 多様なステークホルダーが参加するようになったことなどのWSISの主な成功について、 およびインターネットに接続できない利用者がまだ26億人もいることなど注意すべき点が述べられました。 WSIS+20レビューでは、 グローバルな公共資源であるインターネットとデジタル技術のガバナンスは、 国際的な人権基準と公益原則に基づくものでなければならず、 これらが企業の説明責任、 グローバルなデータ公共財の効果的なガバナンス、 公共デジタルインフラへの資金提供を強制するメカニズムで裏打ちされる必要があること、 デジタル包摂は重要かつ大きな課題の一つであること、 などが述べられました※31。 さまざまなメディアで報道され、 日本でIGFが知られるきっかけの一つになったのではないかと思います。

国連によるデジタル協力関連の進捗

デジタル協力(Digital Cooperation)とは、 社会への恩恵を最大化し危害を最小化するために、 デジタル技術の社会的、倫理的、法的、 および経済的な影響について取り組むために協同作業を行う方法を意味するとされています。 国連事務総長によって設立された、 「デジタル協力に関するハイレベルパネル」が2018年7月に活動を開始し、 2019年6月に以下の内容からなる報告書が公開されました※32 ※33

  • 包摂的なデジタル経済と社会の構築
  • 人的・制度的能力育成
  • 人権と人間の主体性の擁護
  • デジタルの信頼性、安全性、安定性の促進
  • グローバルなデジタル協力の育成

その後、 国連事務総長による「デジタル協力のためのロードマップ」※34が公開され、 この中でも上記パネル報告書と同様の点について考察されています。

ロードマップでは、 「マルチステークホルダー型諮問グループの経験を生かして、 戦略的かつ権限を持つハイレベルのマルチステークホルダー機関を創設」と書かれており、 IGFリーダーシップパネル(LP)はこれを基に国連事務総長により設立されました※35。 その前にはMultistakeholder High-level Body (マルチステークホルダー・ハイレベル機構)を設立しようとしまし た※36が、 うまくいかなかったようで、 仕切り直してリーダーシップパネルとして設立されたと思われます。 この動きに対しては、 市民社会から「IGFはリーダーではなく多様な参加者を必要としている」と反対の声も上がりました※37

グローバル・デジタル・コンパクト

グローバル・デジタル・コンパクト(GDC)とは、 2021年9月に国連事務総長より提出された報告書「我々の共通の課題(Our Common Agenda)」中に記載された12のコミットメントのうちの一つです。 「7.デジタル分野での協力を改善する」配下の7項目からなる盟約より端を発し、 2024年9月に開催された未来サミットで採択された同サミットの成果文書である「未来のための協定(Pact for the Future)※38」の付属書として確定した文書です。 詳細はJPNICニュースレターNo.88※39をご覧ください。 この中で示されている目標は以下の通りです。

  1. すべてのデジタルデバイドを解消し、持続可能な開発目標(SDGs)の進捗を加速
  2. デジタル経済による包摂(インクルージョン)の機会と便益を拡大
  3. 人権を尊重し保護し推進する包括的でオープン、安全かつセキュアなデジタル空間を育成
  4. 責任があり公平で相互運用可能なデータガバナンスアプローチを推進
  5. 人類の便益となる国際的な人工知能(AI)ガバナンスの向上

目標3の中にはインターネットガバナンスに関する以下の記述(抜粋)も含まれました。

  • インターネットガバナンスはグローバルでマルチステークホルダーを旨とし、すべての関係するステークホルダーがそれぞれの役目や責任の観点から参加すべき
  • インターネットガバナンスが、拡大協力(Enhanced Cooperation)※40に関する事項を含め、WSISの成果に定められた規定に従い続けるべき
  • IGFをインターネットガバナンスに関する議論の主要なマルチステークホルダープラットフォームとして認識し、引き続き発展途上国からの政府や他のステークホルダーの多様な参加と、そのための任意寄付を推進

05 WSIS+20

準備プロセス

WSIS+10成果文書で実施が推奨されたWSISの20周年評価(WSIS+20については、 まず2024年11月26日に国連総会の第二委員会が決議※41を、 次いで、同年12月19日に国連総会が決議「持続可能な開発のための情報通 信技術」※42をそれぞれ採択しました。 これらにおいては、 2025年3月末までにWSISの成果実施状況に関する総会の包括的レビューの実施方法(進め方)を確定させるよう求めました。 進め方文書のゼロドラフトが2025年2月7日に公開され※43、 その後何回かの検討を経て同年3月25日に国連総会に進め方文書案が提出され、 同日総会で採択されました(確定した進め方文書※44)。 この中で2025年12月16日および17日に国連総会でWSIS+20に焦点を当てたハイレベル会合を招集することを決定しました。 進め方決議では、 ハイレベル会合に加盟国・オブザーバーだけでなくWSIS関連ステークホルダーすべてをハイレベル会合での発言に招待するとあり、 マルチステークホルダーでの会議参加が奨励されました。 また、共同進行役2名を任命するよう国連総会議長に要請しています。 その後4月23日には第79回国連総会議長フィレモン・ヤン(Philemon Yang)氏より、 ケニアの国連常駐代表エキテラ・ロカアレ(Ekitela Lokaale)氏およびアルバニアの国連常駐代表スエラ・ヤニーナ(Suela Janina)氏が共同進行役に任命されました。

その後、 同年4月に開催された国連開発のための科学技術委員会(CSTD)会合、 6月に国連教育科学文化機関(UNESCO)により開催された「公共セクターにおけるAIおよびデジタル転換に関するグローバルフォーラム」、 同じく6月にノルウェーで開催されたIGF 2025、 7月に開催されたWSIS+20 High-Level Event 2025においてもWSIS+20に関する議論がなされました。

同年6月に、 政府以外のステークホルダーからの多様な視点や専門知識を集約し、 非公式に助言するための、 WSIS+20非公式マルチステークホルダー助言委員会(Informal Multistakeholder Sounding Board, IMSB)の委員が募集され、 7月10日に初回会合が開催されました。 2025年のIGFマルチステークホルダー諮問グループ(MAG)メンバーおよびリーダーシップパネル(LP)メンバーの中から募集された10名の委員のうち、 技術コミュニティからは3名入っています。 また地理的多様性も配慮され、 アジア太平洋地域からは2名入っています。 基本的には政府間交渉の場であるWSIS+20に、 政府以外のステークホルダーの声を反映させることに寄与したのがこの委員会の成果ではないかと思います。

成果文書

成果文書の改版・公開履歴は、次の通りです。

2025年6月20日 要素文書(Elements Paper)※45
8月29日 ゼロドラフト※46
11月7日 第1版(Revision 1)※47
12月3日 第2版(Revision 2)※48
12月11日 第3版(Revision 3)※49
12月13日 第4版(Revision 4)※50
12月16日 草案:A/80/L.41※51
12月19日 最終版:A/RES/80/173※52

成果文書草案の各版(第2版まで)が公開された後、 加盟国向けの準備会合や政府以外のステークホルダー向けのコンサルテーションが開催されました。 前者においても一般の人が内容をオンラインで見ることはできるようになっていました。 先述したIGF 2025およびWSIS+20 High-Level Event 2025に加え、10月27日から28日にかけては、 ICANN84会議中に意見聴取が行われるという異例の措置が取られました。

成果文書の概要

我々JPNICとして最も重要と考える点は、 IGFの恒久化が謳われたこと、 およびインターネットガバナンスに関するマルチステークホルダーアプローチの堅持が打ち出されたことです。 以下、個別の項目を網羅します。

導入(1-14項)
ステークホルダーの協力、主権的平等と包括性、 人権の基盤化などの一連の原則を再確認しています。
開発のための情報通信技術(15‐18項)
情報通信技術(ICT)が開発を推進する上で果たす重要な役割を明確に論じると同時に、 その潜在能力を十分に発揮することを妨げ続けている重大な不平等を浮き彫りにしています。
あらゆるデジタル格差の解消(19‐28項)
WSISのビジョン達成と持続可能な開発の推進において、 根強いデジタル格差への取り組みが依然として最優先課題であることを強調しています。
デジタル経済(29‐34項)
世界貿易・経済発展・イノベーションの推進力としてのデジタル経済の重要性が高まっている点に焦点を当てています。
社会的および経済的開発(35-41項)
情報通信技術(ICT)が膨大な可能性を秘める一方で、 公平なアクセス確保と完全な便益実現には課題(社会福祉の向上、 電子政府の拡大、教育の革新、医療変革、 災害管理と人道支援など)が残されている点を指摘しています。
環境への影響(42‐47項)
デジタル技術が環境の持続可能性を支える可能性を認めつつ、 利用拡大に伴う環境問題の発生およびバランスの取れた統合的アプローチの必要性が指摘されました。 具体的には、デジタル化の急速な進展が、 エネルギーと水に対する前例のない需要(AIの台頭などによるデータセンター建設ラッシュ)を生み出し、 エネルギー安全保障、手頃な価格、 気候変動緩和に重大な課題を突きつけていることです。
デジタル開発のための支援環境(48‐53項)
WSISのビジョンを成功裏に実施し、 デジタル開発を推進するために、政策、法的枠組み、 国際協力を包含する強固な「支援環境(イノベーションとステークホルダー参加、 予測可能で透明性のある枠組み、 包括的な規制範囲など)」が果たす重要な役割が強調されています。
情報通信技術の利用における信頼と安全の構築(54-58項)
国際人権法と常に整合性を保ちつつ、 ICT利用における信頼と安全の構築がイノベーションと持続可能な開発の主要な推進力であることの認識および意義を強調しています。 新たなメカニズムとして、国際安全保障の文脈における、 ICT分野の発展に関するグローバルなメカニズムの設立に言及しています。
能力開発(59-61項)
デジタル格差を克服しICTの恩恵を解き放つためには、 能力開発、特にイノベーション、 ガバナンス分野における能力開発が絶対的に重要であることが強調されました。
資金調達メカニズム(62-67項)
開発のためのICTの潜在力を実現しデジタル格差を解消するために必要となる投資を強調し、 官民セクターが連携したアプローチを求めています。 主要な提言と認識は次の通りです。
  • 投資の拡大:インフラ、能力構築、研究開発、 技術移転への継続的な投資を、 公的・民間資金と並行して求める。
  • 民間セクターの役割: インフラ、コンテンツ、 サービスへの民間セクター投資の重要性、 および商業的に採算が取れない分野を支援する開発パートナー(多国間銀行、 公的資金)の継続的役割も認められる。
  • 資金調達計画の策定と調整の必要性:セビリア・コミットメント※53 ※54で概説された、 各国政府、開発金融機関、 民間セクターが関与する資金調達計画の策定と調整の必要性を訴える。
  • ITUの評価と提言:ITUに対し、 資金メカニズムのギャップと課題を評価し具体的な提言を行うタスクフォースの設置を要請し、 活動結果は、2027年に開催されるCSTD会合で報告。
情報社会における人権と倫理的側面(68-80項)
人権尊重が世界情報社会サミットの中核的支柱であることを明確に定め、 ICTが人権強化に持つ可能性を強調すると同時に、 保護措置の緊急性を指摘しています。 主なコミットメントと原則は普遍的人権、オンライン上の権利、 ステークホルダーの責任、具体的な懸念事項(監視技術、 情報操作と民主的プロセスへの干渉、暴力、 子どもの権利保護)への対応、インターネットアクセスと自由、 メディアの独立性、になります。
データガバナンス(81-83項)
情報社会の恩恵を実現し開発目標を達成する上でデータガバナンスが果たす重要な役割に焦点を当てています。 この中には、CSTD内に作業部会を設置し、政府、企業、市民社会、 その他すべてのステークホルダーが関連するあらゆるレベルで参加する、 包括的かつ包摂的なデータガバナンスに関する対話を促進することが盛り込まれています。
人工知能(AI)(84-87項)
国際協力と能力構築を重視しつつ、 開発における人工知能(AI)の可能性を活用し、 その課題に対処するための戦略を概説しています。 この中には学際的な独立国際科学パネルの設置が含まれます。
インターネットガバナンス(88-103項)
インターネットの進化と利用を形作るための基本原則と継続的な取り組みを再確認し、 強固なマルチステークホルダーアプローチを強調しています。 主要点は次の通りです。
  • 包括的参加:開発途上国(アフリカ、後発開発途上国、 小島嶼開発途上国)および代表性の低いグループを含む、 すべてのステークホルダーからの参加拡大を求める。
  • IGFをインターネットガバナンスの課題について議論する主要なマルチステークホルダー・プラットフォームとして認識。 包括的な参加、 均衡の取れた代表性および開放性を通じてインターネットガバナンスの強化に貢献するものとして、 NETmundial+10ガイドライン※55について言及。
  • フォーラムの進化:IGFが年次会合から、 170以上の国別・地域別フォーラム(NRIs)に支えられた、 会期間の活動を含むより広範なエコシステムへと進化したことを歓迎。
  • IGFの国連常設機関としての地位:安定した事務局と資源を備え、 継続的な支援を確保する国連常設フォーラムとしてIGFを位置付けることが決定された。
  • 連携と報告:国連機関、IGF、 関連ステークホルダー間の協力を要請し、 IGFは進捗状況をCSTDに毎年報告する。
WSIS枠組みの発展(104-113項)
WSIS枠組みの中核原則(基盤と進化、 マルチステークホルダー重視、 SDGsやGDCなどとの相乗効果と調整、 WSISフォーラムの重要性、行動指針の整合性、 人権と包摂)を再確認するとともに、 その継続的な重要性と効果的な実施を提唱しています。
モニタリングと測定(114-118項)
開発のための情報通信技術(ICT)に関する意思決定に情報を提供するための、 堅牢なデータと指標の必要性を強調し、 データの入手可能性と分析の改善に焦点を当てています。 主な提言はデータ収集要求、国際協力、 パートナーシップの支援、定期的な見直し、体系的なレビュー、 資金拡充と能力構築となっています。
フォローアップとレビュー(119-127項)
WSISの成果の継続的な成功を監視、検証、 確保するための包括的枠組みを概説し、 GDCとの整合性を強調しています。

ハイレベル会合

ハイレベル会合では、国連総会議長、国連事務次長の挨拶に続き、 各国首脳が演説しました。 IGFが国連システム内で恒久的な地位を付与されるべきであるという点については、 ほぼ普遍的な合意が得られました。 17日午後には、対立する意見や、 国内政策と合致しない特定の条項からの離脱が表明されました。 特に、人権については、 民主主義諸国と権威主義諸国で隔たりがありました。 また途上国(G77+中国※56)は特定の国への経済制裁といった「一方的強制措置」が、 技術アクセスや持続可能な開発を妨げていると主張する一方で、 米国は経済制裁は悪意ある活動に対する合法的・正当かつ効果的な手段であると述べるなど、 大きく意見が割れました。 米国は他にも、気候変動、ジェンダー、 多様性・公平性・包摂性(DEI)などの組み込みは不要、 米国の立場と矛盾する文言は一切支持しないと述べました。 またウクライナとロシア、 イスラエルと中東諸国などの間で現在進行中の紛争に関するやり取りもあるなど、 世界情勢が反映されている様を目の当たりにしました。 成果文書の採択が投票にならずコンセンサスとなったことで、 ITUの国際電気通信規則(ITR)の改定のため2012年に開催された世界国際電気通信会議(WCIT)における採決※57のような分断はありませんでしたが、 玉虫色の記述となった部分も多かったのではないかと思います。

日本政府からは、今川拓郎総務審議官が演説し、 内海善雄氏が立ち上げを主導した当初から一貫してWSISを支援してきた自負を表明しました。 課題として、世界の約3分の1がオフラインであり、 AIなどの新技術の台頭によりデジタル格差が複雑化していると指摘し、 また、デジタル包摂を実現するため、 WSISの枠組みの下でグローバルな協力を深める必要性が訴えられました。 今後に向けては、IGFの強化と恒久化を支持し、 既存の国際的な取り組みの活用と重複を回避すべきこと、 デジタル公共インフラ(DPI)およびデジタル公共財(DPG)を革新的な技術で強化すべきで、 例として災害対策としての早期警報システムと迅速なインフラ復旧を推進してきた旨述べられました※58

06 最後に:WSIS+30に向けて

今後のロードマップは次の通りです。

隔年 国連事務総長がWSISの成果実施およびフォローアップの進捗状況に関する報告書を提出し、 CSTDおよび経済社会理事会が報告書を検討※59
2027年
(国連総会会期中)
GDCの実施進捗状況を評価するハイレベル会合が開催※60
2030年 国連総会が2030アジェンダ検討のためのハイレベ ル会合を招集し、WSIS+20成果文書がそのインプッ トとして提出される※61
2035年 世界情報社会サミットの成果の実施に関する包括的レビューのためのハイレベル会合(WSIS+30)が開催※62

WSIS+20プロセスがよりマルチステークホルダーの参加が可能となったこと、 およびIGFの期限延長ではなく恒久化が決まったことは歓迎すべきことだと考えます。 IGFを持続可能なものにするためには、 資金調達について考える必要がありますが、 その点については国連事務総長に一任となっており、 財政が厳しい国連からどのような案が出てくるのか、 注目したいと思います。

WSIS+30では、 IGFの期限延長については考えなくてよいことになりますが、 IGF自体の改良や扱う範囲の拡充などは議論することになると想像されますし、 途上国からのアクセスを増やす方法やそれに伴う資金調達など課題は多くあり、 一朝一夕では解決できないと思われますので、 議題には事欠かないと思います。 今後の国連体制が現状維持されるのかなど不確定要素はありますが、 WSIS+20成果文書で示された課題がWSIS+30までに少しでも解消・改善されていることを望み、 本稿を締めくくりたいと思います。

(JPNIC インターネット推進部 山崎信)


脚注

*1 Resolution 73 of the ITU Plenipotentiary Conference, Minneapolis, 1998
https://www.itu.int/net/wsis/docs/background/resolutions/73.html
*5 *3に同じ
*8 国連総会決議A/RES/56/183に「国際機関・地域機関、非政府組織、市民社会、 民間部門を含む他の政府間組織に対し、 サミットの政府間準備プロセス及びサミット自体への貢献と積極的な参加を奨励する」と書かれています。 詳細は以下に記載されています。
https://www.itu.int/net/wsis/basic/multistakeholder.html
*17 国際電気通信連合(ITU)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連開発計画(UNDP)、 国連貿易開発会議(UNCTAD)、国際連合経済社会局(UN DESA)、 国連「開発のための科学技術委員会」(UN CSTD)が共同で主催しています。
*40 協力強化とも呼ばれます。チュニスアジェンダで言及された言葉ですが、インターネットガバナンスに対する政府のさらなる関与を指し示すという解釈も存在しつつ、必ずしも全員が同じ解釈を共有しない、いわば「玉虫色」な言葉です
https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-ah.html
*59 Paragraph 124, A/RES/80/173
*60 Paragraph 125, A/RES/80/173
*61 Paragraph 126, A/RES/80/173
*62 Paragraph 127,A/RES/80/173

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2026 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.